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2022.10.15 試合情報

【10月16日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2022 vol.15

鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は10月16日に行われる2022明治安田生命J3リーグ第29節、鹿児島ユナイテッドFC vs テゲバジャーロ宮崎 のマッチデープログラムです。

日程表・順位表・テキスト速報

前回までの振り返り~鹿児島は再び歩み始めた~

10月1日(土)2022明治安田生命J3リーグ第27節
vs AC長野パルセイロ(白波スタジアム)

0-6で大敗した翌週の10月1日、AC長野パルセイロを鴨池に迎えてのホーム戦。
5,000名を超えるサポーターが「こんな時だからこそ後押ししようと」集まり、大音量でチームを鼓舞する。
この日は10月1日と16日の2試合限定で着用するリミテッドユニフォームを着用した選手たちが入場してくる。
スタンドもフィールドプレーヤーの白を基調とした「秘島」柄とパッチワーク風のGKの「西郷柄」を着たサポーターに包まれ、試合が始まった。

4分、鹿児島陣内でセカンドボールを長野に拾われてシュートまで持ち込まれるが、GK白坂楓馬がセーブする。
そのまま拾ったボールが前線に送られて米澤令衣、ロメロ フランク、有田光希とつなぎ、最後は裏に抜けてボールを受けた米澤があわやの場面を作る。
「前節のあと(大嶽)直人さんがオフ明けの練習ですごくポジティブな声かけをしてくれて、試合前もモチベーションを上げてくれました。このままだったらいけないと気合いを入れることができました。何かを変えるというより、自分たちのやるべきことを見つめ直して準備をしました(米澤令衣)」

15分、左サイドから薩川が入れたボールがこぼれたところを有田がダイレクトでシュートし、ブロックされるが攻勢は続く。
26分、長野陣内でのパス回しからペナルティエリア外に出ていた有田が左足で強烈なシュートを打つ。
「立ち上がりから攻める時間帯、我慢する時間帯うまく使い分けながら試合を進められたと思います(薩川淳貴)」

44分、センターサークル付近でパスを呼び込んだ中原秀人は、そのままダイレクトで右サイドへ大きく展開する。
オフサイドラインぎりぎりの高い位置で右サイドバックの木出雄斗がボールを受けて中をうかがう。
ゴールまでまだ距離のあるところからクロスボールを入れる。
左サイドからダッシュで飛び込んだ米澤が頭で合わせて、逆サイドのネットに流し込む。
起き上がった米澤は咆哮しながら喜びの輪に埋もれていく。
「(木出)雄斗がフリーで持っている時に相手のサイドバックが下がっていて、逆にセンターバックが上がっていて、ラインのズレがありました。雄斗もフリーでスペースがあると思って走ったところを見てくれていて、いいクロスが来たので、走った勢いで流し込むことができました(米澤令衣)」

いい形で前半を終えたが、後半になると長野も逆襲に出る。
53分、クリアボールを拾った長野はペナルティエリア右サイドへロングボールを通す。
ドリブルで中に入り込まれ、守備に入った薩川がかわされ、そのまま同点ゴールを許す。
しかし、鹿児島は落ち着いて攻撃を続ける。
65分、ペナルティエリア前で有田がポストになり、左サイドの薩川がゴール前で待つロメロにクロスを送るが、直前でクリアされる。

75分、左サイドで鹿児島が直接FKを得る。
キッカーの木村祐志は大きくファーサイドにボールを送る。
一番外側に走り込んでいた小野寺健也の手前で大きく曲がって落ちたボールを、小野寺は身体全部で当てに行くように合わせて、逆サイドに勝ち越し点が決まる。
「合わせようと思ってイメージしていたけど、イメージ通りだったので当てるだけでした。GKがニアに動くのが見えてファーサイドは空いていたので、とりあえずそちらに行けと合わせた結果です(小野寺健也)」

83分、またも左サイドのFKを木村が蹴り、今度はニアに入り込んだ米澤がまたも頭で合わせてリードを2点に広げる。
「ゴールのその前に、(山本)駿亮の粘りと(端戸)仁さんのキープでファウルをもらえたのが大きいです。(ゴールの場面では)自分にマークがついていない気がしたので、どこに来るか見ていて、一番前の選手の前に入って流し込んだら誰かファーで詰めると思っていたら、綺麗にニアにゴールが決まりました(米澤令衣)」

勝利が見えてきた92分、長野の攻撃を五領が遮って前へ送ったボールをまたも米澤が受ける。
「相手をちらりと見たら凄い勢いで来るのが見えたから外しました」
米澤は空いたスペースへ向けてボールを蹴って加速し、そのままドリブルで持ち上がり、スタジアムが大音響に包まれる。
ハーフウェイラインを超えて長野守備陣が寄ってきたところで減速して、左側を追い越した右サイドバックの渡邉英祐にスルーパスを送る。
渡邉はペナルティエリア内まで持ち上がり、中央を単騎駆け上がってきた薩川へクロスを送る。
薩川はダイビングヘッドで豪快に突き刺す。
「失点した時に自分のサイドを突破されたのでやり返そうと思っていました。(米澤)令衣さんが突破した時にペナルティエリアまで行きそうだと思ったので、逆サイドから走ったら2人で崩してくれて本当にいいクロスをくれました(薩川淳貴)」

ベンチに向けてかけていった薩川はチームメイトの歓迎を一瞬だけ制止すると、試合前に場外ステージにゲスト出演していた「ねお」さんのポーズである「シャキーン!」をかなり大きめに披露する。
「ねおちゃんが来ると聞いて、そのあいさつの“シャキーン!”を見て中毒性があると思っていたんです。それで試合前に夢でヘディングでゴールを取る夢を見ていて、決めたらやろうとか思っていたら本当に来て、でも興奮しすぎて大きくやりすぎました」
前節の大敗からチームが、サポーターが一体となって勝利をつかんだ。

10月8日(土)2022明治安田生命J3リーグ第28節
vs Y.S.C.C.横浜(ニッパツ三ツ沢球技場)

首都圏である横浜のニッパツ三ツ沢球技場で行われたY.S.C.C.横浜戦。
鹿児島から首都圏から日本全国からユナイテッドのサポーターが集まり、鹿児島側のゴール裏は観客と横断幕が占めていて、どちらのホームか分からないような雰囲気になっている。
「僕にとっては地元ということもあって、15分くらいのところに住んでいるくらいの地元だし、プロデビューも三ツ沢でした。そしてスタンドには相手より多いサポーターでモチベーションが上がりました(端戸仁)」

6分、左コーナーキックをゴール正面のロメロ フランクがヘディングで合わせるが、GKの好反応によって防がれる。
23分、右サイドからのクロスがこぼれたところをもう一度左サイドへクロスを送り、米澤令衣が頭で折り返し、ゴール正面のロメロがボレーで合わせるがジャストミートしない。

24分、YS横浜の速攻から相次いでシュートを打たれる場面を作られる。
39分、ゴール前でボールをつなぎながら、最後は牛之濵拓がシュートを打つが枠を外れる。
41分、高い位置でボールを奪われゴール前に入り込まれたところを白坂が防ぎ、さらにこぼれたボールを合わされるがポストに跳ね返る。
さらに奪われたボールからまたも一気にゴール前へ運ばれるが、GK白坂の好セーブなどでしのぎきる。
「何度かボールを失ってカウンターをやられていたのですが、(広瀬)健太くんや(木村)祐志さんと話して、しっかり締めるところ、危なくなりそうなところは声を掛け合いました。事前に防ぐ準備、自分と2人のセンターバックと横の関係と縦の関係でコミュニケーションを取って、油断しないように取り組めました(白坂楓馬)」
どちらも譲らない一進一退のスコアレスで前半を終える。

46分、ロメロのスルーパスを受けた木出がゴール前へ低いボールを入れて、いち早く反応した有田光希が合わせるがバーの上を超える。
61分、右サイドを牛之濵がフリーで持ち上がり、中に折り返して中原秀人がミドルシュートを打つ。
77分、YS横浜の強烈な直接FKがゴールを襲うが白坂が弾き出す。
87分、YS横浜の速攻から数的不利の状況をじっと耐えた広瀬健太は、最後のシュートを打たれる瞬間に足を伸ばしてブロックして、力強く拳を握る。

「苦しい試合になると思っていて、その通りになりましたが、セットプレーが14本あって1本も決められなかった責任も感じていました。今まで経験してきた中でアクシデントとかで試合が止まった後にスコアが動きやすいのは分かっているので、周りと話をすることで、自分も集中力を切らさないことを意識しました(広瀬健太)」
90分、右サイドのコーナーキックをゴール前の小野寺健也がヘディングで合わせてネットを揺らす。
しかし、ファウルの判定でノーゴールとなる。
土壇場で決めたと思ったゴールは幻になった。
それでも鹿児島は大勢のサポーターが待つゴールへ向けて攻め続ける。

「僕はストライカーではなく、試合の中でボールを触りながらゴールに向かっていくタイプなのですが、あまりいい形でボールに絡むシーンはあまりありませんでした。それでも年間を通してこういう試合は必ずあります。個人的にはこの試合が一番難しくなるだろうと思っていて、案の定こういう展開になりました(端戸仁)」
難しい展開にも端戸は冷静さを残している。
92分、左サイドからのクロスがこぼれたところを拾った五領淳樹は、空いた右外へパスを送る。
サイドバックの木出雄斗が走り込んだ。

「苦しい展開でしたが、本当にラストチャンスだと思ったので、最後足がつっていましたしが、力を振り絞って上がりました(木出雄斗)」
木出はダイレクトでクロスボールをゴール前に入れる。
ゴール正面で高々と跳躍した端戸が頭で合わせる。
ボールは、ゴールの中でワンバンドしてネットに包まれた。

「ボールが高くて身体が伸び切りそうになったので、なんとか首でもって(元チームメイトの)マルキーニョスをイメージしました(笑)。鹿児島に来てからずっと感じていましたが、サポーターが素晴らしくて、ホームの時に良い雰囲気を作ってくれていましたし、アウェイでもこれだけのサポーターが来てくれて、いつもありがたいと思っていましたので、いっしょに喜びました(端戸仁)」
ピッチにいる選手も、ベンチも、サポーターもみんなが同じ感情を共有し爆発させる。
95分、YS横浜陣内でボールをキープし続け、終了のホイッスルが鳴り響く。
「0-0で行くとなにか起こると思っていたので、最後勝ちたい気持ちがあの1点を呼び込んだと思います(広瀬健太)」
「実は全然時間を分かっていなくて、アディショナルタイムだって知りませんでした。時間を意識していなくて、決めた後5分くらいあると思っていたらすぐに終わって良かったです。GKのシラ(白坂楓馬)や(広瀬)健太が0で抑えてくれたから、最後の得点がありました。みんなで勝ち取りました(端戸仁)」
途中出場の選手が決勝点を決めたことの意義を大嶽直人監督も感じている。
「これからチーム内での競争と本当に11人だけではなくて、全選手がやっている雰囲気になります。本当にサポーターも選手全員を後押ししてくれると思いますし、熱くなると思います。チーム内である意味、競争意識になっていますので、切磋琢磨して努力して、レベルもアップして強い鹿児島のサッカーができるように努力していきたいと思います」

今週末はホームにテゲバジャーロ宮崎を迎えての南九州ダービーとなる。
残り6試合で昇格争いをしている状況にも、チームは落ち着いて次の試合のことを見据えている。
「雰囲気が緩くなりすぎることもなく集中できています。もちろん昇格に向けての大事な試合であることに変わりはないし、同じ九州のダービーだし、残り少ないホーム戦なので必ず勝てるようにしたいです。前節も苦しい中で全員が諦めないことで最後の勝利につながったので、その意識を持ちながら試合を戦いたいです(有田光希)」

「このタイミングで九州ダービーができるのはいい状況だし、ホームなので、より盛り上がる試合になると思います。そこで勝って残り6試合を、昇格というより優勝に向けての起爆剤とできるようにしたいです(五領淳樹)」
最も長く鹿児島でプレーする五領は、あくまでもう一つ上の順位を狙いに行っている。

「自分たちができることを一戦一戦やること、適応力と柔軟性を備えて、行ける時行けない時の方向性を一致できればと思います。誰が出てもできますし、使命感と責任感をもって入ることが大事で、選手たちを信頼しています。戦い方を変えずにどれだけ自分たちのサッカーができるかが大事なので、楽しみながらやっていきたいです。もちろんサッカーのベースは、ピッチでどれだけ戦えるかです。それを選手たちは分かっているのですが、それを出せるかです(大嶽直人)」

自分たちがやるべきことは分かっている。
それを全員が90分+アディショナルタイムでやりきることができるかどうかが問われる一戦。
選手も、スタッフも、サポーターも「ONE TEAM,ONE GAME」でテゲバジャーロ宮崎と相対し、勝ち点3を掴み取る。

コラムONE TEAM,ONE GAME vol.10
「K・Uは心優しきぽたろさんの元から、ユナイテッド一家のくーへ」

くーのポーズ「どっかーん!」をいっしょにするぽたろさん

彼の行くところ行くところ、ついて歩くのはありとあらゆる動物たち。
路傍の石にこしかけると、動物たちもこしかけて穏やかにたたずむ。
あるいは鳥たちはあたりを飛び回る。
人間とか獣とか虫とかの区別もなく、すべての生き物は等しく尊い。
手塚治虫の名作「火の鳥 鳳凰編」に我王という登場人物がいます。
その我王みたいだと言おうとすると、ぽたろさんは食い気味で「最高の賛辞です」と笑顔をさらに大きく笑顔にしました。
我王と同じように、ぽたろさんのまわりでも、犬猫をはじめとしてたくさんのケモノ仲間が時ににぎやかに時に穏やかに暮らしています。
ぽたろさんが小さい頃から、大きくなっても、そして今でも。
ぽたろさんは仲間たちが生き生きと生活している様をイラストやマンガとして表現しています。
ゆないくーも、そんなぽたろさんのまわりにいた1人(1匹?)でした。

5巻表紙中央の鼻が大きい男が「我王」

佐賀県生まれのぽたろさんがはじめて出合ったサッカークラブは、当時佐賀県からJリーグ入りを目指していてJFLを戦っていた鳥栖フューチャーズでした。
偉大なるディエゴの弟ウーゴ・マラドーナがいて、元カメルーン代表のステファン・タタウがいて、元日本代表の松永成立がいました。
実業団でのプレー経験があるお父さんに連れられてスタジアムに通っていたぽたろさんのお気に入りはタタウで、握手してもらったりキャップにサインをしてもらったりしていました。
1996年、佐賀スタジアム(駅前不動産スタジアム)のこけら落としには20,000人を超えるサポーターが足を運び、街がサッカーで希望に満ちていました。
ところが最終的にJリーグ入会を逃したその1996年末から1997年にかけて、運営会社の撤退などにより、鳥栖フューチャーズは解散することが発表されました。
小学生だったぽたろ少年は大人の世界で何が起きているのか理解できず、目の前を流れていく現実に何も抗うことができないまま立ちつすくだけ。
ただひとつの事実だけは、明確に突きつけられました。
解散、つまり、消滅。
もう永遠に鳥栖フューチャーズを応援することはできない現実に、少年は深い傷を心に負うことになったのです。

2019年4月28日に撮影

実質的にフューチャーズを引き継ぐ形で創設され、同じJFLを舞台とすることになったサガン鳥栖がその痛みを和らげてくれましたが、20,000人を超えた観客は少しずつ去っていきます。
それでもぽたろさん親子はサガン鳥栖を応援し続けました。
「父が日中姿を見ることがないくらいの典型的な仕事人間で、その父との数少ないつながりが週末のサッカー観戦でした。それから学校でもあまり友達がいなかったんですけど、スタジアムに行けば僕にも“サポーター”という所属があったんです」
そのころの、そして大学に進学して、社会人になってからもぽたろさんのサガン鳥栖に対する想いは「生きている間にJ1昇格してくれたら」というものでした。
「だからJ1に行くまでに20年かかったね、っていう人もいるんですけど、僕はJ1に行ってくれただけで十分なんです」

大学で福祉関係の勉強をしたぽたろさんは、そのまま今では奥さまになった当時の彼女の故郷である鹿児島県薩摩川内市で福祉業界に就職しました。
小さい頃はお姉さんに教わったりしていながら、高校大学と進むにつれて離れていたイラスト制作も再開します。
あいも変わらず描くのはマスクをかぶった猫や犬や別の猫や、猫なのか猫じゃないのか分からないケモノ仲間たちがチームを組んでサッカーをしたり、遊んだりするところばかりですが笑。
ぽたろさんはそんな仲間と薩摩川内市で日々を楽しく穏やかに暮らしていました。

仕事を続けながら趣味でイラストを描いていたぽたろさんにとって第一の転機となったのが、人づてから急ぎでイラストを描いてもらえないかという相談を受け取ったことでした。
1週間で60枚。
「あの頃に戻って同じ選択肢があったらやらないと思います」とぽたろさんは微笑んでいますが、この時は自分への挑戦と思い、引き受けることにしました。
仕事が終わって帰宅してすぐにイラストを描きはじめ、晩御飯を食べながらも描く。
食べ終わってからも描く。
ボツの分も踏まえて1日10枚描く。
10枚描いたら寝れるだけの時間寝る。
起きたら仕事に出る。
仕事から帰ったら描く。
食べる。
寝る。
起きる。
仕事する。
帰る。
描く。
描く。
食べる。
描く。
描く。
描く。
描く。
描く。
描く。
描く。
描く。
寝る。
それが7回繰り返され、60枚のイラストを納期に間に合わせました。
イラストがふんだんに盛り込まれた本が世に出たことは、ぽたろさんにとって大いなる喜びでした。

そして2015年、もうひとつの転機がおとずれます。
鹿児島からJリーグを目指しJFLでの2年目を迎えていた鹿児島ユナイテッドFCが、鹿児島市産業創出課が毎年開催する「かごしまデザインアワード」にてマスコットキャラクターを公募することになったのです。
募集ページでの徳重剛クラブ代表のインタビューにもある通りで、当初クラブ側や関係各所は、応募されたキャラクターのイラストをベースにした着ぐるみを作ることを想定していました。
鹿児島ユナイテッドFC | かごしまデザインアワード2015 (kagoshima-design.jp)

そんな要件に対してぽたろさんは禁じ手かもしれませんが、ケモノ仲間をイラストにして応募することにしたのです。
穏やかで内側に情熱を秘めたGKや、バスケがうまいトラ、格闘技好きもいたし、ずっといっしょにサガン鳥栖を応援していた猫(?)もいました。
そんなケモノ仲間たちの中からぽたろさんが「これだ!」と思ったのは、会う時はいつも元気で楽しそうにしているけど、ふらふらと旅に出ることが多く、実際に会う機会はそんなになかったけど印象深い或る白犬でした。
真っ白な毛並みがチームカラーと共通していて、元気で明るくて笑顔で前向きそうな彼ならば、鹿児島ユナイテッドFCに合うのではないか?
久しく会っていなかったぽたろさんは懸命に記憶をたぐりながら姿を思い出し、イラストに起こしていきます。
毛並みは真っ白。
笑顔。
とにかく笑顔。
辛いことがあっても結局笑顔は絶やさない。
頭にかぶった陣笠の頂点からなにか吹き出していた気がするけど、あれ桜島みたいに噴煙を出していたらおもしろいなー。
会った時はおにぎり食べている事が多いけど、お米好きなんだろうな。
腕だけ赤と水色の部分があったけど、あれもよく考えてみればヴォルカ鹿児島とFC KAGOSHIMAという2つの前身クラブの色だし、あの子にとっては運命の出会いの可能性もある!
あれ?目のまわりにもうっすら色がついていたような気がするけど、どうだったっけ?
名前は、、、くぅだったっけ? KAGOSHIMA UNITEDで「K・U」って書いて「クー」って呼んでもらえたらいいかも!
かなり本物に近いイメージで完成した白い薩摩犬「K・U」のイラストを事務局に送付して完了!

後日、たくさんの応募作品が集まり、ホームゲーム会場に展示されているのがいずれも完成度の高い作品ばかりであることに、ぽたろさんはすっかり自信喪失します。
それでも、鹿児島ユナイテッドFCにふさわしいマスコットが選ばれればそれが一番だし、「K・U」が選ばれる選ばれないに関わらず、ぽたろさんにとってかけがえのない仲間犬であることは揺らぐことのない真実です。
そんな思いでいたある夜中、パソコンでメールをチェックしたところ、届いていたのはぽたろさんがイラストに起こした「K・U」が受賞したというお知らせでした。
つまり「K・U」がマスコットに就任する!
興奮したぽたろさんは「やったよーーーー!」と声を出し、寝ていた奥さまがびっくりして起きてくるほどの歓喜に包まれました。

授賞式が行われ、その後関係各所との話し合いの中で、「くー」という呼び名はいいけど、他と混同しやすいとなり、さらにクラブが親権を持つのが望ましいというアドバイスも送られてきます。
それらも踏まえてたくさん話し合いをした結果「K・U」はユナイテッドファミリーに迎え入れられ、「ユナイテッド一家のくー」略して「ゆないくー」となりました。

ぽたろさんは「K・U」と次に会った機会に「鹿児島ユナイテッドFCのマスコットになるんだよ。ユナイテッド一家のくーになるんだよ」と話をしました。
「K・U」は笑顔でゆっくりうなずきました。

2017シーズン前のキックオフパーティーで、ゆないくーは世の中にお披露目されました。
くーは開場前からふらふらと歩いていて、自由気ままにファンと交流する有様でしたが、ぽたろさんは「盛大にお披露目会を開かれるのではなく、さりげなくそこにいるのがうれしかったです」と振り返ります。
そしてパーティーの最後にお見送りをしていたくーとぽたろさんはガッチリと握手を交わしました。
ユナイテッドファミリーの一員として迎えられたくーと、くーを見つけてクラブに推薦したぽたろさんとの間で交わされた会話は2人だけのものです。

ホームゲーム会場でもくーは小さいお友だちから次々と触られて抱きつかれ、大きいお友だちからも声をかけられいっしょに写真を撮ったりしています。
鳥栖で行われた九州のマスコット集結イベント「九州だJ!フェスタ」では、鹿児島以外のサポーターからも「ようこそ!」「待ってたよ!」と大歓迎を受けて、くーも上機嫌で遊び回っています。
その姿にぽたろさんは満足して、基本となるくーのイラスト集も納品して、これをもってユナイテッドとの関係もひと段落、何を引きずることもなく、以降はくーががんばっている姿を奥さんといっしょに眺めていくつもりでした。
誕生日にサイン会が開かれた時には、夫婦で列に並んで自分の番を待つ姿が見られました。

当時所属していたGK山岡哲也さん推しということでGKのユニを着用

ところが、それからもクラブからは事あるごとに「くーのイラストを描いて下さい」という依頼がやってきます。
誕生日を迎えるので。
ハロウィンなので。
鹿児島商業高校とコラボするので。
クリスマスなので。
お正月なので。
選手とのコラボグッズを制作するので。
1人のサポーターとしてだけでなく、イラストレーターという立場でもクラブとくーとのつながりが保たれていることは、ぽたろさんにとって大きな喜びでした。
何よりゆないくーという白い薩摩犬がユナイテッドのサポーターに受け入れられ、それ以外のサポーターからも愛されていっていることが幸せでした。
2018年には鹿児島で九州のマスコット集結イベント「九州だJ!フェスタ」が開催され、サガン鳥栖のウィントスをはじめとする各クラブのマスコットを描く機会があったことも「一生の思い出」というほど嬉しい出来事でした。

2018シーズン、鹿児島ユナイテッドFCはJ2昇格を果たします。
2019シーズン、しかし、初のJ2では苦しい状況が続きます。
ゆないくーも敗戦しても観客に向けた笑顔は絶やしませんが、どこか辛そうです。
それでも、ぽたろさんは泰然としていました。
「このクラブはたとえ1年でJ3に降格しても大丈夫だと思っていました。スター選手に依存していたり、昇格できなかったら降格したらどうなるんだろうってクラブもあるけど、ユナイテッドはそうじゃないって思えましたから。だからくーも安心してお任せできました」
2019年12月8日、1年でのJ3降格が決まっても、ぽたろさんの想いが揺らぐことはありませんでした。
辛い時も怯むことなく自身のできることをやりきったくーも、涙をにじませながら明日に向かって歩み続けるのです。

コロナ禍となった2020シーズンから、福祉に携わるぽたろさんがスタジアムに足を運ぶのは難しくなりました。
ユナイテッドの試合はDAZNを通して追いかける日々。
それでも相変わらずゆないくーのイラスト発注はやってきます。
年始めに真新しいユニフォームを着てポーズを決めるゆないくー。
コラボ企画のたびに新しい顔を見せてくれるゆないくー。
桜島・錦江湾横断遠泳大会の運営をするにあたってイルカに乗ったゆないくーを描いたことは、かごしま水族館の年間パスポートを所有して、特に奥さまがイルカのショーが大好きなこともあって、嬉しい仕事でした。

ユナイテッドにこれからどうなって欲しいのか? と問いかけるとぽたろさんはかなり考えて「正直なところもうなっている気がします」と答えました。
「すごく地道に活動をしていて、しっかり鹿児島に根付いているし、応援してくれる人、支えてくれる人もたくさんいます。勝ち負け昇格も当然のことですが、ユナイテッドを愛してくださっている方々がいて、地域の企業の方々ともいい関係を築いていて、クラブとして何も問題がないように見えます。逆に課題ってあるんですか?って聞きたくなります。遠泳大会を主催するからイラストを描いて欲しいと言われた時はちょっと脳の処理が追いつきませんでしたが笑。でもよく考えたらユニフォームも自分たちで手がけるし、もっと色々なことを手がけていくんだろうし、何を聞いても“鹿児島ユナイテッドFCならやるんだろうな”って感じです」

ぬいぐるみが発売されて長蛇の列ができていた2019シーズン以降、なかなかくーと顔を合わせる機会を作ることはできていませんが、それでもSNSを通じてくーがしっかりとユナイテッドファミリーの一員として愛されている姿を親のような目線で温かい気持ちで見守っています。
今シーズンからくーの隣にいるゆないくーおねえさんともまだお会いできていませんが、おねえさんといっしょに、それまでの5年間とはまた違った姿、ギャルピースをしたりダンス動画を撮ったりして変化していく様子もまたぽたろさんは楽しんでくれています。
「伸び伸びと育ってくれれば」と言い「“親”として口出しすることはありません」と笑っています。
そして先日実施された似顔絵コンテストでも、たくさんのゆないくーが描かれていたことを心底喜んでいらっしゃいます。

もちろんぽたろさんは他のケモノ仲間たちのことも忘れていませんし、他のJリーグクラブのマスコットへの愛情も尽きることはありません。
ずっといっしょにいた猫(?)が辿っている数奇な運命はまた別のどこかで語られるべきことでしょう。
「これからもイラストレーター一本で食べていこうとは思っていません」と言い切ります。
仕事として絵を描くのはユナイテッドとバスケ関係2団体、あわせて3団体のみ。
そこからの依頼があればすぐに応じられるようにしておく。
すぐに初校を出し、校了することで、次の工程を担う人たちの負担も軽減できるから。
だから、それ以外で描くのは趣味の範囲内のこと。

ぽたろさんの優しさは、尽きることがありません。
そしてぽたろさんの微笑みと優しさの裏には、かけがえのないものを失った哀しみを乗り越え、一つ一つの物事に対して自身の揺らぐことのない芯が通っています。
イラストレーターという仕事に対してもプロだからアマチュアだから兼業だからという分け目を設けるのではなく、あくまでもぽたろさん自身が納得できる自分なりのやり方で向き合っています。
サッカーやバスケのチームを応援することも甘口辛口とかの分類ではなく、あくまでも自分の感じるままに。
信念の強さを感じてまた感じさせられるのは、ただの甘やかしではない、切る時は切るし、怒る時は怒る、そんなあり方と深い洞察に基づいた優しさ。
だからこそ多くのケモノ仲間たちは、ぽたろさんのまわりに集まってくるのでしょう。
そしてぽたろさんが推してくれたからこそ、ケモノ仲間の1人「K・U」は鹿児島ユナイテッドFCへとやってきて、ゆないくーと名を変えマスコットという仕事に就きました。
これからも多くのケモノ仲間たちが、“ぽたろさん”という最高の居場所で末永く健やかに穏やかに伸びやかに自分たちらしく暮らしていくはずです。
そしてぽたろさんの中身まで活き活きと映し出すようなタッチで、その様子は広く世の中に伝えられていくことでしょう。

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