【2月23日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2025 vol.02
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は2月23日に行われる2025明治安田J3リーグ第2節、鹿児島ユナイテッドFC vs ツエーゲン金沢のマッチデープログラムです。


日程表・順位表・テキスト速報
2025明治安田J3リーグ第1節
vs カマタマーレ讃岐 会場:鹿児島県立鴨池陸上競技場(白波スタジアム)


相馬直樹 監督コメント(2月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

開幕戦を終えて
勝ってスタートしたかったのが当然の想いですが、我々のいいところはたくさん出せたゲームでした。
それを勝ちにつなげられるようにしなければなりません。
次も幸いホームでできるので、自分たちの良いところを出しつつ勝ち点3、さらにプラスアルファのものを積み上げられるようにしたいです。
速い攻撃から奪った開幕戦のゴール
別にカウンターを必ず撃ちたいという話ではありません。
あのシチュエーションでチャンスになった瞬間に飛び出していって、最後に点を取ったのがボランチの(山口)卓己でした。
やはり人がボールを追い越していくところをやりたいところですし、実際にできた部分でもあります。
既存選手の異なるポジションでの起用について
色々な流れがありますが、これまでのプレシーズン期間でトレーニングマッチをたくさんやってきました。
その時々でやれる時間が長い短いはありましたが、色々なポジションでやってもらう機会がありました。
それは狙っていた部分もあったし、そうでない部分もありましたが、良さが出たところは色々なポジションでありました。
そのかみ合わせをしながら90分のなかでより次のゲームに向けて、今後に向けても上手く組み合わせをして彼らの良いところを出していきたいです。
たとえば(開幕戦にボランチで出場した)渡邉英祐は、当然サイドバックで左でも右でもできるところも分かっています。
そのへんのところを強みにしていきたいです。
開幕戦における左右のスライドや距離感
もちろん良い時間もありましたし、後半は距離が出てしまったと思います。
そこは風の影響の部分もありますし、リードしてから距離が遠くなった部分はあったと思っています。
けれど、そのへんも含めて次への修正ポイントとして考えています。
開幕戦での失点について
やはりまだそういった部分での徹底のところで足りないところはあります。
ただゲーム展開のなかでいうとああいうことが起きたのは、そういう流れがあってのものでした。
ベンチとしてももう少し流れを切ることができればと思っています。
そこを含めて次に向けて修正したいところです。
強い風での闘い方について
その風のなかで風上風下の闘い方を整理する必要があります。
そのなかでより足を運ぶこと、技術的にしっかりボールを押さえることを意識することは普段から必要です。
今週で開幕戦を迎える金沢の印象
相手のほうが分からない部分は当然あります。
ただ彼らは少し開幕の緊張感をもってくると思います。
そこのところで我々が、相手がいい意味で開幕に向けて研ぎ澄ませてくるところに飲み込まれないように、逆にそれによって生まれる固さを突いていけるような、そういう立ち上がりにしたいです。
(金沢の伊藤監督は)ボールを大事にしたい意識が強いという印象はあります。
多分本当は後ろ4枚でやりたい監督だと思っていますが、最近は3枚の印象もあります。
ゲームで4枚にしてくることもありえますし、そのへんのところを含めて色々な手を持っていると思っています。
前の方にもいい選手を多く擁していますが、あまりどこかに意識を持ちすぎるとなかなかうまくいかないところが出てきます。
そういう要素は分かっていますが、我々らしく闘えるようにしなければなりません。
次の試合に向けて
ホームですので勝つところに全員で向かって力を合わせること
前節も魅せられた部分でアグレッシブに闘うところ、攻守両面のところを90分やり通して勝利したいです。
スタジアムの雰囲気に感じること
本当にすばらしいものがあります。
もちろん開幕というところでワクワクしていましたが、残念ながら勝利で喜べればもっと良かったと思いますが、すごく温かくいい雰囲気を作ってもらえた時間でした。
次もホームなのでがんばってもっと喜べるようにしたいです。
鹿児島の街の雰囲気
本当に明るい感じがあります。
プラス、太陽のパワーがあって、桜島のパワーも感じます。
すごくそういうエネルギーをもらえる街だなと感じています
藤村慶太 選手コメント(2月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

開幕戦を振り返って
前半は良い部分を出せていたゲームでした。
そこで追加点を取るチャンスがあったなかで取れなかったことで、結果として引き分けになりました。
チャンスで取り切ることは次の試合に限らず、シーズンを通してでもありますが、意識してやりたいです。
開幕戦から改善すべき点
前半からすごくアグレッシブに行っていたなかで後半は体力的に落ちたところはありました。
またボールを奪ってからもミスが出てしまって、相手がボールを持つ時間が長くなったところはあります。
そこは体力的に厳しいところでもボールを持てることが大事です。
古巣の金沢戦に向けて
6年間お世話になったクラブですし、知っている選手もいて楽しみです。
けれど今は鹿児島というチームでやっています。
次もホームでできますし、勝利したいです。
金沢の印象
監督が変わってスタイルも変わったところはあります。
去年も何試合も金沢の試合を見ましたが、J2でやってきた経験ある選手がいるし1人1人の能力は高いので、相手にボールを持たれる時間は長くなるかもしれません。
それでもしっかり前から奪って速い攻撃を仕かけることはできると思うので、そういう部分も狙いながらやれれば勝利できると思います。
どのように闘いたいか
うちとしてはアグレッシブにどれだけ行けるかというところと、取った後のボールを大事にしながらも速い攻撃をするのは新しい鹿児島の良さなので、それを決めきれれば勝利できると思います。
立ち上がりのところをしっかり入りたいです。
金沢のサポーターの印象
非常に温かいサポーターでした。
僕がいる時も苦しいシーズンが多かったのですが、そのなかでも最後まで応援してくれたし後押ししてくれたので、金沢でやっていて心強かったです。
川島功奨 選手コメント(2月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

開幕戦を終えての感想
本当に自分が想像していた通り、サポーターのみなさんが熱く熱く応援してくれました。
改めて鹿児島ユナイテッドFCに入団してよかったなと思いました。
けれど、デビュー戦ということで皆さんがすごく持ち上げてくれるというか、大きく評価してくれることはありますが、自分個人としてまったく満足のいくパフォーマンスではありません。
本来の力を考えればもっとやらなければなりませんでした。
チームの勝利に貢献できなければなりませんし、デビュー戦ですが責任を感じています。
90分ピッチに立って感じたこと
苦しい時間帯でも観てくれている皆さんがいる自覚がありましたし、そういう人たちに情けないプレーはできないと思っていました。
そこで最後の振り絞る力はトレーニングマッチではない違いを感じました。
開幕戦でできたこと
人に強く行くこと、ボールを奪いきることはチャレンジできました。
本来は攻撃でも違いを出さなければなりませんが、ボールを奪いにいく姿勢は出せたと思います。
得点の場面で感じたこと
今年は縦に速いサッカーを掲げていますし、時間を作りながらじっくり攻めることの使い分けができればもっと点を取れると思いますし、体力的にもみんなが楽に試合を進めることができたと思います。
カウンターで仕留める場面とボールをもって仕留めるシーンを使い分けて、相手に対策しづらいプレーができればと思います。
次の試合でめざすもの
まず勝ち点3は絶対だと思いますし、その姿勢は練習から作れています。
次の試合では皆さんに勝ち点3を届けられるようにしたいです。
鹿児島県一体となってJ2昇格の目標を掲げているので、サポーターの皆さんも一体となって後押ししていただければと思います。
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.38(Total vol.50)」
吉嶺拓馬さん(株式会社西原商会 広報部 主任)

「おつかれさまでーす」
軽やかなあいさつとともに長身の男性が、西原商会本社ビル5階のクラブ事務所に入ってきますが、クラブ職員も「おつかれさまでーす」の軽いあいさつ。
ほかの来客に比べるとかなり軽いリアクションになりがちなのは「株式会社西原商会 広報部 主任 吉嶺 拓馬(よしみね たくま)」さんだから。
いわゆる「大家さん」であり、ユナイテッドとの主な窓口として毎日のように顔を合わせて、しょっちゅうお話をする間柄でもあります。
そんな吉嶺さんだから、話題の入りはやっぱり開幕戦のカマタマーレ讃岐戦。

5年連続開幕戦でスペシャルマッチを西原商会が協賛されましたが、あと少しのところで勝利を逃した悔しさはやっぱりありますが「やっぱり難しいリーグなんでしょうね」と消化して次に視線を向けています。
今回はユナイテッドと西原商会の関係性についてもですが、もっと企業としての西原商会についてお話を聞かせて欲しいとお願いしたところ「いいっすよ」と体育会系的二つ返事で応じてくださりました。
そもそも西原商会ってどんな会社なんですか?

昭和46年(1971年)に創立された西原商会の根幹は業務用食品卸。
居酒屋を中心とした飲食店が使う食材や調味料などをお届けしていますが、飲食業以外にもホテルや病院や介護系など様々な業種の食を下支えしています。
そのなかで特筆すべきは鹿児島・九州を越えて、北は北海道から南は沖縄県まで、59の事業所を構えていることで、日本各地で「西原商会」のトラックが走っています。
「なんか結構知ってくださっている方が多いし、意外とトラックが走っているんですよね、あんまり気にしないだけで。僕も会社に入ることになった当時は長崎の大学生だったんですけど、“浜町”っていう中心市街地のアーケードを歩いていたら“意外と走っているんだな”って思って。おかげさまで“東京で見たよ”“大阪で見たよ”っていうのは言っていただきますね。それでDAZNのCMを観てはじめて“あ、鹿児島の会社なんだ”って」

事業所だけでなく、様々な食品会社をM&Aすることで西原商会グループに組み込んでいます。
鹿児島のサポーターにとって馴染み深いのはホームゲーム会場のユナマルシェにも出店している「さつま揚げの薩摩家」ですが、和菓子、プリン、製麺、ハム、魚介類、肉類、湯葉、、、とにかく色々。
開幕戦で対戦したカマタマーレ讃岐の香川県にも「株式会社 亜味撰(あみせん)」という小豆島で佃煮を作っている会社がグループとして経営しています。
「うちで経営を引き継がせてもらっているんですけど、佃煮って正直今の若い人たちってあんまり食べないと思うんです。でももし佃煮がなくなるとどうなるか?っていう話で正月のおせちの中には意外とあちこちに佃煮って入っているんですよね。
だからそういう昔から守ってきた食文化がひとつなくなってしまうのはもったいないじゃないですか。
正直グループ全体の売上からすると小規模で、むしろ赤字だったりするところを引き受けることもあるんですけど、食の企業として地元をはじめ食文化を守るという意味でM&Aを行うひとつの軸としてありますね。
最近は吉野にある“竜乃屋(たつのや)”というかるかん屋さんに、うちのグループに入ってもらったのもそういう想いですね」
天文館などに構える「さつま揚げの薩摩家」の店内には、さつま揚げと全然関係のないこれらの商品も販売されていますが、同じグループならではの展開でした。
「もう僕たちも今何社あるのかすぐパッと出てこないくらい増えていて、多岐にわたっていますよね」
そして事業所という点では海を越えて海外にも展開していて、シンガポール、香港、タイ、台湾、フィリピン、ベトナムとアジア各国へ。
そして昨年の夏からはじめての欧州進出で、ロンドンに「西原商会UK」を構えていますが、これは世界各国の美味しいものを日本に輸入して売る、、、の反対でした。
「貿易で輸出するためです。現地に日本の食材をお届けするっていう形で、日本国内でやっていることと大差はないですね。どうしても今、日本食は世界中に広まってはいますけれど、なかなか正しい日本食というか、本来の日本食としてはなかなか伝わっていなかったりするのがあります。
それで実際に現地にうちの営業が行くんですけど普通、昆布は昆布なんですよ。そこで利尻の昆布なのか、羅臼の昆布なのか、それをどう使い分けるのかみたいなところまで営業するのはなかなか難しいんですけど、うちは国内で営業していた人がそのまま海外で同じように営業できるので、そういう細かいフォローもしながら美味しいものを届けられるようにしています」
ロンドン事業所営業開始のお知らせ | 業務用食品卸 株式会社西原商会

そういった海外への展開とは別に西原商会本社にも多くの外国籍の社員がいて、日本の文化が好きだったりして留学して、そのまま就職というケースも多いようです。
海外での事業展開に必要な人材としてではなく、単純に良い人材を求めていった結果、日本語をしっかり話せる留学生からの就職が約一割に到達するほど。
「食」を切り口に多様な側面をもつ西原商会ですが、吉嶺さんご自身はどのような経緯で就職することになったのでしょうか?
故郷への就職からいきなり名古屋へ
吉嶺さんは鹿児島中央高校卒で1988年生まれの年代。
ユナイテッドに選手として所属した八反田康平選手(現在はジェイリースFC)や満留芳顕(現在はユナイテッドの営業兼アカデミーGKコーチ)の1学年先輩です。

とはいえ吉嶺さんご自身がされていたのはバスケットボールなのですが。
高校を卒業してからは長崎の大学に進学して、経済学部で学び、やがて就職活動をすることになります。
「まあ鹿児島にいずれ帰ってくればいいかなぐらいには思っていたんですけど、ぶっちゃけ西原商会って知らなくて。それで鹿児島の企業の説明会があったので、そこで色々と見ているなかで西原商会のブースもあって、そこで初めて知りましたね」
小売業や飲食業、観光業など消費者と直に接する機会の多いBtoC(Business to Customer)ではなく、業者相手の事業を展開するBtoB(Business to Business)主体の企業だから、よほど「食」に興味のある大学生でなければ、あまり知る機会はないかもしれません。
色々な企業を受けた吉嶺さんでしたが、最終的に西原商会への就職を決めました。
「人事の人たちが結構仲良さそうで、雰囲気が良さそうだなというのがあって。それでどうせどの会社に入ってもきついんだし、それだったら雰囲気良さそうなところがいいよな、というのとプラス鹿児島の企業だったというのもあって決めましたね」
そうして就職すると最初の勤務は名古屋事業所。
「東京か九州とかかと思ったらまったくの予想外でびっくりしましたね。それで名古屋は名古屋駅と“栄”が二大市街地みたいな感じで結構ぎゅっとしているイメージですね。それで店舗を回りながらの営業をずっと7年間やっていました」
若手は既存顧客である飲食店を中心にまわりながら、経営者といろいろとお話をしながら商品を勧めたりする仕事です。
どの企業でもそうだろうという学生時代に予想した通り、仕事をするということは簡単なことではありませんでした。
「学生の時ってなんかしらやれそうな自信を変に持ってるじゃないですか。そこはしっかり鼻を折られたというか笑。
きつかったんですけど、楽しかったですね。
目の前でお客さんが商品を購入する決断をしてくれて、次に行った時にお客さんの反応がすぐに返ってくるので楽しかったですね。お客さんが“あれ結構評判良かったよ”って言ってくれればもちろんうれしいですし、“もうちょっとなんとかならんかね”って言われれば、それはそれで違う商品を提案したりはできるので。日々同じところを回りながらも同じ仕事はしない感じで。
それから単純にみんな仲が良かったし、その営業所のなかでも結構体育会系の人が多いので、同期のなかでも色々と競い合って楽しくやっていましたね」
本社鹿児島の広報部、そしてサッカーの世界に
名古屋事業所に7年間勤務していた吉嶺さん。
西原商会ではある部署に空きができるとグループ全体から公募する仕組みがあり、本社鹿児島の広報部に空きが出たタイミングで希望を出し、鹿児島に帰って来ることになりました。
とはいえ「広報部」と言っても、西原商会の場合はかなり独特の立ち位置です。
メディア対応の担当も含みますが、お取引先を招いての商品展示会の運営を担当する人もいますし、社内広報紙を制作する担当もいますし、お客さん向けの商品カタログを作る仕事もありますし、社長秘書の業務を担う人もいますし、吉嶺さんご自身は西原オンラインストアのECサイトを担当していますし、建物関係の修繕を手配したり、新しい営業所や工場を作る人たちもいます。

「何やっているのか分からないですけど」と吉嶺さんも笑いますが、最後の2つはいよいよ「広報部」の仕事ではないと思ってしまいます笑。
2018年4月、鹿児島に帰ってきてそんな部署で働くようになった吉嶺さんは、西原一将社長から「サッカー好き?」と聞かれます。
吉嶺さん自身がプレーするのはバスケでしたが、普通に観るスポーツとしてサッカーも好んでいたこともあり、社長からの指名でアミュ広場やキャパルボホールでのロシアW杯のパブリックビューイング開催に携わることになります。

試合が始まる前には西原社長のほか、鹿児島ユナイテッドFCの徳重剛代表や当時の三浦泰年監督もゲストとして参加してのトークショーなども行われ、日本代表の躍進もあり、大いに盛り上がりました。
「その時は本当に上からの指示で手伝っているだけだったので、何かを成し遂げたとかはないですけどね」
もともと西原商会がユナイテッドに協賛するようになったのは2015シーズンの途中から。
アマチュアサッカーの最高峰JFLで闘いながら徐々にJリーグ入りが現実味を帯びてきていた時期に徳重代表から協賛の相談を受けて、ユニフォームにロゴを掲出しました。

その翌年には西原社長が恩師からの断れない依頼で鹿児島県サッカー協会の役職に就き、今では日本サッカー協会の副会長です。
「よく西原もJFAの副会長になったことを聞かれるんですけど、ラ・サール高校のサッカー部でそんなに強いわけじゃなかったし、そこでも補欠だった自分が今でもサッカーに携わらせてもらって、当時あこがれだった宮本恒靖会長のもとで仕事をさせてもらうのは夢のような話がつづている感じがあるって言っています。今年も開幕したけれど、相馬直樹さんという日本代表のレジェンドと呼ばれる人が鹿児島に来てくれていることも、サッカーに長年携わるものとしてすごく嬉しいんじゃないでしょうか」
2020年にはユナイテッドのクラブ事務所が西原商会本社ビル5階に入ったこともあり、吉嶺さんはユナイテッドとの窓口を担うようになっていきます。

J2に昇格した2019シーズン、西原商会ははじめての冠試合「西原商会SPECIAL MATCH」を行います。
2019年5月4日の柏レイソル戦。
J1優勝経験のある名門を相手に先制されながらも、当時所属していた鹿児島出身の五領淳樹選手と牛之濵拓選手(現在はギラヴァンツ北九州)のゴールで逆転勝ち!
やはり吉嶺さんにとっても最高の思い出です。

柏戦の勝利に劣らず印象に残っているのが翌年12月13日のガンバ大阪U-23戦。
1-4とリードされたところから退団が決まっていた川森有真選手(現在はwyvern)たちの怒涛のゴールラッシュで6-4と大逆転した一戦ですが、、、
この試合もまた「西原商会SPECIAL MATCH」でした。
翌シーズンからは「開幕戦に西原商会」が恒例になります。
西原社長が始球式前のあいさつで場内の笑いを持っていくのも恒例。
ハリセンの配布が行われるのも恒例。
最初の頃にハリセンをデザインしていたのも吉嶺さんでした。
オモテウラそれぞれにデザイン性の高いものにしたいところですが、細く折り曲げて叩くものだから、それを前提にしたデザインにしたほうがいいという考えもあります。
試行錯誤して作られたハリセンの大きな音が、バックスタンド北側の声援と合わせて場内の一体感を育む上でとても大きな働きをしているのはサポーターであれば多くの方が認めるところです。

西原社長は、鹿児島ユナイテッドFCの取締役にも名を連ねています。
同時にユニフォームにロゴを掲出するトップパートナーであり、県協会の役職は離れましたがJFA副会長でもあります。
そんな西原社長のもとで働く吉嶺さんは、どのようなスタンスでクラブを観ているのでしょうか?
「もう本当に他のサポーターの方々といっしょだと思いますよ。
本当にひとつひとつの試合に一喜一憂して、毎週スタメンが出るまで待って、メンバーが発表されてからああだこうだ言いながら実際に試合を観て、またああだこうだ言いながらシーズンが終わって、なんか退屈だなと思ったら“そうかサッカーやってないからだ”っていうのを繰り返していて。
今は子どもが生まれているので行けないこともありますけど、子ども連れて観たこともありますし、アウェイ戦はDAZNで観ていますし、おかげさまでSNSとか観ていたら西原商会のCMを観たらJリーグ開幕したんだなっておっしゃっていただいて、そうやって知ってもらってありがたいと思います」
そういえば西原商会は日本全国に展開していますが、様々なクラブのサポーターがグループ全体に点在しているということでもあります。
「めちゃくちゃいますよ。それこそ清水エスパルスが鹿児島キャンプをしている関係で協賛をしていて、お返しのグッズをいただくので静岡の好きなサポーターに送ったり。ユナイテッドに協賛しているからといって鹿児島を応援しろっていうことではないですし、逆に一昨年は富山事業所の社員がカターレ富山のホームにユナイテッドが来た時に観に行ったりしているんで」
それこそ日本中の各クラブの若きサポーターがJリーグきっかけで西原商会を知り、現地採用で就職するような未来になっていったら素敵だなと思いました。
ユナイテッドと西原商会の未来
ここまでたくさんのことをお話してきましたが、吉嶺さんとしてはユナイテッドにどのような未来を歩んでいって欲しいのでしょうか?
「もちろんいずれはJ1に行って、J1だったり天皇杯だったりで上位になっていって、優勝争いをするようなそんなクラブになっていったらいいなと思いますよね。
あとはユナイテッドをひとつの軸にして色々な人が色々なところで盛り上がっていって、天文館にユナイテッドのユニフォームを着た人がスタジアムからそのまま流れていって、色々な場所でユナイテッドの話をみんながしているような環境になっていけば地域の活性化にもつながるでしょうし。
鹿児島をもっとひとつにというのを鹿児島市からはじまって、色々なところに広がっていけばいいと思いますけどね。
ユニータも整備がされるし、ちょっとずつクラブは大きくなっていくでしょうし、次の10年へといういいタイミングでクラブハウスもできますよね。
開幕戦の後半を観ていると相当疲れるサッカーでしょうから、クラブハウスができたらトレーニング後のケアもすぐできるんだろうなって思いながら観ていました」

吉嶺さんは様々な視点からユナイテッドの未来を観てくれていました。
それではご自身の西原商会についてはどのような未来を見てらっしゃるのでしょう?
「分かんないっす。僕に聞かれても想像がつかない」
吉嶺さんは苦笑いしました。
「僕が入社した翌年かな。西原が引き継いで社長になって、そこからの10年くらいがすごく変化しているので、また変わるんでしょうね。
職場の環境もですし、会社としても僕らが入った時が年間の売上500億円くらいだったのが昨年は1200億円とかになってきているので。それでグループ会社も社員も増えましたし、もうどんどん変化しながら、変えない部分も残しながら変わっていくんでしょうね」
吉嶺さんの語り口はずっと前向きで、湿っぽさがありません。
それは西原商会で働く人たちに共通する雰囲気でもあります。
それこそ10年以上前、前社長時代に吉嶺さんが就職する決め手になったのが「雰囲気の良さ」でした。
「僕も他の会社を知らないのでなんとも言えないんですけど、コミュニケーションもですけど社員と上の人たちとの距離感がいい意味で割と近い会社だと感じています。それは西原も大事にしているところなんじゃないかなって思うんですけどね」

非上場企業の社長相手だから、指示に逆らうなんて難しいでしょうが、指示に納得できない時にどうしているのかふと気になりました。
「なんか言われた時は“あれ?”って思うこともトータルで見てみるとそれが正しかったみたいなことが多くて。
それで“とりあえず1回やってみよう”というのは全体の雰囲気としてはあるかもしれません。だめだったらその時にまた考えればいいっていう話で、それよりもチャレンジしないことのほうが良くないみたいな感じはありますね」
どの企業もそうであるように西原商会にも課題は数限りなくあるでしょうし、うまくいかないこともたくさんあるのでしょうが、それでも前を向いて進んでいこうという明るさ、活力、推進力が企業全体に満ちているように映ります。
そんな西原商会は毎年どのような基準で新入社員を選んでいるのでしょうか?
「僕は人事担当ではないのでそんなに多くの子と接する訳ではないですけど、人と接するのが好きな子が多い気はしますね。あとはお酒を飲むのが好きというよりは、飲み会の雰囲気が好きな人。もちろん酒が好きな子も多いですけど笑。あんまり専門知識とかもいらないですよ。性格が明るくて、あとは食に携わる仕事なので食べることが好きで食に興味があればなおいいとは思いますけどね」
最後に色々な話の流れからもう一度ユナイテッドに話が戻ってきました。

「うちだけじゃなくてスポンサー同士、みんな仲がいいじゃないですか。
これは(長島研醸有限会社の)長山社長のおかげだと思うんですけど、ああやって(立ち見席で応援したりして)クラブとスポンサーをつないでくださっていて、色々と間に入ってくださっているのが大きいんでしょうね。
それで我々スポンサーを好意的に見てくださっているサポーターの方々が非常に多くて、始球式の時も西原の名前が呼ばれた後にあえてチャントとしてうちの社歌を歌ってくれるのがすごくありがたいです。
クラブもそうでしょうが、我々スポンサーとしても、サポーターの皆さんに支えていただているんだっていうのはすごく感じますよね」
お金を出してクラブを支えて下さるスポンサー企業の立場から「自分たちもサポーターに支えられている」と言えることも、そういう気持ちにさせるサポーターのみなさんも素敵で、この幸福な関係性も鹿児島ユナイテッドFCにとってかけがえのない財産です。
取材が終わってからも吉嶺さんはクラブ職員たちと色々とお話をして、それからクラブ事務所を出ると、エレベーターではなく階段でご自身の職場へ戻っていきました。
足取りはやっぱり軽やかでした。
相馬監督は何度も「鹿児島という街そのものにパワーがある」と口にしていますが、西原商会という企業が鹿児島で生まれ、今も鹿児島に本社を構え、鹿児島から日本全国へ海外へと飛躍し続けていることが、その鹿児島が持つ可能性を体現してくれているような気がします。
西原商会 企業概要
商号/株式会社 西原商会
事業内容/業務用総合食品卸(ホテル、レストラン、結婚式場、料亭、居酒屋等への食品卸売)
創立/昭和46年12月(1971年)
従業員数/2,229名(グループ合計) ※2,024年4月現在
代表者/代表取締役社長 西原一将
(2025年2月22日、公式ホームページより抜粋)
https://www.nishihara-shokai.co.jp/