【3月23日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2025 vol.04
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は3月23日に行われる2025明治安田J3リーグ第6節、鹿児島ユナイテッドFC vs ギラヴァンツ北九州のマッチデープログラムです。


日程表・順位表・テキスト速報
2025明治安田J3リーグ第4節
vs ザスパ群馬 会場:鹿児島県立鴨池陸上競技場(白波スタジアム)


2025明治安田J3リーグ第5節
vs 高知ユナイテッドSC 会場:高知県立春野総合運動公園陸上競技場(高知県高知市)


相馬直樹 監督コメント(3月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

練習でのミニゲームにおける勝負へのこだわり
もっと出して欲しいと思っています。
こういう世界なので、ひとつ点を取る、取らない、勝つことにこだわって欲しいです。
今日はそれが見えたところも多々あったのでそれは良かったです。
現在のチームの雰囲気
この前は最後に追いついた形でしたが、勝ち点をひとつ取って帰ってこれました。
これがゼロで帰って来るのとでは大きく違いますし、これを次のゲームにつなげる意識に加えて、その先その先と続いていくことを踏まえて、休みを取れたこともあってリフレッシュできていると思います。
ここまでの5試合で感じること
振り返るには全然早いところですが、自分たちのやりたいことができている時間とそれがうまく出せなかった時間があります。
その部分に加えて勝敗という部分に関しては、もう少しうまくゲームをコントロールする必要もあることを、ある意味学んでいかなければなりません。
ここまでに失った勝点を、ここから積み上げられるようにしなければなりません。
J3最多得点について
正直、シーズン前のトレーニングマッチではチャンスを作っても点を取り切れない部分があったので、もう少し点を取るところに苦労すると感じていました。
それと比べると反対に守備のほうが失点が7あります。
1試合1失点以下というところは意識しなければならない数字だと思いますし、無失点のゲームを増やしてしていかなければなりません。
守備の強化について
結果的にすごくではありませんが、失点が少し多くなっていて、失点ゼロの試合がひとつだけです。
1試合のなかで1失点は僕の中ではあると思っているのですが、ただゼロのゲームを増やしたいですし、それがこの前は2失点になりました。
リスタートの流れで失点するところが多いのを感じています。
ただそれ以外も含めてどうやったらゼロにできるのかです。
一番はこの前のゲームで言うと、入りのところです。
群馬戦では私がベンチに入りませんでしたが少し前半の立ち上がりで、高知戦では後半の立ち上がりで失点しました。
そこの入り方がどうだったのか改善は必要です
具体的にディフェンスの形がどうとかいう話ではなく、相手のチャンスをゼロにするのはほぼ不可能に近いので、そういうなかで相手のチャンスに対して最後止めきれるか、止めきれないかです。
そのためにもう一度メンタル面と、試合の入り方を含めて見直す必要があると思います。
ギラヴァンツ北九州について
しっかりとボールを動かしたいチームという印象があります。
攻撃的にプレーしてくる印象はありますが、そのなかでも失点が少ない状況で来ています。
もう少し確認しなければならない部分がありますが、イメージとしては攻撃のチームですが守備のバランスも取れているところです。
攻撃の部分から守備の部分において、我々のどこかにチャンスがあると思って準備していきたいです。
非常に良い相手であり、自分たちよりも上の順位のチームですし、同じ九州の対戦です。
しっかりとチャレンジするプレーを増やして、ひとつ無失点のゲームをホームでできればと思っています。
田中稔也選手と福田望久斗選手の起用法
彼らのところに限らず、色々なところをできることは選手1人1人にとってポジティブなことです。
もちろんスペシャリティ(専門性)として「ここで俺しかできないこと」を持つことも大事です。
ただ同じくらい、監督の要求に応じてこういうこともできる、こういうポジションもできる、守り重視になってもできるし、攻撃重視になってもできる、外に立ってもできる、中に立ってもできるということはすごく重要なだと思います。
もちろん難しい部分はあるでしょうが、それをできないと思っているのではなくチャレンジしてもらうことは、彼らの前線のところに限らずチーム全体として、すごく大事な要素になるかなと思います。
監督兼任のGMとしての3ヶ月を踏まえて
クラブがここまで積み上げてきたものがあって、この地域の中で積み上げてきたものがあります。
そのなかで現場があります。
私自身は色々と他のクラブで選手としても監督としても経験があり、サッカー協会にも携わってきています。
ここはもう少し改善の余地があると思っているところはありますが、僕自身が変えるというよりは、何らかのサジェスト(示唆、提案)をして、より変更できるものは変更していくほうがいいと思っていることはいくつかあります。
ただそれが正解とも限りません。
このクラブ、この地域に合ったところもあります。
そこをもう少し見極める必要があります
そういったものを含めて、育成とトップチームの関係やホームタウンでの活動もですし、現場での運営もですし、こうしたらもっと良くなる、大きく変化があると、J2J1の段階になっても対応できる形になってくるかなと思うこともあります。
現状ここでお話することではありませんが、うまくちょっとずつ変えていく部分であったり、積み上げていく部分や足していく部分も僕の仕事で、できるできない含めて提案することが大事になってくると思います。
吉尾虹樹 選手コメント(3月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

2日間のオフ明けで身体を起こす意味で多少きついところはありましたが、最後のミニゲームではひとつになって優勝できて良かったです。
どんな練習においても結果にこだわることは変わりませんし、球際の部分はチームが求めるところなので、チームみんなが意識できていると思います。
高知戦を振り返って
ベンチから見ていても人に強く来ることは分かっていましたし、だんだんチームが上手くボールを回せなくなっているのもわかっていました。
自分が入ったときにはボールの中継役もですし、2列目や1.5列目のところで前を向くことを意識しました。
ボールを落ち着かせる部分については自分が出る前よりも落ち着かせられたかと思いますが、ただ最後の点を取った前にもう1点取れたシュートを決められなかったのが自分の力不足です。
引き分けには持っていけましたが、勝ちにつなげられるようにもっと良くしたいです。
1本外したあとの2本目のシュートを決められた要因
1本目は自分にとって得意な位置だったので絶対決めようとして結果力が入って、枠を外れたのが大きいです。
もったいないと引きずったのですが、次は絶対とりあえずシュートを打とう、枠に飛ばそうということだけを意識して、ゴールは見えていませんでしたが、足を振りました。
途中出場での決定的な仕事
そういう意識はなく、出たらチームを勝たせようという意識だけです。
あとは自分ができることをやろうという意識です。
それが結果につながっているのはいいことだと思います。
手応えや自信
本来ならばスタメンから出たい想いがありますが、ただ悔しい気持ちをぶつけているところもあります。
自分が出る前も、スタートの選手たちががんばって相手を疲れさせているとかの要因があるので、自分だけの得点ではないと思います。
まずはスタートから出られるようにアピールしていきたいです。
好調の要因
やっていることは変わりませんが、より自覚というか、このチームを勝たせる意識は結果論ですけど、今までより強くあるのかもしれないと思います。
普段の準備とかはあまり変わっていないと思いますが、気持ちの部分、やらなければならないという責任はより強くなりました。
ここまでのチームを振り返って
今年は監督も変わって既存の選手もある意味リセットされたというかゼロからのスタートでした。
そのなかで最初からゴールに向かうこと、背後に抜け出すことは言われていました。
最後まで諦めない、シュートで終わる、ゴールを目指すことはみんなひとつでやれていると思います。
とにかく自分もゴールは意識していたし、みんなゴールに向かっていて、それが出た同点ゴールかなと思います。
負けを引き分けにもってこれたこと
去年岡山にいた時もJ1昇格を経験できましたが、その時も負けないチームだというのはやっていて感じていて、負けないことは大事だと感じられました。
先週の引き分けは絶対次につなげないといけませんし、引き分けを引きずって引き分けが続くのは強いチームではありません。
この引き分けをバネに勝ち点3につなげられるようにしたいです。
ホーム戦に向けて
次のホーム戦は北九州相手で、厳しい戦いになると思います。
それでもホームの声援があれば僕たちは絶対に勝てると思うので、皆さんでいっしょに鹿児島全部で勝てるようにがんばりましょう。
山口卓己 選手コメント(3月19日トレーニング後の共同会見より抜粋)

チームの雰囲気
前節ああいう形で引き分けになったなかで、自分たちは勝利にこだわることは1人1人が持っているので、それが練習で出せていると思います。
5試合を終えてのチーム状況
やりたい部分が出ている部分がありますし、まだまだな部分もあります。
それで前節勝ちにつなげられなかったことは足りないところがあるということなので、まだまだできると思います。
攻撃での貢献について
シーズンが始まってから、前に力をもって行くことは取り組んできました。
それを求められているので、結果としてのゴールやアシストを取れるようにこだわりたいです。
J3最多得点について
今年のチームは前に対しての力が強いチームだと思います。
そこが出せればチームもいい流れで勝っていけると思いますし、そこがうまく出せないと難しいゲームになると思うので、そこは全員で統一していければと思います。
勝負強さ
負けを引き分けにすることはできましたが、まず勝ちにできる試合だったと思います。
そこは勝ち点1では満足できないので、勝ち点3を取るために全員が試合に向けてやっていかないといけないですし、この勝ち点1を意味あるものにするためには次の北九州戦を勝たなければならないので、そこを意識してやっていきたいです。
苦しい状況でもチームとして取れる力はあると思います。
ここまでの具体的な手応えと課題
前に対して圧力をかけてゴールに迫れている部分もありますが、最後のところで質がもっと高ければもっと得点が取れていると思います。
守備も前から行けている時はいいけれど、走れなくなっていけなくなった時にそれでも最後守り切ることであったり、セットプレーの細かいところは課題だと思っています。
北九州について
後ろからつなぐことも、力強いプレーもできるチームです。
ただ相手がどこであろうと自分たちのやることは変わりません。
前から圧力をかけて、相手に何もさせないくらいのプレーができればと思います。
サポーターへ
自分たちが苦しい中でもサポーターの声援は聞こえていますし、そういった声援ががんばれる要因でもあります。
北九州戦に勝つためにまた応援よろしくお願いします。
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.40(Total vol.52)」
長山正盛 さん(長島研醸有限会社 代表取締役)

鴨池のスタジアムから車を走らせること約2時間。
雨が降ってきたり風も強くなってきましたが、鹿児島ユナイテッドFCのホームゲームに行って帰る方々はいつもこうやって長い時間運転してらっしゃるし、アウェイまで応援に行って帰る行程を思うと自然と頭が下がります。

長島町にお住まいの長山正盛さんも毎回そんな長い距離を走ってスタジアムへ足を運ぶ1人。
長島研醸有限会社の事務所で向き合えば、サッカー好き同士の定番で前の試合、今回で言えばアウェイの高知ユナイテッドSC戦があーだったこーだった。
「ああいう試合ってなかなか見れない。
アディショナルで入れてピッピッピーは去年も何回かあったけど。去年は逆に群馬さんにどーんと入れられて終わりっていうのがあったし、だから選手は最後まで諦めずにやっているんだなっていうのをやっぱり感じられるというか。
後半の最初に2点入れられて、そういうなかで気持ちを切らさずにやってくれたし、勝ち点1、あれは大きいんじゃないですか。今後につながるというか。
今度は島美人プレゼンツの試合でつながるし笑。
あれ逆にやられると負けたような気分になって、本当に同じ引き分けなんだけど、負けたとしか思えないというかね。
逆にアウェイの熊本も行ったけどね。アディショナルに入れて盛り上がって。熊本の人たちは黙って帰っていて。
やっぱりやられたり、やり返したり、スポーツはそういうもんですもんね。もうスポーツはそれがおもしろくて、だからやめられないっていうことじゃないですか」

初っ端から長山さんの語り口はなめらかです。
改めて深くご紹介するまでもありませんが、長山正盛さんは「さつま島美人」の長島研醸有限会社の代表取締役。
クラブが発足した2014シーズンから変わることなくユニフォームの胸には「さつま島美人」の六文字が入り続け、希望と不安のなかではじまったクラブ1年目から悲願のJリーグ入り、Jリーグでの闘い、2度のJ2昇格とJ3降格、そのすべてを見届けてきました。
最初はVIP席か、観客席の一角で穏やかに観戦していた長山さんはやがて「ユナイテッド不足を補う」とホームに飽き足らず九州内を中心にアウェイ戦にも足を運ぶようになります。
明日の対戦相手、ギラヴァンツ北九州のホームであるミクニワールドスタジアム北九州でのアウェイ戦は「皆勤」です。
「北九州はもう毎回行っているけど、あそこのスタジアムもいいじゃないですか。
2017年ではノリ(藤本憲明選手、現在はいわてグルージャ盛岡)がハットトリックを決めてくれたりしたし。
それから試合後に駅まで歩いていたら地元のおばあちゃんが語りかけてきて“鹿児島の人、すごいよね、こんなに来ないよ”って。鹿児島から1000人とか行っているわけで、相手の方から“鹿児島すごい、サポーターすごい”って声が出てきて、こっちも嬉しくなるし、それを求めているのもあるわけです。
自分が行けばプラス1人になるわけで」

アウェイでは焼酎のPRをしたり、さつま島美人を空けた紙パックで作る「シマビハリセン」をみんなに配ったり。
そんな長山さんの今につながる観戦スタイルのルーツは、はじめてのJ2を闘った2019シーズンにありました。
九州以外の場所でも積極的にPRをしていた長山さんは7月13日にアウェイ大宮で大敗した翌日、味の素スタジアムでFC東京と川崎フロンターレの上位対決、いわゆる「多摩川クラシコ」を観戦します。
どちらのサポーターでもない長山さんはたまたまホームのFC東京側に座ると…試合前からゴール裏の巨大な空間が青と赤に染まり、圧倒的な声量のチャントが響いて、無数の旗がたなびく光景が広がっています。
その時の動画を「これはずっと消せない」とおっしゃりながら、スマホで見せてくださりました。
「40,000人ものサポーターがいて、すごかった。
だから今鹿児島はJ2から降格してJ3のカテゴリーだけど、皆さん一生懸命応援していて、もちろんJ2より上がまだあるし、J2はJ2でまたすごいし、でもいずれはここまでは難しいとしてもスタジアムがいっぱいになっていくことが我々サポーターにとっても夢であって。
おそらく今、6,000人とか来ているサポーターもやっぱりこれを観たいわけだよね。世の中にはJ3でもなく、JFLのチームとかを応援している人たちもいるんだけど、いつかはとこれを夢見ているわけです。
だから我々は企業のスポンサーで、お金を出すともちろんクラブとしても助かるし、選手もそれでご飯を食べているわけだけど、それだけではなくて、現場の雰囲気を感じることが大事だなと思っているから行くんです。
1人が1人を連れて行くと2人、そうするとプラスになっていって、だからやめられないとうか、これを観て感動しました」

もともと冠試合以外ではスタジアム内の色々な場所に出没することの多い長山さんでしたが、こうして2022シーズン頃から立ち見推奨エリアで応援する機会が増えました。
「じっとしていられないっていうか、ほら声を出したりしてそれぞれが表現しているわけで、サッカーはやっぱり声を出して応援するのが基本かなと思っていて。
もちろんじっくり観ているのもいいけど、声を出して自分のその気持ちを全面に押し出して応援するっていうのが自分のスタイルかなと思うので、だから行くわけよ。
それでやりだしたらもう黙って観てられない。
やっぱり声を届けたい。
声もまた1人から2人、3人、10人、100人。
そうなるとすごい熱になるし、相手に対してもそれでハリセンもバンバン鳴ってくれるからDAZNで観ててもすごいよね。
メインスタンドの方で観るのもね、ひとつの見方であってどれがいいとかはないけど、(立ち見推奨エリアに)行くと楽しいです」

こういう考え方の長山さんだから、J2昇格を決めた2023シーズン最終戦、アウェイのガイナーレ鳥取戦も現地で、ゴール裏で応援していました。
普通に考えればユニフォームの胸にロゴを掲出するスポンサーの代表なので、アウェイでも関係者用の席が手配されてもおかしくはないのですが、長山さんにはまったくその発想はありませんでした。
「やっぱりゴール裏が一番おもしろいわけよ、みんなといっしょにね。
VIPもいいんだけど、ゆっくり観るんじゃなくてサポーターといっしょに応援していたほうが楽しい。
みんなで歌ったり、少しでも声が大きく届くように。
この歳になって、もう楽しいですよ。
行くとみんなが“いらっしゃい、ありがとう”って受け入れてくれて。
あとはメインスタンドではまだ静かに観ている人も多いけどあれが歌ったりするようになるとまたすごいんだろうけどね。
やっぱり応援だけは負けたくないし、選手もその熱を感じて鹿児島への移籍を決意してくれたりもするし。
選手はそうやって応援で元気になるのよね。だから私もエネルギーを伝えたいんです」

長山さん、ほぼノンストップで語り続けます。
こちらもたまたま同席したサポーターのおじちゃんとお話をしているような気分になってきます笑
「ほかの試合結果も見るんですけど、スコアだけじゃなくて何人入ったとか、J2のここは何人とかも見るわけですよ。
勝ち負けとかカテゴリーとかあるけど、去年なんて負けてもずっと6,000人くらい入っていたり、だから勝ち負けだけではないんだっていうのもわかってくるし、最後まで信じて応援に来るっていうのもあるんだろうけど。
やっぱり選手もスタッフも一生懸命やっていて、それをわかっているから応援に行くわけで。
今は6,000人7,000人って数字があるからこれを今度は維持する、さらに増やしていく努力をしなくてはいけない。
勝ち負けだけで左右されるものじゃなくて、クラブのやり方や情熱を感じてもらえている人たちがいて、それで基礎ができているので、観客数もさらに増やす努力をしていけたらいいと思います」
昨シーズン9月に入場者数10,000人を超えた九州ダービーのロアッソ熊本戦に0-2で敗戦した試合は、さつま島美人スペシャルマッチだったこともあり印象に残っています。
「あそこがポイントで、多分逆に勝てば残留まで行けたかもしれないし、でも熊本のほうが内容も良かったと思いますしね。
まだ諦めないとは言ってもちょっと難しい、8割9割降格の可能性がある、と。
でも100%ではなく、決まりではないわけ。
可能性がある限り応援するし、何が起きるかは分からない。
笛が鳴るまで何が起きるかは分からない。
諦めるなんて言い出したらだめで、最後までいっしょにやろうというのはあって、サポーターも減ることなく信じて応援に来てくれるわけです。
サポーターの皆さん大したもんで、みんな諦めずに最後までがんばって応援にスタジアムへ足を運んだのはすごいと思います。
連敗が続いて険悪な雰囲気になったこともあったけど、その気持ちは分かります。
お金を出して一生懸命応援していて、あれもひとつの表現ですから。
“お前ら何やってんだよ”ってそれは分かる。
必死にやっているけど結果として勝ちを届けられていないわけなので。
でも試合後に厳しいことを言っても次の試合ではノーサイドで、もう関係なくいっしょに闘うわけです」

長島研醸有限会社とは
ここまでここ2〜3年の鹿児島ユナイテッドFCの歩みについて、感じることをたくさん一挙に語っていただきました。
その語り口は時折「我々サポーターは」という表現が自然と出てくるようにサポーターの目線が常にあります。
しかし、サポーターが口にする分にはまったく問題ない内容でも、オフィシャルトップパートナーの代表として立ち入るべきでないと判断する領域に関しては言及しないという境界線もしっかりと踏まえているのが、立場ある長山さんです。
ここまでノンストップでユナイテッド愛を語っていただきましたが、改めて代表取締役を務める長島研醸有限会社のご紹介。

出水郡長島町では宮内酒造、宮乃露酒造、長山酒造、杉本酒造、南洲酒造と5つの蔵元がそれぞれに焼酎を作って、それぞれの銘柄を販売していました。
状況が変わったのが阿久根市から長島町をつなぐ黒之瀬戸大橋が開通が決まったこと。
県本土と直接つながることで人と物の流れが盛んになること自体は喜ばしいことですが、他の酒造メーカーとの競争にさらされることでもあります。
そんな危機を機会に変えようと、5つの蔵元は手を取り合うことを決断しました。
これが長島研醸有限会社のはじまりで、長山さんが10代のころ。
この時代、他の地域でも蔵元の統合は行われていましたが、長島が特徴的だったのは、5つの蔵元が存続して、それぞれに独自で焼酎づくりを続ける体制を続けてきたことです。
各蔵元がそれぞれに仕入れたサツマイモなどの原料から職人さんが焼酎の原酒を醸造して、長島研醸に卸すところが第一段階。
ここではお互いにとって正当な価格でやり取りがされます。
続いて各蔵元から集まった焼酎を、長島研醸でマル秘のブレンドでさつま島美人や黒島美人に仕上げて、瓶に詰めて、出荷していく。これが第二段階。
第二段階にはイベントに出てのPRや、各地域をまわっての営業活動なども含まれますし、我らが鹿児島ユナイテッドFCとの取り組みもそのひとつ。
役割分担はされていますが、長島研醸の取締役には5つの蔵元の代表が名を連ねていますし、長山さんご自身もまた長山酒造の代表でもありますし、お互いの結びつきは強固なものです。
長島研醸としては27名の社員・パートがいて、蔵元全部を含めると約80名。
蔵元でも長島研醸でも、働いている方々はみんな仲が良さそうで家族的。
離職もあまりなくて、定年まで務める方がほとんど。
もちろんがんばる時はとことんがんばるけれど、良い意味で長島ののどかな風土らしい社風のようです。

「今度はバーベキューをしようと社員が言い出したりして、そこのスペースでやることになったし。社員旅行もサッカー絡みが多いですね。アウェイの奈良クラブ戦とか、諫早でやったV・ファーレン長崎戦とか。
パートさんなんかもまだサッカーの試合を観たことがない人たちも“シマビハリセン”を作ってくれているわけなんだけど、“あなたが作ったハリセンをみんなが持っているんだよ、観に行く?”って聞いたら“ああ行きたいですね”って言っているので、今度はホーム戦で計画しているんです」
ちなみに今では長山酒造のほうは息子さんに任せて、長島研醸のほうに注力しています。
「我々世代は子育ても終わってどこに遊びに行こうかっていうのもひとつの楽しみになってきているよね。若い人ももちろん行くんだけど、けっこう年配の夫婦で来ている方が多いわけよね。
これがなかったら年に1回どっか旅行に行こうか、くらいなんだけど、サッカーのお陰であちこち行って、でも観光する時間がとれないこともあるけど、いっしょに応援して仲良くなるわけだから。
勝てばなおさら仲良くなるし、負けたら喧嘩じゃないけど黙ってどっちもいらいらするから勝って欲しいというのがあるわけよね笑。
3/30の宮崎戦もそうとう行くんじゃない?
2年前にサポーターがバスのお出迎えしている光景はすごかったもんね」

会社の話を振っても振ってもサッカーに戻ってきます笑。
ということで自然な流れで話はまた現在の鹿児島ユナイテッドFCへ。
昨シーズンで多くの選手が退団し、新しい選手たちが加入しました。
「もう名前を覚えるのも大変だ笑。
17名もの新しい選手が来て、もう1回チームづくりをしていくわけで、今の調子でいくとおもしろいサッカーをやっているからまた新聞やテレビ、ダイジェストとかを見て、まだ推しを決められていない女性たちもまた推しが決まってくると熱が増えてくるかもしれないですよね。
もちろんチームを推す、ユナイテッドを応援するのは基本だけど、そういう要素も欠かせない。
うちの女性陣は泉森涼太くん(現サガン鳥栖)が好きだったけど笑。誰々選手がいるっていうのは特に女性にとって大きいじゃないですか。
それでシーズンが始まってみたら、最初の1試合2試合は結果が出ないしどうなのかと思っていたけど、勝ちだして波に乗ってくると色々機能してくるよね。
どこからでも点を取るし、まだの選手も覚醒するんじゃないかって思うし。
相馬さんも守りのサッカーなのかと思っていたらけっこう攻めるチーム作りをしているような気がするから、まあ観ていておもしろいですよ。
サポーターも負けが続くと辛いもんね。
去年やっぱりJ2の壁があったのをみんな感じているし、べらぼうにやられてしまった試合はいくらかしかないけど、勝てる試合を勝てなかったり、それは力の差なのかもしれないですね」
相馬直樹GM兼監督のもとで長期的に闘えるチーム作りをする鹿児島ユナイテッドFCに、長山さんは頼もしさを抱いています。

ところで選手やチームスタッフの編成などを担う責任者、GM、ゼネラルマネジャー…というと、長山さんにとってはかけがえのない前GMの存在が浮かび上がってきます。
想いを背負って前へ進む
10年近く前のあるシーズンオフ。最終戦は終えてオフに入っていて、選手の去就はだれも発表されていない、そんな時期のユナイテッドカフェで何人かのサポーターが難しい顔をしていました。
彼らが向き合っていたのは「約30名いる選手たちのなかから誰を満了にするか、誰を残すかを上限22人としてそれぞれに考えてみましょう。GMになったつもりで」というお題でした。
この選手はたくさんゴールを決めたから、この選手は中心になって活躍したから、出場機会は少ないけどこの選手は欠かせない、推しには絶対残って欲しい。
サポーターたちはああだこうだ言いながら選んでいきますが、22人が近づいてくると苦しさが雪だるま式に膨らんでいきます。
ここまでも満了にする選手をこんなに決めてきたのに、この選手とこの選手、どちらかを切るか決めなければならないのか…
シミュレーションに過ぎないのに、なんとも言えない気持ちになってきた面々は「自分には絶対無理だ」と本物のGMの胸中に想いを馳せるのでした。
そのGMは30代前半にしてシーズンが終わるたびに、自分が来シーズン居場所はないと決断した選手にみずからそれを告げていく。情熱と希望を持って新しい選手を迎え入れる一方で。数年前にみずからがそうやって招いた選手に向けて終わりを告げる。
そうやってチームの基盤づくりと新陳代謝を進めながら、鹿児島ユナイテッドFCの未来を切り拓いていく。
自分の決断から生じるすべてを背負いながら。
何ら弁解することなく。
2023年夏に退任した登尾顕徳GMは長島町の出身であり、長山さんにとっては幼少期から家族ぐるみでつきあいがありました。

「もともとサッカー大嫌いだった。野球しか観ていなくて、サッカーをテレビで観ていてもおもしろくないって思って」
そんな長山さんでしたが、Jリーグで活躍した末に鹿児島に帰ってきて、「鹿児島にJリーグクラブを誕生させる」と情熱に燃える登尾青年と、当時ヴォルカ鹿児島の代表に就任したばかりの湯脇健一郎がスポンサー協賛のお願いに来た時に、長島研醸の役員一致で同意して、胸スポンサーになることを決意したのです。
鹿児島ユナイテッドFCになってからもその関係は続き、御存知の通り今の長山さんはがっつりサポーターの一員です。
そんな長山さんは登尾さんについてはどのような想いがあるのでしょうか?
「登尾とも長い付き合いでそれで応援もしていたっていうのもあるし、ただ中の事情はもう分からないし、質問とかもしないですし、どうしようもないことです。
彼が辞めたからどうのこうのということはないけど、ただ地元からそうやって関わっている人がいなくなるっていう寂しさはあったけどね。
ただほら今はJ1のガンバ大阪というクラブで色々と吸収して自分のものにしていっていると思いますからね。いい人材になっていっていると思うし、先々のことは分からないけれど、彼はずっとサッカーに携わっていきたいっていう想いはあるんじゃないかな?」
そして「私が生きている間に…新しいスタジアムがある鹿児島で…」と言葉を続けました。
鹿児島ユナイテッドFCに関わる多くの方が「父親のよう」と口をそろえる長山さんの、一度関わった人に対してはとことん惜しまない愛情深さがひときわ濃くなった気がしました。

登尾さんだけでなく、たとえば藤本憲明選手が移籍したいわてグルージャ盛岡の試合もライブ配信を観ながら「もっとたくさんのお客さんの前で」と感じてしまいますし、五領淳樹選手の新しい所属先が決まったことに安堵の気持ちがありますし、始球式で履いてきたスパイクは中原秀人選手から譲り受けたサイン入りのものですし、チームが連敗を続けていた昨年に有田光希選手がサポーターへ伝えたかったメッセージをしっかりと記憶にとどめています。
サポーターの誰もがそうであるように、たくさんのかけがえのない記憶を背負いながら長山さんも前へと視線を向けていました。
九州ダービーへ
さつま島美人スペシャルマッチは毎年恒例ですが、ひとつ気になるのが、そのカードがいつも九州ダービーになっているところです。




「九州のほうがやっぱり盛り上がるじゃないですか。やっぱり相手の方もたくさん来てくれて応援合戦というのもあるし、それが盛り上がるのも楽しい。相手も来るしこっちも行くしで、それがサッカーの本来の姿かなと思ってて」
アウェイからの来場も多いという意味では昨シーズンでは夏休み期間の清水エスパルス戦、今シーズンはシーズン終盤の松本山雅FC戦なども候補に入ると思われますが、、、
「いや、やっぱり“九州だけには負けられない”という感じですよね。もちろん他のチームとの対戦もいいんですけど、やっぱりね。あの時観た“多摩川クラシコ”なんですよ」
目線は明日のギラヴァンツ北九州戦。
昨シーズンから北九州は好調を維持している。
井澤春輝、牛之濵拓、河辺駿太郎、星広太たち元鹿児島の選手たちが活躍していて楽しみであり脅威だ。
どんな試合になるんだろう?
3年前に還暦を迎えていますが、長山さんの発する言葉、態度、そして瞳はワクワクする少年のようです。
それを見ていると自分たちも老けている場合はないし守りに入っている場合じゃないと元気をもらえます。
明日もともに全力で闘いましょう!
これからも、祝杯はさつま島美人で!

長島研醸有限会社 企業概要
社号/長島研醸有限会社
設立/1967年2月
所在地/出水郡長島町平尾 387
代表者/長山正盛 代表取締役(2016年11月22日就任)
事業内容/焼酎の製造・瓶詰
(2025年3月22日、公式ホームページより抜粋)
https://shimabijin.jp/