【4月28日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2024 vol.06
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は4月28日に行われる2024明治安田J2リーグ第12節、鹿児島ユナイテッドFC vs レノファ山口FCのマッチデープログラムです。
日程表・順位表・テキスト速報
前回までの振り返り
2024年4月21日(日)2024明治安田J2リーグ第11節
vs 栃木SC 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
ルヴァン杯2回戦を東京ヴェルディと闘ってから4日後。
雨が降るなかホーム鴨池に栃木SCを迎えての第11節。
10分、栃木に突破からシュートまで持っていかれるが、限定されたコースを把握するGK泉森涼太が正面でキャッチ。
21分、右サイドから山口卓己がドリブルで持ち込みながらゴール前へななめに入れたスルーパスに、藤本憲明が合わせるがディフェンスにさえぎられる。
27分、コーナーキックのチャンス。
藤村慶太のキックに、ゴール前の混戦からするりとニアサイドに抜け出た井林章が頭で流し込んで、鹿児島が11節にしてシーズンはじめての先制点を奪う。
34分、野嶽寛也が軽快なターンでマークを外すと、スルーパスを受けた田中渉が背後に抜けるが戻ってきた栃木ディフェンスがクリアする。
後半に入った50分、栃木最終ラインでのパス回しを狙って猛ダッシュする福田望久斗がボールを奪うと一気に独走。
右足に持ち替えるコースは限定されるがそのまま打った左足のシュートが決まる。
2-0とリードを広げる。
52分、栃木は右サイドの攻撃からペナルティエリア内にボールを送るが、井林が対応する。
61分、井林がクリアしたボールを拾われてシュートを打たれるが、ポストに当たる。
66分、ンドカ チャールスと田中のコンビでボールを運び、右サイドから福田が中央にカットインしながら左足で打ったシュートはわずかにゴールを外れる。
72分、速攻から右サイドの福田が入れた速いクロスはゴールに入りそうになるが栃木GKが弾く。
81分、左サイドのパス交換から最後は藤村がワンバウンドするミドルシュートで栃木ゴールを脅かす。
83分、栃木の突破で左から入ったクロスを打点の高いヘディングで合わされて1-2と迫られる。
91分、またも左サイドから入ったクロスでヘディングを打たれるが、泉森が素早い反応から左手で防ぎ、致命的な場面を防ぐ。
そのまま2-1で鹿児島が約1ヶ月ぶりに勝利を得た。
大島康明 監督コメント(4月24日トレーニング後の共同会見より抜粋)
チームの雰囲気はいいと思います。
ただ、それは勝ったからではなく常にこういう空気感を持てているチームなので、いつも通りだと思っています。
クロス対応の練習について
そういったところを詰めて、勝ち点を積み重ねていくことは、ここ数試合自分たちが感じているものです。
選手たちもそれを意識したなかでトレーニングで積み重ねていきました。
ここで勝ち点を取れるか取れないかが分かれると位置づけていきたいです。
11節までを終えての感想
攻撃も守備も、我々のスタイルでゲームを作っていくことができています。
ただ最後の勝ち点を取れるか、取られるか、際の局面のところはまだまだ伸びしろがあります。
それが構築できれば手応えが本物に変わっていくと思います。
5年前にJ2を闘った時と比較して
勝敗に一喜一憂せず、今の自分たちが信じているものを強くやり続けていることはまちがいありません。
それは5年前との違いではありませんが、すごく今のチームは良いチームだと感じています。
ここから自分たちが勝ちを重ねていけるように、選手たちがやっていけたらと思います。
レノファ山口FC戦に向けて
山口はセットプレーと長いボールが強いです。
守備の強度が高い上で、そういう攻撃で点を取れます。
セットプレーの守備はよりアラート(注意深く)にやりたいです。
もちろん勝利を目指しますし、チームを上に持っていきたいです。
田中渉 選手コメント(4月24日トレーニング後の共同会見より抜粋)
クロス対応の練習について
シュートをひとつひとつこだわって決めることを意識しました。
あとはチームとしてクロスの意識はすごく高いので、クロスからも点を取れるようになりたいです。
局面の意識は監督からも強く言われていて、全員意識しています、
後はそれを実行できれば失点を減らせるでしょうし、得点も増えていくと思います。
ゴールを取るために必要と思うこと
これだけ試合に出させてもらっているなかで数字を残せていないのは実力不足なので、今まで以上にこだわって貪欲にやっていきたいです。
チャンスの場面で少し相手の逆を取ってやろうとか小洒落たプレーをして外すこともあったので、ゴールが見えたらもっと思い切って打つことも大切です。
11節を終えての課題と手応え
ここ最近は減っていますが、立ち上がりの失点はそれだけで試合が難しくなってしまうので、負けている時はそれが良くなかったところです。
また後ろがボールを持っている時に目が合わないこともあったので、そこでコミュニケーションを取って、要求して改善してきました。
後ろからボールを引き出せれば攻撃の時にチャンスが作れるので、そこはまだまだ伸ばせます。
この前も先制点を取れましたが、前半から勢いよく入ったら先制点を取れて、勝てています。
どんな相手にもビビることなく前から行くことは、自分たちの強みとして次の試合でも意識していきたいです。
レノファ山口FC戦に向けて
山口はすごくまとまって守備が堅いですし、すごくいいチームです。
すごく楽しみですし、はじめて移籍してお世話になったクラブなので、そこに自分たちが勝って、成長している姿をお見せしたいです。
今までやっていることを特に変えることはなく、クロスや思い切ったシュートを狙っていきたいです。
テンポの良いパス回しで相手のブロックをずらすことができれば、チャンスは作れていくと思います。
ダービーですので、勝ち以外は求められていないと思っています。
全員で勝ち点3を目指しますし、サポーターのみなさんも素晴らしい雰囲気を作ってくれればうれしいです。
西堂久俊選手(4月24日トレーニング後の共同会見より抜粋)
初スタメンの栃木戦を振り返って
前節はプロになってはじめてリーグ戦のスタメンで出て、やってやろうというポジティブな気持ちで臨みました。
チームは勝ちましたが、個人としてはすごく悔しい時間でした。
結果を残せていませんし、記憶に残るようなプレーを出せていないし、相手の脅威になれていなかったと振り返っています。
また出場する機会をつかみ取れたら、数字の部分や相手にとって怖いプレーをできるようにしたいです。
スタメン出場の難しさ
慣れていない部分もあったので、ちょっと試合の入りで固くなった印象があります。
そういう部分は次からは明らかに改善できることなので、それを気づけたことは良かったことです。
11節を終えてのチームの課題や手応え
戦術的な部分はより全体で浸透していますし、昨シーズンからやってきている選手は理解していることを、新加入選手も理解できています。
そういった部分はポジティブなところです。
課題といえばやはり最後の質、ゴール前の点を取るところと守るところです。
監督も強調してくれていますが、もっと質を上げなければなりません。
点を取らなければ勝てませんし、点を取られれば負けます。
点に直接的に関わる部分は全体でクオリティーを上げなければならないと感じています。
レノファ山口FC戦に向けて
今シーズン勝ちが少ないなかで、ここでひとつ連勝することは今シーズンを闘っていく上で重要な試合になります。
山口戦に向けていい準備をしていきます。
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.25(Total vol.37)」
谷口功さん(会社員、応援副リーダー)
谷口功さん思い出の写真たち
故郷で、1人の社会人として生きる
こうしてたくさんの仲間たちと、たくさんの思い出がつまった鹿児島と、プロサッカー選手の日々。
前のシーズンで鹿児島ユナイテッドFCを契約満了となっていた谷口功さんは、2020年2月15日に現役引退を表明しました。
29歳になる直前でサッカー選手を辞めた功さんは、鹿児島で就職する話ももらっていましたが、鹿児島ではどうしても「元ユナイテッドの選手」という目で見られることは避けられません。
そこは多くの場合メリットになりますが、それでも功さんが選んだのは、故郷大阪へ帰ること、そして親戚が経営する介護の会社に入ることでした。
「自分のことを知らないところで厳しくいかなければないけないと思っていて。身内にこそ厳しいところがあるんです笑。そういうところに一旦飛び込んで、社会人としての競争のなかで勉強したかったんです」
現場の介護スタッフではなく運営管理側のスタッフとして、まったくサッカーと縁のない世界に飛び込みました。
まずはヘルパーの資格を取るための学校にも行って、現場のことも理解した上で、組織をどのように運用していくのか。
そう思っていたところ…世の中はコロナ禍になります。
「この業界に対してはものすごく大変でした。もうとにかくコロナの感染対策にずっと追われていて、それでも最初その感染症の担当になったんですよ。どんどんコロナが広がっていって、消毒液も尽きてきて“どうする?”ってなって。それで自社で消毒液を用意できるようにして、そうしたらまわりにもバカ高い値段じゃなくてちゃんとした値段で卸せるようになって、その事業をうちでも開始して、その責任者くらいになったんです。だから入社して最初の半年から1年くらいは介護の現場には絡みながらも衛生責任をメインでやっていました。だからトミくん(当時ユナイテッドのホームゲームにおける衛生担当の冨成慎司)もそんなことをやっていたと思うんですけど、ああいう感じです」
介護や医療の世界は今でもしっかりとした感染症の対策を行っていますから、当時の業界における衝撃は相当なものだったことでしょう。
ただ良くも悪くも功さんは業界未経験者でした。
「だからちょうどよかった、と言ったらあれですけど、消毒液を運ぶ仕事だったり、色々なところをまわったり、挨拶に訪問したりってことばっかりだったので逆に良かったです。雑用業務じゃないですけど、大事なことだし、それを最初のうちに経験できたのは良かったですね」
そしてまたサッカーのことにも
のっけからまったくサッカーと関係のない話ですが、この日の取材も業務時間の隙間で応じてくれた功さんは、しっかりとしたシャツを着て話をしてくれています。
「でも結局、社会人になってもいっしょなんやなって思いました。質を求める方の大事さはあるんですけど、結局は量をこなしていかないとその経験にならないんです。サッカーの練習ではいいプレーだけを練習していてもうまくならない。それは社会に出てもいっしょでした。企業では数をこなしてがむしゃらに貪欲に努力できる人間が上がっていくんだなっていうのを感じましたね」
約20年のサッカー生活で功さんを育んできた習慣や考え方の根幹は、セカンドキャリアにおいても大きな意味を持つものでした。
そして少しずつ新しい環境になじんできた6月末、ついにJ3リーグが開幕しました。
無観客で行われた最初の2試合、鹿児島ユナイテッドFCはzoomを使っていっしょにDAZNで試合を見ようという企画を立案して、田上裕応援リーダーたちとともに県外からのOBをゲストとして功さんにも声がかかりました。
画面で見るなじみ深い鴨池の観客席には誰もいなくて、芝生の上で選手たちが動いているだけ。
「多分みんなもそうでしょうけど違和感がありました。やっている選手ってどうなんだろう、どうモチベーションを持っていくんだろうっていうのが最初の印象でしたね。スタンドにサポーターが入っている高揚感、ゴールとかいいプレーでばーっと湧いてくれる感がない。自分たちの声が100%通るし、スタジアムは特に響くだろうし。もちろんベンチの声がすごい中継に入っていたりしたのはあれはあれで面白かったですけど。練習試合を見ているような感じで、選手たちは難しかったんじゃないかなって思いますよね」
それでも少しずつスタジアムに観客は戻ってきて、ピッチの上ではチームメイトだった五領淳樹選手や酒本憲幸選手や大西勝俉選手たちがいて、観る側の楽しさを知ることもできる機会にもなりました。
「引退して半年くらい、ほぼボールは蹴ってなかったんですよ。ジムに行ってもボールは蹴ってなくて。関西の社会人チームからも声をかけてもらったりはしていたんですけど、その中途半端が嫌で、入ってそんなに経っていないのに元プロサッカー選手かしらんけど怪我して仕事に支障が出るみたいなのが嫌で、そっちはそっちで完璧にしたくて」
もっと言えば当時はジムに行くのも人がいない時間帯を狙っていかなければならないし、外を走るのにもマスクをつけなければならない、そんな時期で、自宅で過ごす時間は長くなっていました。
「今までよりサッカーを見る時間も増えた感じがするし、自分ではやらないけど、サポーターの皆さんと同じ目線ですよ。この試合に負けた、では次誰が出てくるんだろうとか、相手に適応して誰を使うんだろうとか、サポーター目線の楽しさをはじめて味わった感じですね」
こうしてご存じの方も多いでしょうが、2020シーズンは田上裕応援リーダーと2人でクラブ公式YouTubeにて様々な企画を実施するようになります。
そして2021シーズンからは同じく引退した水本勝成さんとともに応援副リーダーとして、YouTubeに出演して、選手たちの目立たないけれどプロの技術が込められた好プレーを取り上げるYouTube企画「PICK UP PLAY」にレギュラーで出演してくれました。
「それこそ選手とサポーターのちょうど間くらいの立ち位置で、おもしろかったですね。今はだいぶ入れ替わりましたけど、元チームメイトだから分かる選手たちの凄さを伝えられるじゃないですか。一時期ベテラン選手を中心にサポーターから叩かれていたことがあって、そういう時に自分やタノさんやカツ(水本勝成さん)がたとえば“シャケさんのあのプレーは簡単そうに見えてむちゃくちゃ難しいし、結果ちょっとしたことに見えてチーム全体に大きな意味がある”ってことをサポーターに伝えることができて、サポーターからも凄さがわかりました、みたいな声が上がっているのを聞いて嬉しかったですね」
しかし、同時に功さんに多く関わってもらっていた2020-21シーズン、チームはなかなか結果を出せない苦しい時期でもありました。
「勝ってる試合のええとこを見つけるのは簡単なんですけど、負けている中からも見つけないといけない。でもそこでアクロバティックなシュートどうこうじゃなくて、ダイレクトパスの難しさとかトラップの置き所とか。それで目が肥えてくれたら嬉しいですし、選手も多分そういう声をかけられたら結構嬉しいと思いますけどね。でも鹿児島は昔から目の肥えた人は多かった気がしますよ。試合後のファンサとかできた時代に“あのサイドチェンジすごかったね”みたいなの言われて“どれだろう?”っていうことありましたもん笑。そうやって観る側の目も肥えてきて求める声が高くなっていって、大きいクラブの皆さんとかは良くも悪くも声は上がるじゃないですか。めちゃめちゃ良いことだと思うんですよ。あかんかったらブーイングじゃないですけど。僕はそんなにブーイング賛成派じゃないんですけど、その中でも選手も“やらなきゃいけない”って思うやろうし」
功さんは途切れることなく、少し力を込めて言葉を続けます。
「ただSNSをこう使ってっていうのは僕はまじで反対ですね。やっぱり残るものだし、家族も見てるだろうしっていうのは最近の鹿児島を見ていてちょっと感じますね。愛があるのであればいいんですけどね、やっぱりそれが文面では伝わらないじゃないですか。もちろん“そんな意味で言ったんじゃないよ”ってこともあるとしても、言われる側もそういうノイズは聞きたくないやろうし。その難しさはやっぱりありますよね」
自身がピッチに立って来たからこそ、そして優しさにあふれる功さんだからこそ、1人の生身の血が通った人間である選手たちへの想いは深いものがありました。
コロナ禍が少しずつほどけてきて、功さんはどんどん仕事が忙しくなっていて出張することもあり、水本さんも自身で立ち上げた会社の経営があり、YouTubeでのレギュラー出演は難しくなりつつありました。
そんななかでも功さんはDAZNでの観戦は続けていますし、ユナイテッドに限らず、関西方面で元チームメイトが試合をするとなると会場にかけつけます。
よく知る2人の監督が指揮する時代
2022シーズンに就任し、昇格争いを演じた大嶽直人監督は、功さんにとってはプロ1年目にコーチとしてお世話になった元日本代表センターバックでした。
「僕が北九州の時に直人さんがヘッドコーチで、もうずっと見てもらっていたんですよ。直人さんは僕が試合に出れていない時もすごく教えてもらって、“お前なら絶対に行けるよ”って言い続けてくれて、それで最後までがんばれた感じはありますね」
その大嶽監督は今シーズンからFC大阪の監督として近場で観ることができます。
そして2023年8月、大嶽監督が退任した後に就任したのが大島康明監督。
功さんにとっては大学4年生で練習参加した北九州ではベテラン選手として最後の1年間を過ごしていて、2017シーズンから3シーズンはコーチと選手という間柄でともに闘った仲間です。
「大島さんってめちゃくちゃ明るいんですよ。選手ともめちゃくちゃ絡むし、声かけも全員しているんじゃないかってぐらいだし。そんなに歳が離れていないのもあって悪ふざけするところはしていましたしね。でもやっぱりヤスさん(当時監督の三浦泰年さん)風の締めるところは締めるよ、集中させるよっていうのはコーチ時代からありましたけど、監督になってそれが洗練されて大事にしているんじゃないかっていうのは何試合か観に行った時にチームの雰囲気から感じられましたね。そうやって現場をマネジメントすることが必要だって思っていたんでしょうけど、本当にシーズン途中から就任して、できすぎなくらいの結果で昇格まで持っていったのはすげえなと思います」
2023年10月、花園で行われたFC大阪戦はセレッソ大阪のアンバサダーとして活動している酒本憲幸さんといっしょに観戦。
酒本さんが半ズボンで寒そうな格好だったのはともかく笑、チームの勢いを感じられる試合でした。
藤本憲明選手が相変わらずの得点感覚で先制ゴールを決めて、中原秀人選手が「えげつない」ミドルシュートを叩き込んで、左サイドから米澤令衣選手が蹴ったボールがそのまま逆のサイドネットに包まれて。
「レイのあれは狙ってたんですかね、いや絶対狙ってないやろって、それでDAZNですぐに見返して、これは怪しいなあ、クロスが直接入ったんやろうって。こう楽しくファンの感覚ですよ」
終盤に連敗する苦境を経て、それでもついに12月2日の最終節は、引き分け以上でほぼ間違いなく昇格が決まるアウェイ鳥取戦。
鹿児島側のゴール裏にはびっしりと埋まった鹿児島サポーター。
そのなかにはホームタウンの市長や胸スポンサーの代表取締役の姿があり、バックスタンドには鎖骨スポンサーの社長が見守る姿もあります。
功さんは同じくユナイテッドOBで、むしろYouTuber「LISEMのタカ」として知られる藤井貴之さんとともにメインスタンドで決戦を見守りました。
試合は後半に入った57分にPKで鳥取が先制。
「やっぱり昇格する勢いっていうか、チームから自信がみなぎっていて、オーラがありましたよね。PKで先制されたけれど、自信が感じられました。2点3点とやられていたら昇格できないわけですけど、1点失点しても浮足立たずにまず同点、まず同点、もう失点はあかんっていう集中がすごく見れて、“これもう絶対昇格するな”って思いながら見てましたね。それでも僕たちは2人でめちゃくちゃリアクションしながら“わーーー!”って言いながら見てましたけど、あの山本(駿亮)くんの同点ゴールはやばかったですね」
アウェイ側の鹿児島サポーターが一気に爆発しました。
「あそこからの15分20分、どういう指示が出ていたのか聞きたいですけどね。守りきれだったのか、勝ちに行くぞだったのか。でも失点する感じはなかったですよね。もちろん多少シュートは打たれましたけど、チームに自信がみなぎっていって、同点になった瞬間もういけるっていう感じがでていましたよね」
そして事実上のJ2昇格を告げるホイッスルが鳴り響きます。
「安心感っていうんですかね。もうただただおめでとうって感じでした。もともといっしょにプレーしたメンバーがいて、(五領)淳樹も(中原)秀人も(米澤)令衣もよくもう1回上にもっていってくれたなって。彼らにとってはこの降格してからの4年間って一瞬のようでめちゃくちゃ長かったと思うんですよ。この期間に色々な経験をして、怪我をして離脱してそこから復活して、すごいですよ」
そして舞台は再びJ2へ
こうして昇格を達成したユナイテッドは2024シーズン、J2の舞台で11試合を終えました。
3勝3分5敗、12得点20失点、20チーム中15位。
5試合連続得点なしみたいなのはありましたけど、そんなに悪いっていうようには見えないですね。J2の厳しさは5年前を知っているサポーターの皆さんたちも知っているでしょうし、相手にいるビッグネームがまた違うじゃないですか。そんななかでもチャレンジ精神を持ってみんなやっていると思いますし。
前回降格した時もですし、去年もですけど、得失点の大事さを鹿児島としてはもう痛いほど思い知っているので、それを考えてもこの前の愛媛戦を1人退場しても引き分けに持っていけたのは本当にいいきっかけになったんじゃないかなって思いますね。
そして栃木戦がいい例ですけど、上位にいるチームは勝っていかないといけないし、そこでなんとか勝ち点を稼ぎながら同じような境遇にいるチームとの試合を絶対に落とさないようにしないといけないです。
どこも死にものぐるいで勝ち点を確保しに来ますからね。
ただ年々鹿児島の選手層は厚くなっていて、控えを見てもこれから新しい選手が活躍してヒーローになっていくを観るのがより楽しみですよね。
そういう意味で直近の試合でヒーローとなった井林章選手は関西学生リーグでしのぎを削ったライバルだからこそ、期待していたヘディングがついに来たという喜びがあります。
そして愛媛戦で劇的な同点ゴールを決めた野嶽寛也選手は元チームメイトでもあります。
「あいつ持ってるでしょ、スーパーゴールを決めるじゃないですか。ミート力であったり技術も確かなものがあるし、あれをいいきっかけにしてほしいですよね。自分の良いポイント、ポジティブなところをどんどんどんどん伸ばしていったら良いと思うし、一方でそんなに若いわけでもなくなってきているのでもっと活躍しないといけないですし。そのなかで大島監督に変わってから外せない選手になって、J2でも使ってもらいながらレベルアップしていっているわけで、J2のスピード感やレベルの高い部分になれて余裕を持ってプレーできるようになったらより面白くなるんじゃないかなって思いますね」
鹿児島ユナイテッドFCへの功さんの想いは、OBとなって4年以上の月日が過ぎた今でも尽きることがありません。
一方で、鹿児島を離れて大阪に住んでいる功さんご自身は、これからどのようになっていきたいのでしょうか?
「大きく言うと、鹿児島ユナイテッドFCのスポンサーになれるような会社の経営者として帰って来たいと思っています。今はまだまだ勉強中の身で、まだまだ先の話になりますが、大阪に住みながらも、鹿児島ユナイテッドFC、もっというと鹿実、鹿児島県に恩返ししたい気持ちが大きいです。
今大阪にいながらも、鹿児島に関われるようなご縁も少しずついただいていて、これから広げていければいいなと思っています。
現役の頃からの関わりで、スナ(砂森和也選手)ともよく連絡をとっていて、スナにとってここ数年、ご家族の事で本当に大変だったと思うんですけど、そんな中でも、サッカー選手として頑張っていて、心から尊敬しています。
それと同時に、スナからも“同じように悩んでる人たちがたくさんいて、そのような人たちに向けても、何か活動できないか”って話をずっとしてて、自分たちだからこそできることもあるんじゃないかと、どんな形であっても、少しでも支援できるような形を作れないかと考えています。
1人の人間として、社会人として、まだまだこれから力をつけていかないといけないし、自分に関わってくれた人、街に恩返ししていけるようにまだまだこれからも日々勉強して、成長していきたいです」
サッカー選手としての日々を終えてもなお、功さんの人生は「その後」ではなく「今の人生」に一生懸命です。
これからも谷口功さんは、大きな鹿児島愛で、「ユナイテッドOB県外代表」のように先頭に立ってクラブを外から応援し続けてくれるんだろうなと感じさせてくれます。
それでは最後の質問。
功さんは高校時代とプロサッカー選手の時代を鹿児島で過ごした日々を、33歳になった今、どのように振り返るのでしょうか?
そうたずねると、鹿児島とユナイテッドFCに関わるすべての方々へのメッセージを添えてくれましたので、今回のコラムは功さんの言葉で締めさせていただきます。
自分にとっては、鹿児島は第二の故郷というよりも、生まれた大阪と同じぐらい、自分の中では大きくて、鹿児島で出会った選手、監督、コーチ、スタッフ、会社の皆さんや、ずっと応援してくれてる本当の家族のようなみんなもすぐに頭に浮かぶし、ファンサポーターの皆さんも引退してからもスタジアムで見かけたら声かけてくれて、本当に嬉しいです。
高校の同級生もそうだし、よく行ったご飯屋さんや、服屋さん、毎日のように通った温泉のおじちゃんおばちゃん、本当にたくさんの人に支えられて、9年も鹿児島でサッカーができたと思っていて、自分にとってかけがえのない素晴らしい経験をする事ができました。
今までは無償の愛と言いますか、いろんな人からずっと与えていただいてきた立場だったと思っていて、本当に1人の人間として、成長させていただいたと思ってます。
鹿児島県の産まれではない人間の中で、俺が1番鹿児島を愛してるんじゃないか、って思うぐらいです笑。
今回、いろいろ書いていただいて、同時にいろいろと振り返って、試合に出れてなかった期間、出てた期間も、何もかも意味があったし、その期間関わってくれた人が成長させてくれました。
だからずっと成長曲線みたいなものを描くとしたら、自分は右肩上がりと思っています笑。
そんな人たちや鹿児島に恩返ししていけるような人生にしていけたらなと思っています。
これからも、鹿児島の皆様、どうぞよろしくお願いします!