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2023.06.09 お知らせ

【6月10日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2023 vol.07

鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は6月10日に行われる2023明治安田生命J3リーグ第13節、鹿児島ユナイテッドFC vs ヴァンラーレ八戸のマッチデープログラムです。

南国交通 SPECIAL MATCH 2023明治安田生命J3リーグ第13節

日程表・順位表・テキスト速報

前回までの振り返り

2023年5月14日(日)2023明治安田生命J3リーグ第10節
vs FC琉球 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)

ギラヴァンツ北九州との九州ダービーを2−0で勝利して迎えた翌週、FC琉球を迎えての一戦は、鹿児島らしい暑さのもとでキックオフ。
15分、岡本將成のロングフィードに抜け出た左サイドバック渡邉英祐が入れたクロスがゴール前で跳ね返されたところを、トップ下の端戸仁がミドルで狙うがGKが弾く。
さらにつないでペナルティエリア内左側で中原秀人選手が落としたボールを、端戸が再びゴール前に入れるが藤本憲明にはわずかに合わない。
29分、右サイドから琉球がゴール前に入れたボールからヘディングを打たれるが、GK松山健太がキャッチする。
前半は琉球が攻撃をする時間が長かったが、それでも0−0で前半を終える。

「前半にもチャンスはありましたが、相手も勢いがある中で、そうしながらも前半をゼロを終えることは非常に大きなことです(大嶽直人監督)」
56分にはロングボールから鹿児島背後のスペースを突いた琉球のチャンスになりかけるが、すばやく戻った岡本がカバーする。
59分、ベンチから圓道将良と武星弥が同時に両サイドに投入される。
「暑さもあって相手も結構疲れていたと思います。相手の守備がハイラインで、自分の特徴である背後への抜け出しをどんどん出してくれと言われてピッチに送り出されました(武星弥)」

79分、松山のロングボールを有田光希が競って落として、武、端戸、右サイドバックの星広太とつなぐ。
星が中央に戻したボールを中原がダイレクトでミドルシュートで狙う。
バーに弾かれる。
いち早く反応した有田が打ったシュートは、さらにGKに防がれる。
さらにこぼれたボールは少し遅れて入ってきた圓道将良の前に転がる。
圓道はゴール前に集まる琉球守備陣を見極めて冷静に流し込む。
「逆サイドでクロスを上げる時、反対サイドから中に入るのはチームとして徹底しているので、そうすることで、たまたまいいところにきて、運も味方しました。良いボールすぎて焦ったのですが思ったよりは落ち着いて決められて良かったです。(プロ初ゴールが)やっとという気持ちが一番強くて、ホッとしました(圓道将良)」

87分、右サイドから入ったクロスは飛び出した松山がキャッチして、琉球の攻撃を切る。
直後の88分、琉球陣内でのパスが乱れたところを武星弥が奪う。
そのまま打った左足のシュートが決まって追加点。
「自分の思ったところにボールを置けなかったのですが、とにかく勝っている状況だったので、とにかく思いっきり左足を振り抜いたら、うまくゴールを決めることができて良かったです(武星弥)」

最後まで鹿児島は集中を保ち、3試合連続の無失点勝利を飾った。
Jリーグ30周年の記念試合であり、奇しくも鹿児島のJリーグ通算入場者50万人を達成した節目の試合での勝利。
「スタッフ、ボランティアの方々のおかげで達成できたと思いますし、鹿児島のサッカーを愛していただいている、皆さんのおかげです。1人1人がつながって、ここに来れたと思います。このJリーグ30年のなかで、色々な進化があり、環境もよくなり、色々な方と助け合って、見えない人の力もあってできたことです(大嶽直人監督)」
「サポーターを見ると、昔から見た顔がいて、新しい方もいて、色々な層の方に見てもらえるようになりました。一番は今観に来ている子どもたちが将来鹿児島ユナイテッドFCでプレーしたいと思えるようなクラブになっていかなければならないと思いますし、そういう風に目指してもらうプレーをしていたいです(五領淳樹)」

鹿児島がJリーグ入りした時からプレーする五領淳樹の視線は未来へ向いていた。

2023年5月28日(日)2023明治安田生命J3リーグ第11節
vs 松本山雅FC 会場:サンプロ アルウィン(長野県松本市)

ギラヴァンツ北九州相手にPK戦の末に天皇杯を1回戦敗退で終えた1週間後、Jリーグ随一の入場者を誇る松本山雅FCとのアウェイ戦を迎えた。
かなりの強風が向かい風となって鹿児島に吹き付けるなかはじまった試合は、21分、松本が右サイドから入れた強いボールがこぼれたところを、押し込まれて先制を許す。
それでも鹿児島は慌てることなく前線からの守備と落ち着いたボール回しで松本ゴールへ迫る。

30分、中盤で岡本將成、渡邉英祐とつなぎ、渡邉からペナルティエリア左側を狙う福田望久斗へ浮かせたボールが入る。
松本サイドバックに競り勝った福田がゴール前に入れたボールを、ペナルティエリア内で中原が受ける。
ゴール前でボールを受けた藤本が左足で打ったシュートはサイドネットに決まって同点。
「風下でも押し込めているシーンがいっぱいあったので、失点した後でしたが、みんな強度も落ちることなくプレーできて、同点ゴールにつながったのは良かったです(藤本憲明)」

しかし44分、CKからヘディングで合わされて再度勝ち越される。
1-2でリードされて前半を終えるが、鹿児島は絶対に勝てるという士気高く後半へ臨む。
「前半風下で少し受け身になって耐える展開になりましたが、そのなかでも落ち着いてしっかりと1点取れました。前半の最後に失点しましたが、ポジティブに考えれば相手のロングボールやパワープレーの中でよく抑えたと思いますし、やられたのもセットプレーだったのでそこまで気にすることはありませんでした(大嶽直人監督)」

48分、中盤で中原が粘り強くキープしたボールを、木村祐志がダイレクトで左サイドへ送る。
フリーで受けた福田は左サイドからドリブルで中央へ切り込む。
そのまま打ったシュートは松本DFの股を抜き、そのままニアサイドを破って再び同点。
「ずっとゴールをイメージしていましたが、なかなか決めることができませんでした。今日は気持ちで決めた1点です。(ゴールシーンは)以前から練習していた形なので、自信をもってシュートを蹴りました(福田望久斗)」

松本も勝ち越し点を奪うべく攻勢に出るが、広瀬健太と岡本を中心に決定的な場面は作らせない。
お互いにチャンスが行き交うもゴールが生まれないまま訪れた90分。
中盤の山口卓己からトップ下の山本駿亮、さらに左を走る圓道へボールが渡る。

圓道が入れたクロスからのクリアを、右サイドバックで出場する野嶽寛也が回収する。
そのまま野嶽は密集地へ切り込み、ゴール前へ送ったボールを、有田光希より一瞬早く山口が左足で蹴り込んで逆転。
「チーム全体としてもネガティブな感じではありませんでしたし、交代で出る自分たちで流れを変えようとしました。そういう意味で、交代で出た選手たちで流れを変えることができてよかったです(山口卓己)」

93分、松本陣内でボールを奪った圓道がじっくりとペナルティエリア内をうかがい、横のパスを受けた武星弥が冷静にGKの動きを見極めたシュートで突き放す。
アウェイ松本で4-2の勝利。
藤本の鹿児島復帰初ゴール、福田と山口のJリーグ初ゴール。
「チーム全体として出ている選手だけでなく、試合に出られていない選手もいますが、チーム全体としてできていることがこの結果になっていると思います。ユナイテッドは仲が良いチームなので、ベテランだけでなく若い選手も含めてひとつにまとまっていると感じます(山口卓己)」
多くのポジティブな要素に包まれたエア祝杯が、大きな声援を送り続けたサポーターの前で繰り返された。

2023年6月3日(土)2023明治安田生命J3リーグ第12節
vs 奈良クラブ 会場:ロートフィールド奈良(奈良県奈良市)

松本戦に続いてのアウェイ戦となる奈良クラブ戦。
Jリーグ年目ながら、リーグ最少失点で上位につける奈良クラブ相手にも、鹿児島はこれまでのサッカーを続ける。
15分、広瀬健太が右サイドへ送ったボールに抜け出た藤本憲明が、そのままシュートまで持ち込み、GKが防いだボールに最後詰めていた中原秀人がミドルシュートを打つ。

20分、奈良のコーナーキックは松山が防ぎ、最後はクリアする。
40分、奈良が左サイドの突破から強烈なシュートを打つ。
後半も最初にチャンスを作るのは奈良。
47分、奈良がパスワークで攻め込むが、約2カ月ぶりにスタメン出場した戸根一誓が落ち着いたカバーリングでチャンスは作らせない。

「向こうもポゼッションというより、どちらかと言えば割り切っている感じがあったので何が何でもつなげるという感じではありませんでした。前線に蹴った時に競って、セカンドボールを取ることはできていました。サイドから攻撃された時も結局はクロスが入ることは分かっていたので、そこは跳ね返すことができました(木村祐志)」
徐々に鹿児島は奈良陣内でのボール奪取からチャンスを作る。
49分、奈良陣内でのパス回しのコースを読んだ福田望久斗が、そのままパスを奪ってシュートを打つ。
54分、五領淳樹がパスをカットして、すばやく前へ送ったボールを藤本が狙うがGKが身体で防ぎ、最後は中原が左足で打ったシュートもGKがキャッチする。
61分、奈良陣内でのパスカットから福田、右へ走る五領とつなぎ中央へ戻したボールを端戸仁がダイレクトで合わせる。

直後にもボール奪取から福田がペナルティエリア左側から強烈なシュートを打つ。
65分、左サイドでボールを受けた渡邉英祐が思い切って打ったミドルシュートはGKが弾き出す。
72分、広瀬が奈良の背後へ送ったロングボールを、右サイドを駆け上がった野嶽寛也が受けて、そのまま角度のないところからシュートする。
80分、奈良が左サイドから入れたクロスをヘディングされるが、GK松山健太が落ち着いてキャッチする。

81分、野嶽の浮き球を有田光希がダイレクトで落とし、武星弥が受けるがシュートはGKがキャッチ。
84分、左サイドでボールを受けた山本がみずから打つが、わずかに外れる。
95分、中盤の競り合いを制した鹿児島が前進して、山本が浮かせたボールを有田が収めて、山本に戻す。
倒れ込みながら山本が打ったシュートはGKが弾く。

鹿児島は多くのチャンスを作ったが、スコアは最後まで動かず、0-0で試合終了。
勝ち点3を獲れたという思いと、難敵奈良を相手にアウェイで勝ち点1を取ったという思いが交錯する。
「正直どちらが勝ってもおかしくない内容でしたが、うちの方がチャンスは確実に多かった中で、得点ゼロに終わったことは攻撃陣としては情けない気持ちです。ただ負けた訳ではないので、そこをポジティブにとらえて次のホーム戦を絶対に勝ちたいです(五領淳樹)」
「物足りさよりもポジティブにとらえていることのほうが大きいです。あれだけ攻めて、決めきることはできませんでしたが、最後ボックスの中へ入る回数も増えました。シュートのところまで時間をかけずに、相手が整う前にしっかりできたことは大きいことです。これを続けて質と精度を上げればもっと強くなってくると思います(大嶽直人監督)」

今節はヴァンラーレ八戸をホームに迎える。
後半途中から出場する中で多くのチャンスに絡んでいる有田光希はチーム全体、クラブ全体として闘うことを意識している。
「後半途中から得点する試合が多く、全体の闘い方を考えたら後半出る選手が取って勝つことで勢いが出ているので、チーム力は昨シーズンより上がっていると思います。もちろんスタートから出たいですが、与えられた役割を理解しながら試合に臨みたいです。アウェイ戦が続きましたが、天皇杯含めて多くのサポーターが来てくれました。特に奈良では大雨の影響で来れない方もいらっしゃいましたが、それを感じさせない応援でした。サポーターに感謝していますし、ホームでさらに多くの方の前でできることもアドバンテージです」

ボランチとして今シーズンも攻守に盤石の働きを示す中原秀人は、地に足をつけながら次の試合に臨む。
「シーズン序盤、勝ち点は取れていても内容的にうまく行かない試合がありました。その時期を踏まえて結果が出てきて、内容も完璧ではないけれど徐々に良くなっているのは感じています。大切なのは1試合1試合です。ここまでは上の順位にいることはなく、相手に対策されていなかったけれど、対策された時にそれを上回る力を身につける必要があります。まだ先は長いので悪い流れだったり、そうなった時にしっかりと踏ん張っていい時期のサッカーを思い出せれば問題ないと思います」

大嶽直人監督はこれまで鹿児島が積み重ねてきたベースを八戸戦でもしっかり発揮することを求める。
「今、鹿児島らしいサッカーができていて、ペナルティエリア脇のポケットに入ることと、サイドからの攻撃が機能しています。大きなミスもなく、小さなミスに抑えられていることも大きいです。八戸戦もゲームを支配できるように攻守の切り替えと球際で負けない、ベースのところをしっかりしなければなりません。選手たちは久しぶりのホーム戦で気合いが入っていますし、その優位性も活かして、いい結果を得たいです」
今シーズンはじめてのナイトゲームも、鹿児島は一体となって勝ち点3だけを目指して闘い続ける。

コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.7(Total vol.19)」
喜び入るまちのお父さんは頭の先から足先まで喜入愛家族愛いっぱい!

5月25日、喜入支所のユナイテッド担当からチームにスイートコーンの差し入れがあったことがクラブのTwitterで紹介されると、選手たちが喜入の名産を美味しそうに食べている姿にサポーターは大いに反応しました。
そして6月5日、満を持して6月10日のホームゲーム会場で喜入PRブースが出店して、スイートコーンとオクラが販売されることが発表されました。
一連の流れについて喜入支所の相談室で濵﨑さんは「選手によるPR効果は、最初は考えていたけど」と認めた上で、続けました。
「今はもう我が子のように思っている選手たちに、美味しいものを食べてもらいたいという想いだよね」
このスイートコーンは、同僚といっしょに地元の生産者に直接あたって用意した採れたてです。
ちなみに濵﨑さんは、そこそこ濃い鹿児島弁で話しますが、再現するのが難しいのでご容赦下さい。

喜入町役場の公務員として

鹿児島市役所喜入支所総務市民課地域振興係主幹の濵﨑隆文さんは、喜入瀬々串町の生まれ。
当時はまだ鹿児島市になる前、揖宿郡喜入町の時代。
中学卒業後は鹿児島市の高校ではなく、指宿高校に進学卒業しました。
小学1年生のころから包丁を握るほど料理好きだった濵﨑さんですが、色々と考えた末に原田学園の専門学校でソフトウェアを学ぶことにします。
「当時、トレンディドラマの主人公がシステムエンジニアだったりしたのに憧れて」東京秋葉原で一流企業の、今で言うIT部門の仕事に就きます。
ところが現実はトレンディドラマとはまったく違い、新人は何十台とパソコンが並ぶ空間で、何十人という同僚とともに黙々と定められたプログラムを打ち込んでいく毎日。
モニターをみつめながらキーボードを叩き、うまく作動しないプログラムに四苦八苦する生活に「自分らしくないなあ」と外向的な濵﨑さんは違和感を抱いていました。
紆余曲折を経て喜入に戻り、地元の工場で働きながら公務員試験の勉強をして、大卒と同じタイミングで喜入町役場に就職しました。
「本当はENEOSに就職したかったんだけど、あそこは高卒か大卒しか採用しなくて、専門学校だったり中途では試験も受けられなかった」

喜入町役場では税務課や財政課で働くことになります。
「別に数学が得意なわけじゃないんだけどね」と言いながら。
特に印象深い仕事は「喜入いきいきふれあい広場」の整備事業。
鹿児島県との連携で土地を整備して、公的施設を整えようという町の構想があり、濵﨑さんは担当者として地方債で資金を調達しましたが、様々な事情で事業は止めざるを得なくなります。
結果、町長や濵﨑さんたちは「とりあえず芝生を敷いてみんなが自由に遊べる広場にして、しかるべきタイミングが来たら活用しよう」という結論に至りました。

揖宿郡喜入町から鹿児島市喜入へ

喜入町の職員として充実した時間を過ごす濵﨑さんでしたが、日本全国を包んだ市町村合併という大きな流れがあり、喜入も当事者となっていきます。
北は鹿児島市、南は指宿市に接していて、どちらとも深くつながる喜入町はどちらかに編入するのが一般的な流れでした。
しかし濵﨑さんは鹿児島市編入派と指宿市編入派どちらの考えにも理解を示しつつ、個人としては「鶏口となるも牛後となる勿れ」の気概を抱いていました。
地方財政が厳しい時代を迎えるとしても「ここをこうやってこう削れば、喜入町単独でも十分にやっていける」と、喜入の可能性を数字で示した濵﨑さん。
多くの削減対象を示したがゆえに強い反発を受けましたが、若く理想に燃える濵﨑さんは、自身の信念のままに各方面との議論を繰り広げ続けたのでした。
喜入全体を巻き込んだ岐路でしたが、最終的には住民投票の結果、喜入町は鹿児島市に編入することが決まります。
濵﨑さんも、町長とも頻繁に話ができてみんな顔見知りという環境から、巨大な鹿児島市の職員となりました。
喜入支所となった役場を離れることになり、先輩たちの話を聞いて希望を出した東開町にある「中央卸売市場 青果市場」が通り、喜入の外で働くこととなっていきます。

喜入出身の2人のサッカー少年とのつながり

仕事を離れたところでは、結婚して1女2男に恵まれた濵﨑さん。
長男は地元の喜入サッカースポーツ少年団(現喜入FC)でサッカーをすることになります。
ここでようやくサッカーの話になりました笑
遠くで試合が行われる時は送迎をして、息子のプレーに一喜一憂する平々凡々たるお父さん時間です。
毎朝登校時間になると、近所に住む緒方さんのところの心やさしい少年団の先輩、隼くんが濵﨑さんの家まで迎えに来てくれていました。
奇しくも喜入中学校を卒業した後、隼くんはJリーグを目指してJFLを舞台にするクラブ、鹿児島ユナイテッドFCが立ち上げた高校生チーム「U-18」1期生としてサッカーの道へと本格的に踏み入れていくことになるのです。

鹿児島ユナイテッドFC U-18時代の緒方隼スクールコーチ

そして、その鹿児島ユナイテッドFCトップチームの得点源として活躍していたのが、これまた近所に住む山田さんのところの息子でした。
少年団の出身でもあった山田裕也選手は喜入に帰ってくると、同級生が少年団のコーチをしていた関係もあり、何度か練習に顔を見せてくれました。
地元が輩出したプロサッカー選手の登場に、濵﨑さんの息子さんも含めてチームのみんな大歓喜。
サイン、握手、写真撮影を求められ、山田選手は快く地元の後輩たちの要望に応えてくれました。
「うちの子もスパイクにサインをしてもらって。今ではもう消えているけど」
2017シーズンをもって現役を引退した後、少年少女を指導するスクールコーチに就任することが決まった時、多くのサポーターが「あの(やんちゃで人見知りな)山田が?」とおどろいたものです。
しかし少年団で子どもたちに教える姿、接する姿を見ていた濵﨑さんにすれば「適職に就いた」と思えたのでした。

2016年10月20日、母校訪問として喜入小学校を訪れた選手時代の山田裕也スクールコーチ

父は一家の大黒柱として

青果市場では200もの会社があり、200人もの社長と接するなかなかハードな職場でしたが、変わることなく濵﨑さんは明るく元気に目の前の仕事を一生懸命に取り組みます。
ストレスがたまった時は大好きな果物を、市場のルールに則って家庭用には不釣り合いな箱で買って帰って「全然お金が貯まらない(苦笑)」
青果市場の後は鹿児島市の本庁で国民健康保険課を経て、そして谷山支所にいた頃。
奥さまが病に倒れ、右半身が不自由になったのです。
中学3年生だった長女が高校に進学しようというタイミングだったため、そんななかでも濵﨑さんは娘さんの夢を全力でサポートします。
遠くの高校に通うことになり、JR喜入駅から始発で通う娘さんのために、小学生の頃から得意だった料理の腕を振るって夜暗いうちからお弁当を作り、長女と息子2人を学校に送り出し、谷山市所に出勤して業務を遂行し、家では炊事洗濯掃除。
また夜暗いうちから起き出して、、、
「あの頃、1日2時間くらいしか寝ていなかったんじゃないかな」とさらり。
いつも明るくパワフルなお父さんは「本当に大変だった。職場の理解があって助かった」と、子どもたちが高校を卒業して、奥さまも落ち着いた生活を送れるようになるまでの日々を穏やかに振り返りました。
大変な状況ではあるけれど、当然のやるべきことをやってきたという風情で。
そして一家の主として、それ以上に1人の人間として、やるべきことをやり抜いた濵﨑さんは「だから今は夜、居酒屋で酒を飲んだりして“本当にこんなことやってていいのかな?”って思ってしまうんだよね」と苦笑いしました。
そんなこんなを含めて最終的に「波乱万丈やっどが?」と言えるあたりが、難局に押しつぶされることなくやさしさを保ち続ける濵﨑さんの人柄です。
鹿児島ユナイテッドFCにとっても、喜入で活動する上で欠かせないクラブの安心感の源泉です。

こんな表情をすぐに作れるお父さんです

そういった家庭のことも考慮され、濵﨑さんは5年前、支所となった古巣に帰ってきました。
それまでは財務課や国民健康保険課など、数字にまつわる領域が多かったのですが、喜入支所では総務市民課地域振興係です。
鹿児島市のホームページによると、町内会や自治会などの地域コミュニティにはじまり、防災やごみ処理など多岐に渡ります。
ただ、喜入生まれ喜入育ち喜入在住、今でも地域の年配の方々からは昔と変わらず「たかぼー」と呼ばれているほど愛され、喜入への深い愛を抱く濵﨑さんにはうってつけのように映ります。
市民局 喜入支所 総務市民課|鹿児島市 (kagoshima.lg.jp)
そうして、ひとつの大きなプロジェクトのことが伝えられました。

喜入にユナイテッドが来た

喜入いきいきふれあい広場の土地を、鹿児島ユナイテッドFCに無償貸与して、専用トレーニング場として整備する。

話を聞いた濵﨑さんはすぐにいい話だと思いました。
「喜入まで人を呼び込むのは簡単ではない。たとえば“旧麓(もとふもと)”に行けば日本遺産がある。でもこれだけでは人は呼べない。そこで鹿児島ユナイテッドFCがあれば、“サポーターに来てもらう”ことができるし、ユナイテッドを通じて喜入を知ってもらえる」
そして場所が「喜入いきいきふれあい広場」ということも、かつて町役場時代に土地を整備するために奔走した濵﨑さんにとっては最高の活用法に思えましたし、縁も感じられる話でした。

2021年に入ってから土地は少しずつ整備されるようになり、人工芝のグラウンドが整えられ、天然芝のグラウンドが整えられて、2021年10月から鹿児島ユナイテッドFCのトップチームが「ユニータ」を利用するようになりました。
地域振興係として濵﨑さんは月に1回、喜入支所の職員や喜入の様々な施設関係者、商工会とクラブの人間が集まっての委員会を立ち上げ「ユナイテッドが喜入の一員としてどうあるべきか」「喜入はどのようにユナイテッドを活用できるか」を中心に話し合う場を設けました。
またこの委員会は「今度こういう行事があるから参加して欲しい」「今度グラウンドに見学に行きたい」などユナイテッドに寄せられる大小様々な要望を、クラブが個別に対応していては混乱するから、地域とユナイテッドの間に立ってうまく「つなげる」存在が必要だという意図も含まれています。
この委員会を通して実現していったのが「長島研醸×喜入×鹿児島ユナイテッドFC」の連携事業である新さつま島美人プロジェクトを筆頭に、JR九州ウォーキング、ホームゲームでのスイートコーン販売などなど。
コロナ禍でユニータでの受け入れが難しい環境でしたが「ユナイテッドを通じて喜入を盛り上げる」という目標に向けて濵﨑さんは喜入愛の火を燃やしながら同僚やユナイテッドとともに走り続けました。
やれることを全部やりましたが、それでも2023シーズンのシャレン!アウォーズを受賞した全国の各クラブが取り組んでいる内容を見てみると「もっと継続性を持って、もっとおもしろくしたい」と刺激を受けている様子です。
喜入とユナイテッドの歩みはまだまだ先の長い話なのです。

ユナイテッドがシーズン初めからユニータで活動するようになった2022シーズン、濵﨑さんは鴨池で行われるホームゲームにも積極的に足を運ぶようになります。
ユニータが利用される前に観に行った時はさほど感情移入することはなかったのが、喜入でトレーニングを重ねる選手たちと様々な形で接するようになり、徐々に「我が子」感覚で見るようになっていました。
試合でゴールが決まると泣きそうになるし、それは選手たちのがんばりが報われて、喜びを爆発させている姿が嬉しいからだし、負けるとまず最初に浮かんでくるのは、落ち込んでいる姿を見て「かわいそうだな」という感情。
かつて長男がサッカーをしていた頃と同じ感情なのです。
「サポーターの人たちは怒るかもしれないけれど」と前置きした上で、濵﨑さんは勝ち負けとは別のところでユナイテッドに価値を見出しています。

濵﨑さんという幸福な出会い

公務員には異動が避けられず、しかもどの年にどのように訪れるかは分かりません。
2022年3月、公務員的には令和3年度末、3年目の濵﨑さんは「そろそろ異動があってもおかしくない」予感がありつつ「まだ今の場所でユナイテッドと喜入の関係性をきちんと整えたい」という想いもありました。
結果、令和3年度末での異動はありませんでした。
令和4年度は色々な事業をユナイテッドとともに手がけて下地が整ってきた手応えはありつつ「できればもう1年やりたい」が正直なところです。
今のままでも大丈夫ではあるけど、次の年で別の人間が担当になってもきちんと回っていくように仕組みを整えたい。
そんなことを思っていた2023年3月のある日に呼び出された時は「とうとう来たか、、、」でしたが、告げられたのは異動ではなく「係長から主幹への出世」でした。

ユニータ周辺清掃活動の前に選手たちに喜入の状況をお話する濵﨑さん

そんなわけで令和5年度、2023シーズンも地域振興係主幹の濵﨑さんは元気に喜入内外を動き回り、ユナイテッドのことにも全力を注いでいます。
JR九州主催のウォーキングイベントが行われた時も喜入のあらゆるところをかけ回って協力を取り付け、訪れた人たちに喜入の魅力を味わってもらおうと奔走しました。
冒頭のスイートコーンだけでなく、レタスの差し入れも、サツマイモの差し入れも、美味しいものを食べて欲しい一心で、つながりのある地元の生産者をあたって用意したもの。
今シーズンからUSMのプレミアム会員になり、毎試合息子さんや友人を伴って鴨池まで応援に馳せ参じるようになっています。
ユナイテッドが喜入で活動するにあたって濵﨑さんの存在は欠かせないものになっています。
そして濵﨑さんもまた「ユナイテッドを通じて喜入をもっと活性化したいという想いが強くなった」と自覚しています。
仕事のことは自分だけではどうしようもできないこともあるけれど、1人の人間としてこれからも濵﨑さんはユナイテッドFCのある喜入で、故郷愛を注いでいくつもりです。
そして濵﨑さんがユナイテッドの担当を離れる日はまちがいなく訪れるとしても、濵﨑さんの情熱が灯した火は絶やされることなく、以降担当となる方や喜入で生活する方、鹿児島ユナイテッドFCに関わる全員がそれぞれの形で受け継いでいってより大きな情熱の火となっていくはずです。
その火が消えない限り、未来の喜入はもっともっと「喜び入るまち」になっていることでしょう。
鹿児島ユナイテッドFCの10年の歩みには、あまりにもたくさんの幸運がありました。
専用練習場が整備された地域のユナイテッド担当者が濵﨑さんだったことは、表のクラブ史に書き記されることはないとしても、幸福な出会いだったことはまちがいありません。

ということを褒め称えることも大切ですが、6月10日の八戸戦では、何より濵﨑さんたちにとってはブースに用意したスイートコーンとオクラが完売して、サポーターの皆さまの食卓が豊かになることが重要な試合になります。
喜び入るまちの人たちが心がこもった味をお楽しみ下さい!
そして喜び入るまちへぜひ遊びに来て下さい!

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