【6月2日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2024 vol.09
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は6月2日に行われる2024明治安田J2リーグ第18節、鹿児島ユナイテッドFC vs ブラウブリッツ秋田のマッチデープログラムです。
日程表・順位表・テキスト速報
前回までの振り返り
2024年5月18日(土)2024明治安田J2リーグ第16節
vs V・ファーレン長崎 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
前節をアウェイで清水エスパルスに0−4で敗戦して迎えたホーム、V・ファーレン長崎戦。
6分、ペナルティエリアまでボールを運ばれるが井林章が対応し、クリアする。
9分、中盤から左サイドの空いたスペースへボールが送られ、そのまま強烈なシュートが決まって先制される。
14分、ボールを前線へ運び、右サイドから星広太が入れたボールを鈴木翔大がヘディングで叩きつけるがGKがセーブする。
20分、長崎が右サイドから入れたクロスを逆サイドでヘディングされるが、GK泉森涼太が身体で防ぐ。
27分、鈴木、五領淳樹とつないで藤村慶太がクロスを入れて、藤本憲明がヘディングで会わせるがこれもGKが弾く。
33分、長いボールから長崎にシュートを打たれるが守備陣が防ぐ。
35分、鹿児島は前線の連動した守備から右サイドで星がボールを奪い、藤本が入れたクロスに福田望久斗が飛び込むが、前に出てきたGKにさえぎられる。
37分、コーナーキックから井林がニアサイドで合わせるがGKが弾く。
58分、ボールを奪った長崎は一気に前線に展開して、ペナルティエリア内にフリーの選手を作ってリードを2点に広げる。
72分、中盤でボールをキープした藤村から鈴木が受けて出したスルーパスに藤本が抜け出るが、GKが飛び出して止める。
77分、右サイドから入れたクロスに外山凌が飛び込むがわずかに合わない。
85分、長崎は速攻から追加点を奪う。
0-3で3連敗となった。
2024年5月25日(土)2024明治安田J2リーグ第17節
vs 藤枝MYFC 会場:藤枝総合運動公園サッカー場(静岡県藤枝市)
2シーズン前にJ2昇格を争った藤枝MYFCとのアウェイ戦。
開始直後に前からプレスにいった鹿児島は2分、左サイドからの福田望久斗のクロスが流れたところを逆サイドから星広太がシュートを打つが、クリアされる。
10分、藤枝は中央から右サイドへのクロスのこぼれ球をボレーで合わせるが戸根一誓がクリアする。
26分、藤枝の縦パスをカットした岡本將成の持ち上がりからパスを受けた外山凌がゴール前にボールを送り、藤本憲明が胸トラップからの反転シュートを打つ。
49分、ボールを握った鹿児島は藤村から右サイドの星へ展開して左足でゴール前にクロスを送り、フリーで走り込んだ福田望久斗が頭で合わせるがゴールを外れる。
50分も右サイドの星が中原秀人とのパス交換で中央へ入り込み、藤本が左足で狙うが枠の上へ外れる。
54分、藤枝陣内でボールを奪うと左サイドでボールを回し、福田がゴール前に送ったクロスに藤本が頭で合わせるが、わずかに外れる。
82分、藤枝陣内で外山がボールを奪われると、藤枝が一気に前進。ゴール前まで迫るが全速で戻った外山がクリアする。
83分、コーナーキックから藤枝はペナルティエリア前でボールを動かし、最後はミドルシュートが鹿児島守備を破って先制する。
攻め続ける鹿児島は95分、田中渉が蹴ったコーナーキックに戸根が藤枝GKと競り、こぼれたところを後ろにつなぎ、走り込んだ野嶽寛也がわずかなコースに蹴り込んで同点。
1−1で引き分けた。
17節までの結果を受けた26日、大島康明監督が解任。
大島 康明 監督 解任のお知らせ – 鹿児島ユナイテッドFC オフィシャルサイト (kufc.co.jp)
28日、浅野哲也新監督の就任が発表され、残り21試合を闘うことになった。
浅野 哲也 監督 就任会見を行いました – 鹿児島ユナイテッドFC オフィシャルサイト (kufc.co.jp)
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.28(Total vol.40)」
大久保憲一さん&キャプテン(鹿児島大旗隊)
「古民家カフェCOCO-HANA」に現れたのはしっかりした体格で、しっかり日焼けしていて、しっかり笑顔の男性。
横山真一さん。
通称「キャプテン」はゆったりとしたテーブルにつくと、天津チャーハンを注文して「いつもこれなんですよ」と微笑みながら話をはじめました。
お店の外ではスタジアムでいつも見る大旗が2本立てられ、初夏のさわやかな風にたなびいています。
キャプテンは高校時代は水泳部で、2年生の時からキャプテンを務めていて、その結果今もキャプテンとみんなから呼ばれています。
とにかく楽しいことが大好きでサッカーも遊びではしていましたが、特に好きなのはレゲエ。
相方のムロ・バントンといっしょにDJをしたりフェスティバルに参戦したり…そしてユナイテッドとの出会いはバントンがきっかけ。
「鹿児島にアマチュア最高峰のJFLに参戦するチームができる。絶対に観に行く」というサッカー経験者の熱意に誘われてでした。
メインスタンドでコアなサポーターのやや近く、くらいのエリアでサッカー観戦を楽しんでいたキャプテンのお気に入りは背番号33の田上裕。
とにかく走り回ってゲームを活性化する姿にハマり、背番号33のユニフォームを買い求め、仕事先で話す時にも田上を知っている方々から共感されるという嬉しい副産物もありました。
もともとの性格ゆえに「コアなエリアで応援したいなー」と思っていましたが、足が踏み出せずにいたキャプテン。
その背中を押したきっかけが、鴨池陸上競技場でJ3入りに向けて邁進するレノファ山口FC戦でした。
「アウェーのチームが来てジャックされるってこういうことなんだってすごく悔しくて」
試合も0-3で、ユナイテッドにとって初のホーム敗戦を経たキャプテンとバントンは、ゴール裏で応援するサポーターの一員となっていきました。
…と、ここでCOCO-HANAの店主、大久保憲一さんもお昼の時間帯がひと段落したタイミングで3人分のアイスコーヒーを手配して、話に参加します。
大久保さんはキャプテンとは正反対に競技者としてサッカーにのめり込み、社会人チームを作っていたほどのサッカー人。
さらに同い年のロベルト・バッジョが大好きで…海外のサッカーを好んで見ていて…となると逆に地元のサッカーは遠巻きに眺める方が多いなか、大久保さんは「鹿児島のプロに上がるチームがどのレベルなんだっていう目線」で鴨池に通っていました。
2人ともコアなエリアからは離れたところからサポーター生活がはじまりました。
大旗との出会い
もうしばらく大久保さんはメインスタンド中心の観戦生活を送っていますが、前述の通りキャプテンはゴール裏の応援に身を投じて、ゴール裏のサポーターからも歓迎されました。
今に比べれば層は薄いとしてもコールリーダーはいるし、太鼓などの鳴りものもあり、大旗も振るわれています。
そのなかでキャプテンがはじめたのは「飛び跳ね隊」。
コアなエリアではおなじみの光景ですが、そこにあえて「(ゴール裏右サイド)飛び跳ね隊」と命名して「君もゴール裏で飛び跳ねてみないか?」とSNSなどで発信して仲間たちを集めていって、ゴール裏の右側にポジションを取って、チャントに合わせて飛び跳ねて、熱くもにぎやかなゴール裏を育んでいました。
先輩サポーターたちに色々なことを謙虚に教わりながら、明るく楽しく元気よく。
田上裕キャプテンと同じ背番号33のシャツを着ているという意味でもキャプテンらしく。
そしてJ3に参戦した2016シーズン。
プロの舞台で闘っていくにはクラブだけでなく、応援する側もしかるべき組織を整えていかなければならないという考えからサポーター団体「FEUS(フューズ)」が創設されて、キャプテンはFEUSの中心メンバーに名を連ねます。
飛び跳ねながらの応援が基本ではありましたが、大分トリニータのサポーターの応援でホームで圧倒され、試合でも0-1で敗れる悔しい想いをしながらも、前向きに応援を続けます。
ここで1枚の写真をご紹介。
2016年8月21日、鹿児島県サッカー選手権大会の鹿屋体育大学戦。
手前で大旗を振っているメガネの少年に目が行ってしまいがちですが、この少年が8年経って立派な大旗隊員になっているあたりにクラブの歴史を感じますが、それはともかく、奥の方で力いっぱい大旗を振り上げようとしているのがキャプテンです。
飛び跳ねながらの応援を軸にしつつも、様々なことに尻込みせずやってみる性格が現れています。
2017シーズン。
それまでメインスタンド、バックスタンドと場所を変えながらの観戦主体だった大久保さんですが、徐々にゴール裏での応援へと転換していきます。
「当時やっていたお店をサッカー好きと、それからC&Kが好きな人たちが集まってわいわいできる場所にしたくて。それでたまたまゴール裏でバントンから借りた旗をちょっと持たせてもらった時に“俺もあそこの前に出てみたい、いっしょに振ってみたい”っていう想いが芽生えてきたんです。それで戦国時代とか考えてみると、旗を持って一番前に立って先導して鼓舞するじゃないですか。アイコンというか、ああいうのは昔から好きでして」
同じ時期、キャプテンもみずから用意した大旗を握り、ゴール裏で振るようになっていました。
「もう最初は興味本位ですよ、本当に。何でもしたがりなので笑。まずさわって振ってみると、その振り方を教えてもらうたびにおもしろくなるんですよ。重たいんですけどきれいに振っていたら人が集まってきて、それが気持ちよくて。大久保さんもおっしゃったけど、先頭で旗振り役ってランドマークになるので目立ちますよね。あと旗って日本だけじゃなくて世界共通のもので、旗でがんばっている人を後押しする、鼓舞するものだと思っているんです」
大旗の話になると2人の言葉は熱を帯び、想いがあふれてきました。
とはいえこの時期のお二人はまだまだビギナーです。
「けっこう怒られていました。こう腕を伸ばさないと長く振れないとか、角度をとか。やっぱり難しいのでよく旗がポールにからまったりしていました。風が吹いたらそこまで計算して振らないと絶対からまるんですよ。あとはこのアルミポールと旗を接続する結び目、これを絶対にほどけないようにしないといけない。試合中にほどけるとかっこ悪いので、準備をすごく入念に、ということは最初からやっていました。それでも先端がほどけてしまっているのを周りから教えられたりして」
この時期から大旗が4本5本6本と増えていって、大体の試合で7~8本出せるようになり、ゴール裏を彩る大旗が映った川越カメラマンの写真点数も増えていっています。
「この時期は勝つ試合のほうが多かったし、得点もたくさん決める試合が多かったから忙しいんですよ」
ゴールが決まった時に周囲のサポーターとハイタッチをしたりして喜びを分かち合うのはメインバックを問わず観客席のいたるところで見られる光景ですが、大旗を振るサポーターの両手は当然ふさがっています。
「みんなめっちゃ喜んでいるんだけど、大旗のメンバーとアイコンタクトで。それが僕らしか味わえない感情ですね。中原(秀人)が昇格を決めるゴールを決めた時も発狂しながら振って、試合が終わった時は涙を流しながら振っていました」
ゴールが決まって勝って大旗を振る喜びがあれば、試合に敗れる悔しさもありますが、その悔しさとどのように向き合っているのでしょう?
大久保さんは年長者らしい振る舞いを語ります。
「悔しいは悔しいですけど、そこでキャプテンたちに言うんです。ここでしょげた顔をするより、みんなで前を向けるように切り替えないといけない。後ろにいるサポーターも含めて自分たちがしょげて下を向いててもしょうがない。だからコールリーダーも次につなげようって切り替えていますよね。それでも帰ってからめっちゃ悔しいんですけど」
キャプテンは苦笑いします。
「自分はかなり喜怒哀楽が顔に出ちゃうんですよ。それで周りの先輩からも結構怒られたり注意されたりして、今の立場になってからは気をつけているんですけど。本当に成長させてもらっています」
はじめてのJ2となった2019シーズン、さらに大旗の本数とそれを振るメンバーは増えました。
相手のセットプレーや押し込まれている時は「こっちに来るな」というメッセージを込めて低くたなびかせて、ちょっとでも相手の視界を乱そうとする。
チャンスの時には水平に構えてすぐ振り上げられる準備をする。
「ゴールと早とちりしたフライングは何回もあるんですけど笑。もうそれぐらいの気持ちでいいよってみんなで声かけをして」
ところがJ3降格で迎えた2020シーズンは、大旗にとっても試練になるのです。
応援ができなくなった世界で
新型コロナウイルス感染症が世界的に広がっていき、J3リーグの開幕は6月末までずれこみます。
無観客ではじまったリーグ戦は第3節から有観客になりましたが、感染症対策として声を出しての応援ができないのはもちろん、鳴りものも使えず、旗を振ることもできず、ただ拍手を送るだけ。
「旗自体は寄付してもらったりで増えていたんですが、振れない。“でもどうにかして使いたい、じゃあどうするか”とみんなで話し合って大久保さんからも意見をもらって、ゴール裏に掲示することにしたんです。ただ旗ってそれ用には作っていないので、みんなで夜なべして横断幕みたいに手すりにつなげられるように改良して。人数も限られていたので大変は大変でしたよ」
試合がはじまると、キャプテンは大旗の仲間をはじめとするサポーターといっしょに拍手を送って選手たちを見守ります。
試合以外の時間では、いつか来たる「その時」に備えて大旗に興味を持ってくれる仲間を探しながら。
そして2021シーズンになると、手拍子が解禁され、鳴りものが使えるようになり、少しずつ少しずつ応援の姿を取り戻していきます。
リーグ終盤、残り4試合となったFC今治戦で、ついに大旗が解禁になりました。
約2年ぶりの大旗に「ちゃんと振れるかな?」と言いながら、チームを乗せたバスが入ってくるところから大旗でお迎えして、アップの時からしっかりと上下させて。
しかし、今治戦、そしてホーム最終のAC長野パルセイロ戦でもゴールは生まれることなく敗戦。
アウェイの藤枝MYFC戦とカターレ富山戦ではゴールが決まり、大旗が振るわれましたが、ホームで歓喜の大旗が振るわれることなく、2021シーズンが終わりました。
キャプテンにとってもどかしい想いがつのる日々。
しかし、一方の大久保さんはそれどころではありません。
交通事故に遭い、長期間の入院を余儀なくされたのです。
スタンドで大旗を振るうことはおろか、スタジアムに行くこともできません。
「本当に死にかけたんですよ」というほどの状況でしたが、それでも支えになったのは鹿児島ユナイテッドFCでした。
「DAZNを観るとスタジアムに自分の旗が掲げてあって、気持ちがもうそこにいっしょに行ってるような感覚になれて。本当は今みたいに歩けるようになるとは思えないぐらいの状態だったんです。それでもリハビリをがんばろうと思ったのはまた応援に行きたかったから。もう一度旗を振りたかったから。そして大旗の仲間たちがいつも励ましてくれたから」
強い気持ちで大久保さんはリハビリを続け、今も支えはありますが、スタジアムに復帰しました。
大旗の充実と二度目のJ2昇格
シーズン最初から大旗が振れるようになった2022シーズン開幕のいわきFC戦。
復帰した大久保さんの提言で、クラブ側の許可も得た上で挑戦したのが大旗の体験会です。
大型映像装置裏の場外スペースで、実際に大旗を手にとってもらい、実際に振ってもらうことで大旗に興味を持つサポーターを募ったのです。
結果的にこの試合では12本もの大旗がスタジアムでたなびきました。
「このシーズンになったらメンバーがどんどん増えてきて、しかも色々とデザインを考えたりして旗を自作で用意する人が増えたんですよ」
そして2022年8月14日の松本山雅FC戦、ついに声を出しての応援も解禁されました。
キャプテンの表情にも輝きが戻ります。
「この時ぐらいからですね、旗を振るバリエーションを増やしたのが。今まではもうバラバラだったり、せいぜいいっしょにタイミングを合わせて上げるくらいだったんです。でもチャントが歌えるようになったら合わせて旗を振ることができるので、バリエーションを3つにしたんです。これは今はもう完成されましたね。
みんな一斉に上げる。
1本ずつ交互に上げ下げする。
隅の方からウェーブする。
これをその日のリーダーになった人が指で伝えるんです。
指1本で全部上げる。
2本で交互。
3本でウェーブ」
その日のリーダーが、ということはキャプテンがサインを出すわけではないのでしょうか?
「今週はこの人にお願いしますと決めてやっています。リーダーを1回やると責任感も出るし、経験値もつくし、ということでこの時期から色々な決まり事ができてきました」
この大旗に限らずですが、サポーター全体として鹿児島は着実に進化をしていきます。
そのサポーターがどんな時も応援で支え続けたことで、チームは前へ進み続け、2023シーズン最終戦、アウェイのガイナーレ鳥取戦でJ2昇格を決めました。
Axisバードスタジアムのゴール裏は、完全に埋まった鹿児島サポーターたち。
「(2014シーズンの)山口戦や(2016シーズンの)大分じゃないけど、アウェイをジャックできた。上がるべくして上がれたと言える環境をサポーターが整えることができた。そして結果も伴いました。すごく寒くて大変だったし残り15分、もう心臓が飛び出るんじゃないかっていうくらいドキドキしましたけどね」
大久保さんはまだ長距離の遠征は厳しいので、自宅で「1人で見ながら気が気じゃなかった」とDAZNでその瞬間を見届けました。
そして舞台は再びJ2へ
2024シーズンを迎えるにあたって、大旗を掲げるサポーターたちは正式に団体「鹿児島大旗隊」として活動することになりました。
それだけ大旗の存在感が増して組織化する必要が出てきたということであり、FUESやSP@RK(スパーク)にも所属しているメンバーはいますが、責任者としてキャプテンはFEUSを円満に卒業して、大旗隊の責任者となりました。
さらに3人の若き副リーダーがキャプテンを支えながらも、試合ごとのリーダーを決定するほどの権限を任され、大久保さんたち年長者がサポートする体制です。
「おのずと人間が増えていくとまとめないといけないし、先を見ていかないといけません。キャプテンもまた自分たちのような年齢になっていくんだし、誰かに引き継いでいって、ずっと続いていくものなんですよ。チームができて10年の割にはがんばって地道に本数を増やして団体まで作っているところは出来ていると思います。団体を作るのが正解かどうかはともかく、ユナイテッドを応援するという点においてはクラブといっしょに成長していけてると感じます。足りないところはたくさんあると思いますけど」
舞台はJ2になり、鹿児島を訪れるサポーターの数は増え、大分トリニータやロアッソ熊本など近場のアウェイに行く機会もあります。
大分にはキャプテンが、熊本にはキャプテンも大久保さんも参じました。
「相手チームから学ぶことも多くて、僕らは3パターンで振ってきれいに見せて、サッカーにおける興行のひとつとして見てもらえて嬉しい反面、アウェイを見るとデザインとか形状も違った正方形があったりして、次のステップに行くための勉強になります。大分さんとか多分大旗40本くらい出しているんですよ」
一方、アウェイで大旗隊を統括するのは関東在住のHUB(はぶ)さん。
近場のアウェイ戦でもそこは明確で、HUBさんがリードして、キャプテンたちはそのリードのもとで大旗を振ります。
アウェイでもHUBさんやけんぼーさんたちが参じることで、日本のどこでも、ユナイテッドが闘うところで鹿児島の大旗が振るわれているのです。
クラブは10周年を迎え、サポーターも組織化され、同時に硬直化することなく新しい血が巡るように気が配られています。
その一方で成長してきたがゆえに大旗隊が直面している新しい悩みは、大旗を振る場所が足りないということ。
寄贈されたものも含めて大旗は20本を超えていますが、現在の大旗エリアでは15本が限界。
風が強い日や雨の日は安全のためにさらに本数を減らさなければなりません。
「毎回試合の前には気合いを入れることといっしょに今日はここの高さまで振り上げましょう、周りに危険がないように注意しましょうと必ず話します。何かあったら絶対にいけませんから。そこで大久保さんが今シーズンから監視役として、危なそうなところを見てもらっているのが大きいんです」
そんなキャプテンに対して「自分の場合はもう1試合ずっと振ることはなくて座っているので」と大久保さんはおっしゃいますが、少し離れた位置から全体を見て助言をしたり、2022シーズンに体験会の開催を提言するなど、やはり要所要所で年長者の知恵が感じられます。
大旗隊はユナイテッドを飛び出して
キャプテンの明るく誠実な人柄や大久保さんの思慮深さや、メンバー1人1人の個性が噛み合い、ユナイテッドの試合に欠かせない存在になっていった大旗隊。
その活動の場はユナイテッドに留まりません。
鹿児島市の春の風物詩「鹿児島マラソン」にはじまり、鹿児島レブナイズの試合会場。
フラーゴラッド鹿児島の試合会場
さらにハンドボールのブルーサクヤと活躍の場は広がるばかりです。
そこには大久保さんたちの深い鹿児島愛がありました。
鹿児島って場所は景色が良くて桜島をはじめ色々な観光地域がある、スポーツもある。
ポテンシャルはあるんだけど、ちょっと初めてのものに手を出したがらない県民性があると思います。
そこに自分たちには大旗という武器があるので、全部のスポーツを盛り上げて、もっとスポーツを見る文化、お金を出してでも1回見たら楽しいものだっていうことを伝えたいんです。
そうしたらサッカーもバレーもバスケも盛り上がっていくでしょう。
今スタジアム問題とかありますけど、反対する人って観に行っていない人が多いと思うし、そういう人でも1回見て面白かったよなって、1%の人だけでも変わってくればもっともっと広がっていて、物事が進むんじゃないかって思うんです。
フラーゴラッドさんも今では会場が満杯になっていて体育館問題とかも出ていますけど。
でも観戦文化が広がるとおのずと県外から来る人も多くなって、観光業も色々なものがまたちょっと潤ってくるっていう感覚ですね。
もちろんその想いはキャプテンをはじめ、大旗隊のメンバーたちにも共通するもの。
今では地域の行事ごとにまで声がかかっているといいますし、徐々に「ユナイテッドのサポーター」だけでは説明しきれない団体になりつつあります。
今週末こそ歓喜の大旗を振るう!
とはいえあくまでも大旗隊にとっていちばん大切なことは、鹿児島ユナイテッドFC。
4月21日の栃木SC戦以降、ホーム3試合でゴールが生まれておらず、ゴールと勝利を祝う大旗を振るうことができていません。
けれどキャプテンは「次こそと信じて後押しするだけです。負けているし、点が入らないし悔しいですけど、選手たちが一番悔しいので、僕らはもう現場を盛り上げて後押しするっていう存在であり、期待するしかありません」と未来に目を向けています。
「もちろん勝ちにこだわっていますし、勝たせたい想いはあります。ただ今はユナイテッドの一部として、興行として盛り上げるためにサポーターさんが団結できるように旗で先導しているっていう感覚もあるんです。もちろん勝って大旗を振れるのが100点なんですけど」
大久保さんもまた浅野哲也新監督が二度目の就任で様々なことを理解した上で采配することに期待はしていますが、同時に「大島さんには本当にありがとうです。もうずっと監督が色々と変わっても残ってくれて、最後はJ2にあげてくれたことを忘れてはいけません。またどこかで監督をするのであれば応援したいです」と前監督への謝意と敬意を忘れることはありません。
「鹿児島のサポーターは甘いとか言われますけど、負けて凹んだ人を野次ってもしょうがなくて、次に切り替えてもらうために必要なことをみんな分かっているんです。それに無言の圧力ではないですけど、そっちのほうが選手には響いているみたいですしね。選手を信じているし、信じて後押しするしかありませんよ」
今週末はブラウブリッツ秋田を迎えてのホーム戦。
キャプテンにとっても浅野監督の就任は大きなニュースでしたし、期待していますが、それだけではありませんでした。
「浅野さんが久しぶりに鴨池の雰囲気を見てどう感じるのか楽しみです。
浅野さんが前回いらっしゃったのってクラブの2年目3年目だったわけじゃないですか。多分びっくりしてもらえると思うし、楽しみです。
観客席全体の迫力は上がっていっているはずなので。そしてあのそろった大旗に何を思うのかも楽しみですし、プラスにして欲しいです。これだけ自分たちは後押しされているだって思ってもらえたら、それは浅野さんを通じて改めて選手たちにも伝わるでしょう。
もっと僕たちもサポーターとしてレベルを上げていかないといけないはずなんです」
今週こそ、勝つために。
みんなで笑顔になるために。
浅野監督がこれから鹿児島にもたらしてくれるであろうものに胸を躍らせながら、自分たちが浅野監督とユナイテッドに何をもたらせられるかにも、キャプテンや大久保さんは視線を向けていました。
彼らの想いはまさに、キャプテンが振る大旗に描かれたメッセージに尽きるのかもしれません。