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2024.10.18 お知らせ

【10月19日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2024 vol.18

鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は10月19日に行われる2024明治安田J2リーグ第35節、鹿児島ユナイテッドFC vs 愛媛FCのマッチデープログラムです。

タイヤ安売王ビーライン スペシャルマッチ 2024明治安田J2リーグ第35節

日程表・順位表・テキスト速報

前回までの振り返り

2024年9月28日(土)2024明治安田J2リーグ第33節
vs 水戸ホーリーホック 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)

8連敗と苦しむ中でホームに水戸ホーリーホックを迎えた第33節。
4分、コーナーキックから水戸に続けざまにシュートを打たれるがGK泉森涼太が防ぐ。
18分、右サイドから入ったクロスからヘディングを打たれる。
24分には中盤でボールを持った田中渉がするするとドリブルでボールを持ち運ぶと、そのままシュートを打つ。
30分、右サイドのクロスから打たれたヘディングがバーを叩く。
33分、ペナルティエリア内に入ってきたボールからシュートを打たれる。
37分にも右サイドから際どいシュートがファーサイドに飛ぶ。
42分、左サイドバックの野嶽寛也が降りてきた鈴木翔大とのパス交換から、前を駆ける圓道将良へスルーパス。ペナルティエリア内に持ち込んで打ったシュートはGKの身体に当たって枠を外れる。
43分、中盤右サイドで藤村慶太と連携してボールを奪った田中がマルセイユルーレットからのスルーパスを右サイドの鈴木翔大に通す。
鈴木が戻したボールを藤村が水戸守備陣が固めるゴール前に入れる。
ただ1人ゴール前にいる有田稜が頭で合わせて鹿児島が先制する。
後半に入った47分、セットプレーのクリアボールを後方から渡邉がゴール前に送り、鈴木が競ってこぼれたところを有田稜がゴール前に折り返し、飛び込んできた戸根一誓が押し込んで追加点。
59分、ハイボールの競り合いで田中が2枚目のイエローカードを受けて退場する。
10人になった鹿児島だが、集中力は切れることなく決定的な場面は作らせない。
93分、左サイドから野嶽が前線にふわりとボールを浮かせて、藤本憲明がワンタッチで落として、星広太がドリブルで中に入ったペナルティエリア内へスルーパス。
終始前後左右へ走り続けた鈴木が右足で決めてる。
97分、スローインからゴール正面でのシュートを打たれるが泉森の飛び出しでコースが消され、シュートは外れる。
3-0で勝利した。

2024明治安田J2リーグ第33節監督・選手コメント – 鹿児島ユナイテッドFC オフィシャルサイト (kufc.co.jp)

2024年10月6日(日)2024明治安田J2リーグ第34節
vs 横浜FC 会場:ニッパツ三ツ沢球技場(神奈川県横浜市)

J1昇格を目前にする横浜FCとアウェイで対戦する第34節。
2分、高いところでボールを奪うと、星広太が遠目から思い切ってシュートを打つ。
8分、横浜FCはサイドチェンジからのパスワークでペナルティエリア内に入り込むが、藤村慶太がクリアする。
15分、直接フリーキックのこぼれ球をつながれ、左サイドから上がったクロスが逆サイドに流れ、再びゴール前に折り返されたところを決められて先制される。
24分、右タッチライン際でボールを受けた星がゴール前に入れたボールがこぼれたところを、星の外側から回り込んだ右サイドバックの渡邉がダイレクトで狙う。
34分、中央に入り込んだ野嶽寛也が稲葉修土からのパスが受けると、包囲されながらも左サイドの圓道へスルーパスを通す。
右足に持ち替えた圓道がゴール前に入れたクロスに、ペナルティエリアの外から入り込んだ星が頭で合わせるがGKがキャッチ。
41分、パス交換から藤村がペナルティエリア内の空いたスペースに浮いたボールを送り、背後を取った星が合わせるがシュートはブロックされる。
横浜FCの守備が手堅さを増す57分、ペナルティエリア前で得たフリーキックを藤村が直接狙うが、わずかに枠の上を通り過ぎる。
63分、鹿児島陣内で奪われたボールから強烈なシュートを打たれるが、GK泉森涼太が身体で防ぐ。
75分、右サイドから入ったクロスから決定的なヘディングを打たれるが、泉森が右手でかき出す。
85分、左サイドから入れられたクロスは泉森が片手でキャッチする。
横浜FCに追加点は許さないが、決定的な場面を作ることができないまま、0-1で敗戦した。

2024明治安田J2リーグ第34節監督・選手コメント – 鹿児島ユナイテッドFC オフィシャルサイト (kufc.co.jp)

井林章 選手コメント(10月15日トレーニングの共同会見より抜粋)

前節は横浜FCに0-1で敗れましたが、雰囲気や内容は向上しています。
それをもう一度見つめ直す1週間でしたので、より良い方向に持っていきたいです。
自分たちは前から圧力をかけていく中でポジション的に自分が一番全体を見えるので、前線の選手たちに情報を与えることが役回りなので、声をかけることは特に意識しています。

ゴールが決められていないことについて

まだまだシュートへの意識は上げていくべきだとは思いますが、劇的に変わることはありません。
自分たちのやれる範囲でこつこつとやっていくことが大事だと思います。
焦ることなくやっていきたいです。

降格のプレッシャー

自分はむしろ勝つしかない、失うものがなくアグレッシブに行くしかないと捉えています。
0-0でもだめなので守備でも攻撃的にを貫けるかです。
ポジティブにとらえています。
前から行きたい選手、構えたい選手のプレーをそろえるには、声をかけることがすべてです。
みんなのベクトルを同じ方向に向けるのが自分の役割です。

愛媛FCについて

前回のアウェイでは自分たちが苦しい中で引き分けました。
あの時ほどの勢いはないと見ていますし、勝ちきれていない試合が多いので、ホームで迎える以上は勢いを持って入れば、勝てる可能性はあると思います。
力関係としてもやれると思いますので、臆することなく挑んでいきたいです。

ホームでの勝利に向けて

自分たちの立場上、勝ち点1ではいけません。
勝ち点3を取るために、そして勝ち点3を取ってサポーターが喜んでもらえる空間を作るのが役割なのでそこに期待してほしいですし、共に闘って欲しいと思います。

鈴木翔大 選手コメント(10月15日トレーニングの共同会見より抜粋)

僕個人としては目の前の試合に向かっていくだけです。
特になにか強く意識する部分やプレッシャーはありません。
ひとつでも多く勝って、サポーターと勝利を喜びたいという点で選手は全員同じ方向を向いています。
そこに向けて準備をしていくだけだと思っています。

前線からの守備

得点を取るために攻撃に力を使うことは重要なことです。
しかし自分のやってきたサッカー人生の中で、チームのために泥臭く走ることで最後に自分のところにボールがこぼれてきたり、簡単に取っているように見えても影で相当な考えていること意識していることが詰まっているゴールです。
これまでと変わることなく、もちろん点を取って勝たせることだけでなく、チームのために駒となって走ることができるかどうかを自分の中で意識していきたいです。

ゴールを決めた試合では勝っていること

出場時間にゴール数が比例していないと思っているので、もっともっとゴールを取りたいです。
自分が決めた試合は勝っているということはあまり意識していませんでしたが、得点はチームを勝たせるために選手にとって一番の価値なのでそこに関してはこだわっていきたいです。
当初掲げていた目標には遠いですけど、チームのためにひとつでも多く得点を重ねたいという想いは常に持っています。
次の試合で取れるようにしたいです。

サポーターについて

鹿児島のファンサポーターの皆さんは本当にホームとアウェイに関わらず、必ず僕たちを後押ししてくれています。
それに応えたい気持ちを忘れたことはありませんし、勝てばいっしょに喜んで、負ければ叱咤激励していただいて、共に闘ってきたという自覚があります。
残り4試合絶対に勝って、みんなで喜びたいです。

愛媛戦に向けて

同じ昇格組で、最近調子を落としていますが、相手どうこうではなく残り4試合を勝つことがすべてです。
苦しい状況ですが、一年間やってきた鹿児島のプライドや意地を見せられるような試合をするだけです。
自分たちのやるべきことにフォーカスしていきたいですし、自分自身にやれることは全部やります。
その中でチームメイトに厳しく要求していくつもりですし、自分自身も厳しい要求をされる自覚を持ってピッチに立ちたいですし、チームを引っ張っていけるように日々思っています。

コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.36(Total vol.48)」
水本勝成さん(株式会社成郷 代表)

画面越しの姿はまったく変わりません。
「ONE PIECE」のサンジに似ているとかちょっと陰のある俳優っぽいとか言われていて、要するにカッコよくて、けれどキャーキャーよりは穏やかに推す女性ファンが多かった現役時代そのまま、老けることなく太ることなく。
明るい髪の色も、近所の兄ちゃんのような話し方も変わりません。
ただ話す内容は大きく変わりました。
30歳でプロサッカー選手を引退した水本さんは故郷の熊本県を拠点に、農業にたずさわっています。
「みんなの農業のイメージが土耕して肥料を撒いてって思ってる人が多いし、そういうのももちろんあるんだけど、それ以外のやり方もやっているんです。何調歩分の野菜を作って、とかコストパフォーマンスが良くないことばっかりは俺はやりたいない」
そういえば水本さんは俊足とガツガツした競り合いで相手FWを抑えるセンターバックでしたが、身体能力だけでなく、頭脳的な駆け引きが光る選手でした。
やるなら効率よく、でも、根っこには熱いハート。
そんな水本さんに今回は話をうかがいました。

地域リーグ時代の鹿児島に

鹿児島に来たばかりの水本さん。カメラマンに「もう少し笑顔を」とうながされると「ははっ」と乾いた笑いをうかべたところ

熊本のルーテル学院高校から当時JFLのガイナーレ鳥取に加入。
3年目にJFLを制して、鳥取といっしょにJ2入りを果たしますが、2012シーズンをもって契約満了。
プレーする場所を失った水本さんに声をかけたのが、高校の先輩で、当時鹿児島からJリーグを目指すFC KAGOSHIMAに移籍したばかりの栗山裕貴。
プロリーグであるJ2から2つ下のカテゴリー、九州リーグでのプレーでしたが、どんどん水本さんは気持ちが盛り上がっていくのを感じていました。
「あんまり良くないんだろうけど、チームっていうよりはとにかく目立って上に行きたかった。で、目立つためにはチームが昇格しないといけないし。でも、やっぱりプロだと結果を求める仕事だけど、純粋にサッカーを楽しめている時期でしたね。今思うと」
シーズン中に負傷で離脱する時期もありましたが、それでも水本さんが復帰したあとのチームは、JFL昇格の懸かった全国地域サッカー決勝大会を勝ち進みます。
最近も話題になっていますが、3日で3試合とか5日で3試合とかのハードスケジュールの大会です。
「こんな世界なんだっていうのがすごくあって。勝てばJFLに昇格できるけど、負けたら地獄じゃないですか。1年また九州リーグをやり直しみたいな。そういう世界で社会人サッカーも闘っているんだって。チームは前の年にこの大会で負けていて、だからみんなこの大会に懸けている想いがすごく伝わってきて、本気というか、がんばった、ですね」

左側は現在営業部の満留芳顕。アカデミーでGKコーチも兼任する

どう自分が成り上がっていくかと考えていた水本さんはJリーグ経験者としての経験を伝え、チームを勝たせようと力を尽くしていました。
最終節はすでに昇格を確実にしているグルージャ盛岡を相手に、集中した守りで隙を与えず、完封勝利で鹿児島初のJFL昇格を成し遂げました。
「一致団結というか、チーム一丸になって闘えた時期でしたね。それでこの時があったから今があるっていうのも当たり前のことなんですけどね。ここでなかったら30歳までやってなかったかもっすね。(クラブ代表の)徳重さんも僕に対してすごく良くしてくれたし、すごくやりやすかった。それで良いパフォーマンスを出しながら自分の成長も感じられていたし、自信にもつながっていって。
もっとも俺1人の力じゃないですけどね。みんなが下から上がろうっていう雑草魂があって。
何でもそうじゃないですかね。やっぱり下を知っているやつは強いですよ」
とにかくクールに映る選手だけに、ちょっと意外な言葉でした。

JFLに昇格してみんなで大久保毅監督を胴上げするなか、右下で幼稚ないたずらをする姿に注目

創成期の鹿児島ユナイテッドFCで

2014シーズン、同じように九州リーグからJFLそしてJリーグを目指す鹿児島のライバル、ヴォルカ鹿児島と統合して誕生したのが鹿児島ユナイテッドFC。
最初のホームゲームは3,000名を超える観客でメインスタンドが埋まり、4-0で勝利して、その後もどんどん勝ちまくります。
大久保毅監督のもと、水本さんや谷口功を中心に強固な守備で相手の攻撃を弾きかえし、ボールを奪えば赤尾公を中心にした速攻で次々とゴールを陥れる。

「自分はあんまり観客席とか気にせず試合に集中する方だったけど、それこそタノ(田上裕)さんとかは県リーグからやっているからお客さんが増えていることとかに感じることはあったと思います。みんながいい意味で調子に乗っていって、いい風に働いてどんどん結果もついてきて、怖いもの知らずでやれていた感がありましたよね」
クラブ発足1シーズン目、JFL参入1シーズン目ながら、リーグ戦26試合で2位となる勝ち点57を叩き出し、ピッチ上の自分たちにJリーグに行ける力があることを証明しましたが、クラブライセンスなどの条件を満たすことができませんでした。
「選手生命って短いからサッカー選手の1年って、他の人の5年分くらいあるじゃないですか。1年で上がれる上がれないって大きいからプロスポーツって大変だよなって思うけど、でもしょうがないですけどね。リーグが決めることだから」

翌2015シーズンに向けて、浅野哲也監督が就任しました。
「(大久保)毅さんがしっかり基盤を作っていたので、テツさん(浅野監督)に変わってもそのスタイルはいうほど変わってはいなかったですけどね。2人とも基本に忠実で、派手さはないけど確実に勝ちを求めに行く。テツさんになると強度がさらに増して、諦めずにとにかく走る。でもそれがサッカーの本質なのかなってすごく思うんですけどね、今は」
前シーズンの好成績から「Jリーグに行って当然」と目された2015シーズン。
鹿児島は粘り強く闘い続けて、水本さんもコンビを組むセンターバックが田中秀人と谷口功が併用されるなかで安定したパフォーマンスを続け、そしてJリーグ入りを勝ち取りました。

鹿児島のJリーグ元年

鹿児島にとってはじめてのJ3リーグ参入となった2016シーズン。
第3節に新加入ストライカー藤本憲明選手のPKで初ゴール、そして初勝利を挙げると着実に勝ち点を積み重ね、夏前には首位に立ちます。
J2ライセンスを取得することができず、最終盤に順位を下げましたが、それでも初参戦で16チーム5位の成績を残しました。
そして藤本選手は得点王に輝き、一躍名を上げます。

Jリーグ初年度にしてこの好成績は、絶対的なストライカーありきのものだったなのか?
「そんなことはないと思いますよ」
水本さんは即座に明確に否定しました。
「結局この時期に何が良かったかっていったら、前線からの守備が良かったんですよ。2列目の(五領)淳樹、(中原)優生、(永畑)祐樹が二度追い、三度追い、四度追いして、この運動量がすごくて相手ディフェンスにプレッシャーをかけて、相手のエリアでボールを奪って。そこからは(ボランチの赤尾)公くんのところから前線にいいパスが出て、早く速くシンプルにゴール前っていうパターンができていて、シンプルイズベストだから。
後手後手の守備じゃなくて、いい形で守備ができればいい形で攻撃ができるみたいな感じ。みんながそれを理解していたし、複雑なことをやっていないから、みんながタスクをこなせていたから勝ちやすくなって、あとは若かったのもあるからみんな自信をもっていた。
やっぱりサッカーって走るとか闘うとか諦めないっていうのがベースで、それがないとテツさんの時は試合に出られないから。だからこの時が一番選手として成長したなっていうのを感じています。
今はセンターバックにも色々な仕事がありますし、監督や戦術の色があるのは分かるんですけど、やっぱり結局失点を抑えないことには何も始まらないじゃないですか。
それが自信にもつながって全体がいい循環をするし。
現代サッカーは色々求められるけど役割分担があってもいいと思うんですよ」

2024シーズンの今日、それをJ1仕様でやれているのがFC町田ゼルビアだと水本さんはとらえています。

改めて集合写真を見ながら水本さんは感慨深そうです。
前のシーズンから加わったのはJFLのSP京都FCからの藤本選手、山岡哲也、鹿屋体育大学の中原優生あたりで、いずれもJリーグ経験はありません。
「(田中)秀人さんとかトミさん(冨成慎司)とか関(光博)さんとかはJでの実績もあったけど、代表とかJ1で活躍していた選手はいなかった中でここまで闘えたのは今になったら逆にすごいなって思うし、このチームでJ2に行っていたら面白かったんじゃないかなって思いますよね」
そして赤尾公や永畑祐樹が今は強化部の仕事をしていることにも感慨深いものがありますし、今は難しい状況にあるとしても、さらに強い鹿児島をこの時代に合う形で築き上げてくれるという信頼もあります。

ポジションが変わり、失った2シーズン

浅野監督が退任して、三浦泰年監督が就任した2017シーズン、水本さんは右サイドバックでのプレー機会が増えました。
センターバックには田中秀人のほかに上本大海や丹羽竜平が入り、左サイドでボールを動かして、ゴール前に入ったところを逆サイドから飛び込む。
ゴール前の嗅覚を守備だけでなく攻撃でも活かして4ゴール。

しかし2018シーズンになると新加入の平出涼や谷口功が起用されるようになり、水本さんはサイドバックとしてもセンターバックとしても出場機会を減らし、終盤はベンチにも入れない時期が続きます。
水本さんにとっては初めてと言ってもいい境遇です。
チームはJ2昇格を決めましたが、個人としては悔しさが募るシーズンでした。
「今までがうまく行きすぎていたっていうのもあるからしょうがないですよ。だって俺はこのシーズンだけ味わったけど、もっとずっと味わっている選手も絶対いただろうし、その中でちゃんとやるべきことをやって、ある意味精神的には鍛えられた1年でしたよね。
もう監督のやりたいサッカーに合う合わないは絶対にあるから、だからしょうがないし、俺は絶対監督にはなりたくない、無理な仕事だって思うんです。結果がすべての世界で、自分の首が懸かっていて、そういうのはもういいっす、お腹いっぱいですっていう感じです」

J2昇格後、FC KAGOSHIMAとヴォルカ鹿児島でそれぞれ九州リーグを闘った仲間たちとの記念撮影

シーズンの終わり、三浦泰年監督は退任して、金鍾成監督が後任に就任して、そして水本さんは2019シーズンも鹿児島ユナイテッドFCの選手としてプレーすることが決まりました。

J2という舞台に返り咲いた1年

2019シーズンも開幕直後は試合に絡むことができませんでしたが、第5節のFC町田ゼルビア戦にスタメンで起用されると、そこからは完全に定位置を確保します。

「前の年にずっと試合に出ていなかったからゲーム勘とか全然なかったし、自分の自信も失っていた中で、ある意味ここで選手生命を懸けてやってたシーズンではあったんです」
そして2012シーズンで鳥取を満了になって以来のJ2でもありました。
「J2の中でも上のチームと下のチームで差はありましたね。とはいえやっぱりゴール前の攻撃の精度だったり、守備の強度はJ3とはぜんぜん違うんですよね。ひとつでもポジションをまちがえたらやられるし、それは痛感しました」
水本さん個人としては通用している印象を受けましたが「70点以上取られているんですよ(42試合73失点)」と苦笑いします。

「もちろん通用した部分もあるけど、やっぱり個人で守っていてもどうにもなんねえって時もあるし。
結局相手の全員がうまくて速かったら、1人を抑えてもどんどん湧いてくる、みたいな。
それを5月に柏レイソルとやった時にすごく感じましたね。あの試合勝つには勝ったけど、瀬川(祐輔)を抑えても江坂(任)が出てくる、クリスティアーノも出てくる。次から次に湧いてきて、俺の中では結構な絶望でしたよ。ああいうところとやるともうひたすら相手より走って、ビビっててもボールを取れないから、守備でも攻めないといけないってすごく感じました」

苦しみ抜いた2019シーズン、最終節のアビスパ福岡戦に敗れ、J3降格が決まります。
「やっぱり勝てなくなる時って雰囲気もあるし、肌感覚で分かるんですよね。
1人が奮闘しても無理だから。
チームスポーツだから。
監督もだけど、ピッチの中で闘う気持ちにもっていけるモチベーターみたいなやつがいないことには負の連鎖はなかなか断てないです。
良い時なんか別に何も言わなくなったいいんだから、悪い時にいかに声をかけてチームを奮い立たせるかですよ
もちろん監督の指示もサポーターの声援も大切なんですよ。
それでもピッチ内でリーダーシップを取るやつが絶対に必要なんだっていうのを感じました。
俺にはそれができなかったから。
俺はもうただ黙々とやるタイプだったけど、それこそ(元ブラジル代表キャプテンの)ドゥンガみたいにプレーで魅せるとかじゃなくて、チームを鼓舞する選手ってあんまりいなくないですか」

そして続いた言葉は、ビジネスマンらしさに満ちていました。
「まあそんなやつはどこの業界でも欲しい人材だよね。サッカーもだけど、社会においても“こいつできるな”ってやつは多分サッカーやってもうまい。サッカーとビジネスって構図が似ているって俺は結構思うんですよ。結局は会社組織で良くない流れは連鎖するし、1人おもしろいやつがいれば逆にどんどん勢いに乗っていっちゃう時もあるし」
2019シーズンを終えて、そして2020シーズンをもって水本さんは現役を引退します。
そのことは後でお話するとして、先にこの流れで引退後の水本さんについて。

農業のビジネスマン

引退した水本さんは故郷熊本に帰って起業しました。
株式会社成郷。
水本勝成の「成」に、尊敬している西郷隆盛の「郷」で「せいきょう」。
「農業をかっこよくひっくり返す」という言葉を掲げ、減農薬のブロッコリーなどの野菜を生産してECサイトで販売して、野菜を手軽に接種できる「VEGEMOパウダー」も製作して販売する。
最近では熊本県以外にも活動領域を広げて会社を作り、水耕栽培やスマート農業といった領域が持つ可能性を広げようと模索しています。
「みんな食べものを食べるし、食べるものがなくなったら困ってしまう人がいる。僕は食いたいものがあるんだったら、自分で作るって感覚だし、自分で作れないんだったら誰かといっしょに作る。第一次産業っていうのは絶対になくならないって思っているから」

引退した後にまっさらな視点から世の中を見回して、ビジネスとしての勝機があると思ったからこその農業でした。
さらに今は福祉の分野も勉強していて、農福連携を模索しています。
シングルマザーや障害者など生活が大変な人たちの助けになるような事業を育てていくことができないのか。
さらにさらに、サッカーも絡めてトライアングルで動かし、相乗効果を出すことができるのではないかという目線ももっています。
よく「スポーツ経験者は根性があるからビジネス(特に営業)でも通用する」という言い方をされますが、水本さんがサッカーを通して得てきた財産とは脳筋的なものではなく、個人の持ち味をどう発揮するか、自分にはできないことをどう助けてもらうか、お互いの個性をどう組み合わせてより大きな力にするかといったチーム作りの真っ只中を生きた経験でした。
そしてサッカーが、Jリーグが持つ求心力も感じています。

だからこそ古巣の鹿児島ユナイテッドFCがどうなっていって欲しいかを聞くと、ちょっと違う目線の考え方をしていました。
「もちろん成績が良くなるためにはいい選手がいないといけないじゃないですか。それで日本のクラブって結局スポンサー収入が大半を占めているじゃないですか。だからさっきの農業じゃないですけど、自分たちでも事業を興してそっちでも売上を立てられたらいいじゃないって思う。
ある程度の予算を元手にして、最初は先行投資だろうけど、どんどん回収していけるし、長い目で見ればメリットがあるはずなんです」

効率的な水本さんだから今回の取材も30分40分で手際よく終わると思っていましたが、引退後の水本さんの話は2時間を超えても終わる気配がありません。
事業の中からサステナブル=持続可能性というテーマにまで話は進みます。
「あの、名前忘れたんだけど、イングランドの4部くらいにそういうのに力を入れていて、世界一サステナブルって言われているクラブがあって…」
奇しくも夏に来日した英国屈指のビッグクラブであるトッテナム・ホットスパーが講演をした際に、資金や人手に限りがあるクラブのお手本として「フォレストグリーン・ローヴァーズFC」の名前を挙げていました。

「そうそれ!俺もここでやったらいいなじゃないって思ってる。イギリスは風が強いから風力発電ができるけど日本は難しいところがあって、だから太陽光発電とかバイオマスとかは農業でも使える。
行政だけでやれることにも限界があるし、ユナイテッドのようなプロクラブを民間企業も行政も巻き込んで新しい取り組みをやるとか、そういう地域密着やりたいですよね。
それで僕はすごく尊敬する社長がいるんだけど彼は“人を助けなさい。働きたいけどなかなか働けない人とかを幸せにする事業をして、それであなたも幸せになりなさい”って言われて、なるほど、そうだな、と。
だから農業と福祉を連携させて、そしてサッカーも絡めてやりたいんですよ」

喜入の地域振興についても興味津々な水本さんでした

話せば話すほど、元プロサッカー選手水本勝成はこんな人間だったっけ?と思ってしまいます。
チーム全体の練習が終わると、他の選手がランニングをしたりシュート練習したりしているのを横目にスパイクと飲み物を持ってシャワーを浴びに帰るタイプでした。
そのことを当時聞くと「俺は監督が用意したメニューで全部出し尽くすことにしているから」という答えが返ってきました。
サッカーを離れても群れることなく気ままで大人しい印象。
ただサッカーへの、勝利への想いは本気だったなとは思います。
そしてクラブ愛も。

「前例がないとか、よそもやっていないからやらない、じゃなくて、よそもやっていないから、前例もないからやる価値があるんじゃないですか。
クラブも大きくなって、お客さんも入っているし。でもそれで勘違いして満足していたら後は衰退するだけっすよ。選手たちだけじゃなくて、クラブもチャレンジする気持ちを忘れちゃいけないですよ。
今シーズン、J2で勝てない時期を過ごしていて、でも足元を見直すいい時期なのかもしれないですよ。
でも、ものを言いたいんだったらやっぱり金だって思うじゃないですか。
逆に俺がクラブ代表の立場だったら、文句言うんだったらお金を出してくださいって思うし、だから今までとは違う軸でお金を産む方法を考えないといけないっていうことも考えるし」

たくさん言葉を費やす水本さんはひとしきり話して、そして付け加えました。
「でも僕たちは応援するしかないじゃないですか。ああだこうだ言いながらも結局は応援するじゃないですか」
この「応援」という言葉は2020シーズンの水本さんを語るうえでキーワードになります。

“残された”1人で闘い抜いたラストシーズン

降格したJ3で迎えた2020シーズンでしたが、それ以上にコロナ禍の印象のほうが大きい方も多いことでしょう。
ホーム開幕戦も、無人の鴨池で迎えました。
「なんか練習試合みたいな感じでしたね。正直なんかね、もう楽しくはなかったですね」
有観客になっても声援は禁止され、拍手が響くだけの空間。

ただそれ以上に水本さんにとって大きかったのは、2019シーズン終わりに多くの仲間たちが引退していったことでした。
J3元年から同じピッチに立った西岡謙太、中原優生、吉井孝輔。
創世記のJFL時代から闘ってきた谷口功、田中秀人、冨成慎司。
九州リーグのユナイテッド前夜にライバルながら同じ志を抱いていた赤尾公、永畑祐樹。
そしてFC KAGOSHIMA時代から同じ時間を共にしてきた田上裕。
みんな引退して、水本勝成が2014シーズンからプレーするただ1人の選手になっていました。
「なんか俺だけ1人残された感がすごくて。
“みんなの想いも背負ってお前が1年がんばってくれ”ってタノさんとかまわりの人たちからも言われるんだけど、簡単に言いなさんなってって感じ。
モチベーションもくそもねえのに1年間やるのって超大変じゃん、みたいな。
シーズン中に怪我をしちゃったし。
でも(当時トレーナーの古川)将也とかずっといっしょにやってくれて、俺を奮い立たせるような声かけとかしてくれたし。
医療スタッフも尽力してくれて予定よりも早く復帰できたし」

11月7日のロアッソ熊本戦では、途中出場からヘディングでダメ押しのゴール。
12月13日の“伝説の”ガンバ大阪U-23戦では契約満了リリース直後に劇的な同点ゴールを決めた川森有真選手に目が行きがちですが、その直後にゴール前の混戦から勝ち越しゴールを決めたのが水本さんでした。

左隅が現在は徳島ヴォルティスでトレーナーを務める古川将也さん

「色んな人からの声で闘い抜けた1年でもあったかなと思いますけどね。
なんか気持ちで乗り切った感じ。
義務感というか、責任感というか。
もう自分の意思というよりもまわりの意思に動かされてた、みたいな。
俺1人だったら多分無理でしたね。
だからそういう意味ですごく支えられた年だったんですね」

飄々と淡々とピッチに立ち続けているように見える水本さんでしたが、たくさんの支えを身に感じながら、最後のシーズンを闘っていました。
声を出すこともできない、応援する側にとっても厳しいシーズンでしたが、みんなの想いをしっかりと受け取っていました。
ガンバ大阪U-23戦の翌日、現役引退を発表しました。
「もう決めてましたね。もうサッカーから離れたかった。やっぱりどんどんカテゴリーが上がってくると楽しくはなくなってくるじゃないですか。
それで最後に1人残されてみんなの想いを背負ってがんばれよみたいに言われてばっかりだから。
だからまあ疲れた。
身体っていうよりも心が疲れてたんだよね」

現役最後のブラウブリッツ秋田戦では終盤、交代で退いた酒本憲幸キャプテンから渡された赤いキャプテンマークをサッカー人生で最初で最後で左腕に巻き、粋なはからいでしたが、色々な意味で違和感でした。
そして最後の引退セレモニーでは大泣きしています。
「これ田上のせいですけどね。もらい泣きですよ、完全に。あのおっさんが花束持ってくる前からわんわん泣いてたから、それで話そうとしたこともすっ飛んだんだから。
でもこの胴上げされる時もホッとしていましたよ。もう来年キャンプに行かなくていいんだって。
まだやりたくてもやれずに引退する選手もいるかも分からないけど、俺はもうお腹いっぱいやれたって感じでやめたから。
もう未練も何もないです」

改めて2020年12月14日に出された水本選手の現役引退リリースをご覧下さい。

私、水本勝成はこの度契約満了に伴い今シーズンをもちましてサッカー選手を引退することになりました。
まず、2019シーズンのJ2残留、2020シーズンのJ2昇格、この2つの目標を達成する事ができず強く責任を感じております。
本当に申し訳ありませんでした。

2013年、サッカーを辞めようと思ってる自分を先輩の栗山くんが鹿児島に誘ってくれて正直なんとなく鹿児島に来て九州リーグを戦うFC KAGOSHIMAに入団させて頂き、気づけば今日まで8年の月日が流れていました。
1年、また1年と鹿児島でプレーさせて頂いている中で人の暖かさを感じ、支えられてサッカーができている事の喜びを知り、最後は「俺がやらなきゃ」と勝手ながら責任感や使命感をもってプレーするまでになっていました。

サッカー選手というよりは、人として鹿児島に育ててもらい、成長できました。
これまでサッカーをただやってたという感覚の僕に、「サッカーをさせてもらってる」「ありがたい!」という気持ちを持たせてくれたスポンサー、ファン、サポーター、鹿児島に本当に感謝してます。
辛いこともいっぱいありましたし、諦めかけたことだってありましたが、いつもどんな状況でも熱く応援して下さったファン・サポーターの皆さま、いつも純粋な瞳で見つめてくれた子供達、僕は皆さんの気持ちに支えられてピッチの上で全力で戦い続けられました。
JFL昇格、J3昇格、J2昇格と3回の昇格を皆さんと共に喜べた事は本当に幸せでした。
最初はなんとなく来た鹿児島で、いつの間にか僕を熱く本気にさせてくれた皆さまには感謝しています。

私はもう選手として白波スタジアムのピッチを走ることはありません。
この引退に迷いはありません。
心のどこかで鹿児島で引退するという気持ちでいました。
鹿児島ユナイテッドFCはこれからも支えて下さる皆さんと共に走り続けていくと思います。
これからも鹿児島ユナイテッドFCをよろしくお願い致します。
今まで水本勝成とともに戦ってくれたすべてのチームメイト、スタッフ、ファン、サポーター、スポンサーの皆さま
「8年間本当にありがとうございました」。
この場を借りてお礼を言わせて下さい。
お世話になりました。

冷静沈着で自由気ままな水本勝成。
けれど心の奥底で想いの炎を燃やし続けていたのも水本勝成。
そして…水本さんだけでなくこれまでにプレーしてきた選手たちが燃やしてきた想いは、今も鹿児島ユナイテッドFCの選手たちはもちろんファンやサポーターにも受け継がれ、誰もが心を燃やしながら共に闘い続けています。

7シーズン水本さんが背負った背番号23は今、最後のシーズンでセンターバックを組んだ岡本將成選手が背負っています

「サッカーではトップまで行けなかったけど、次の人生ではもっとサッカー以外で自分が興味があることとか知り合いを通じてやれることがあったら自分でやりたいなっていうのはずっと思っていましたから。
実は現役時代からですね。
でも30歳ですよ。
普通に社会に出て30歳じゃ遅いじゃないですか。
だから逆に選手たちは華やかな世界にいて、まあチヤホヤもされるし今思えば俺も勘違いする時期もありましたけど。
でも、だからプロサッカー選手であるうちに自分で何かやるべきですよ。時間はあるんだから」

先ほどご紹介したように、結果として引退した30歳のタイミングから事業を起こした水本さんは賢くたくましく社会を生きています。
たくさんのここでは明かせない話題も多くて、今まで知らなかった水本勝成像もたっぷりと見せてもらいましたが、そんな水本さん自身がどうなっていきたいのかが気になりました。
「俺はもう40歳でFIREしたいんで」
最近よく聞く、経済的に十分な余力を持って若いうちにリタイヤするFIRE。
「だから今ちょっとがんばりたいです。あんまり稼ぎすぎると税金とか大変だから、コンサルぐらいはやるかもしれないけど。金を作ってのんびり過ごすために今がんばる。今はもうそれしか考えていないですね」
やっぱり水本さんは面倒くさがりで自由気ままでした笑
それじゃあ悠々自適な生活になったら、例の「PICK UP PLAY!!」をまたがっつりやりましょう笑!

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