【11月26日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2023 vol.19
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は11月26日に行われる2023明治安田生命J3リーグ第37節、鹿児島ユナイテッドFC vs アスルクラロ沼津のマッチデープログラムです。
日程表・順位表・テキスト速報
前回までの振り返り
2023年11月5日(日)2023明治安田生命J3リーグ第34節
vs 奈良クラブ 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
第34節、前節を1-0で勝利したユナイテッドは、ホームに奈良クラブを迎える。
29分、最終ラインに降りて来た山口卓己から端戸仁へつなぎ、中原秀人がダイレクトで最前線へ送ったボールを藤本憲明が受けてシュートまで持ち込む。
直後の30分、鹿児島陣内で奪われたところからミドルシュートを打たれるがGK泉森涼太が防ぐ。
46分、奈良のパスを五領が奪うと藤本、端戸、米澤令衣が追い越し、最後は左側の米澤が打ったシュートは奈良の守備に跳ね返される。
後半に入った54分、サイドから入ったクロスから奈良が続けざまにシュートを打つが、泉森が身体で守り切る。
63分、奈良陣内でパスを奪い、右サイドから鈴木翔大がゴール前に入れたボールを中原が合わせるがGKがセーブする。
69分、泉森が最前線へ蹴ったボールを米澤が裏に抜けてシュートするがGKがキャッチ。
70分、ゴール前のこぼれ球を野嶽寛也が強烈なシュートを打つが、ネットの外側に刺さる。
76分、鈴木翔大が得たPKは、奈良GKに防がれるが、いち早く詰めていた山口卓己が押し込んで先制する。
86分、奈良のセットプレーで一度は跳ね返すが、再びゴール前に入ったボールをつながれ、ボレーを決められて同点。
アディショナルタイムにもFKのチャンスを得るが勝ち越し点を奪うことはできず、1-1の引き分けで終わった。
2023年11月11日(土)2023明治安田生命J3リーグ第35節
vs FC琉球 会場:タピック県総ひやごんスタジアム(沖縄県沖縄市)
アウェイ沖縄で迎えたFC琉球戦。
序盤から琉球が推し気味に試合を進める。
そのなかで33分、右サイドの五領淳樹が左サイドに展開して、米澤令衣がつないだボールを中原秀人が合わせるが枠を外れる。
39分、中盤でボールを奪われカウンターのピンチを迎えるが、広瀬健太がクリアする。
40分、岡本將成がボールを持ち運んでのロングパスを五領が受けてゴール前にパスを送るがカットされる。
42分、ディフェンス裏に送られたロングボールは、岡本が粘り強く守りって奪い取る。
54分、岡本から米澤令衣がキープして端戸仁、右サイドの五領、端戸と展開して、星広太が入れたクロスを藤本憲明が合わせるが、オフサイドの判定。
60分、サイドから入った正確なクロスをヘディングで合わせされ、先制点を許す。
63分、低い位置でボールを奪われると右サイドでボールをつながれて、逆サイドのヘディングで追加点を決められる。
73分、GK泉森涼太のロングボールを米澤が受けて1対1のチャンスを作るがGKが防ぐ。
76分、渡邉英祐がゴール前に入れたボールを米澤が打つがまたもGKが止める。
終了間際にも山本駿亮が強烈なシュートを打つがわずかに決まらない。
そのまま0-2で敗戦した。
2023年11月19日(日)2023明治安田生命J3リーグ第36節
vs FC今治 会場:今治里山スタジアム(愛媛県今治市)
前節から続けてのアウェイ戦となるFC今治戦。
9分、今治陣内で藤本憲明がボールを奪うと、左サイドの米澤令衣がゴール前にボールを入れる。
こぼれたところを端戸仁が右足でコースを狙ったゴールで先制する。
19分、今治のFKからゴール前で混戦になるが身体を張って防ぎ切る。
28分、今治のパス回しからゴール前に入ったボールはすんでのところで岡本將成が遮る。
前半終了間際、速攻から藤本が打ったシュートはGKが防ぐ。
51分、米澤がドリブル突破からチャンスを作るが、ゴール前の藤本とわずかに合わない。
63分、右サイドから入ったクロスをゴール前で合わせられ、1-1の同点になる。
72分、今治が圧力を高める中でも、途中出場の五領淳樹と端戸の突破からゴールに迫るがシュートは決まらない。
75分、五領が左足で入れたクロスに端戸が頭で合わせるがわずかに枠の外を通過する。
77分、直接フリーキックから戸根一誓が合わせるがGKがキャッチ。
80分、鹿児島陣内でボールを奪われ、速い攻撃からのシュートはGK泉森涼太が防ぐが、こぼれ球をつながれてのヘディングで逆転を許す。
終了間際にカウンターからの決定的なピンチは泉森が防ぐが、そのままスコアは動かず1-2で敗戦した。
大島康明 監督コメント(11月22日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
アスルクラロ沼津戦に向けて
これまでやってきたスタイルから違うことを選手にやらせて、ピッチに立ってもらおうとは思っていません。
ここまで苦しい状況の中で、自分たちがプレーする上で、立ち返るものを築いてきました。
ピッチ上で選手たちが躍動するために何が必要なのか、何を整備するかを考えています。
もちろん沼津さんに対して何をするかも必要な要素ですが、何より自分たちが躍動することが大切です。
試合の采配について
試合前のプラン通り完全に進むことはなく、状況を把握しながら対応していきます。
沼津さんはスタイルの確立されたチームなので、長所を理解して消しながら自分たちの長所を出すことが必要になってきます。
チームの雰囲気
緊張感はあります。
一体感もあります。
その両方を感じています。
この昇格のかかった試合を取ることで得られる成長はもちろんあります。
際どいゲームを、選手として集団として闘っていきたいです。
薩川淳貴 選手コメント(11月22日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
3ヶ月位ベンチにも入れずにいましたが、自分の中でやるべきことはしっかりやってきました。
そこでひとつ出場させてもらえたので良かったと思います。
試合に出られなかった期間の思い
大島監督のスタイルは全員で練習から作っていこうというスタイルです。
メンバー外の選手もいますが、そこは変わらず練習に取り組んでいって、チャンスが来たらつかむつもりでした。
昇格のプレッシャーについて
より良い緊張感を持ってやっていきたいです。
もちろん修正するところはありますが、そこは選手とスタッフでコミュニケーションをとりながらやっていきます。
固くなってやるべきプレーができないことが良くないので、緊張感を持ちつつも楽しむことは忘れてはいけません。
個人的な意見ですが、攻撃の部分で最後の大胆さ、狭いところでもシュートを打ったりクロスを入れることが最近は少ないと思っています。
そこは大事に行くところと、大胆さを出すところとメリハリをつければ結果はついてくると思います。
アスルクラロ沼津戦に向けて
前節の今治にもたくさんのサポーターの方が来てくださりました。
苦しい中でも原動力になってくれるのはサポーターなので、まずは鹿児島のために、サポーターのためにやっていきたいです。
本当に勝つだけです。
昇格は見据えています、そこだけを見ています。
藤本憲明 選手コメント(11月22日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
昇格を目標にして今シーズンやってきたので、ワクワクというか、早く試合に臨みたい気持ちです。
練習では思いっきりサッカーを楽しんでいる部分もあり、コミュニケーションを取りながらやれている部分があります
しかし試合になると昇格のプレッシャーはあると感じます。
そこは自分も含めてよりサッカーを楽しめるように、試合で表現できるようにやっていきたいです。
サポーターの皆さまが期待してくれている部分もありますし、昇格とは自分たちだけのものではなく鹿児島のもの、ファンサポーターのものでもあります。
その方々のためにも自分たちがピッチで結果を残せればと思います。
昇格のプレッシャーがかかる状況について
このプレッシャーを自分たちが受け止めること、嫌わないことが大事だと思います。
まずサッカーを楽しんで、自分たちの持っているものを自信をもって出せれば結果はついてくると思います。
このプレッシャーを経験したことのない選手もいますので、そこは僕たちが和ませて、それぞれ個人個人が良いものを持っているので、100%120%出せる雰囲気を出していきたいです。
ワンプレーで試合が決まることもありますし、そういう責任を各々感じています。
そこを怖がらずにやれれば、その先に行けるはずです。
このプレッシャーを乗り越えられればいい景色が見えるはずですので、全員でやっていきたいです。
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.19(Total vol.31)」
選手を最優先し、芝生と共に生きる日々はずっと続く。クラブと同じように続く。
2週間に1回、鴨池で行われるホームゲーム。
スタジアムの芝生がどんな状態にあるかは選手にとって死活問題です。
ただ、選手たちにとってより切実なのは、練習場の芝生がどのような状態にあるかだったりします。
平日4~5日を過ごす芝生の状態によって練習の質に違いが出てきますし、負傷のリスクも大きく変わってきます。
2021年10月からクラブ専用練習場として整備されたユニータで、その芝の管理を担っているのが株式会社ジーステージに所属する沖田さんです。
ユニータを訪問すると沖田 征計(おきた ゆきかず)さんはにこやかに微笑みながらお迎えしてくださりました。
今回は、たくさんの縁がつながって鹿児島で芝生の管理をするようになった、沖田さんのサッカーと芝生と鹿児島への想いにふれてください。
憧れた芝生と“再会”するまで
沖田さんは島根県の生まれ。
自身もサッカーをしていていましたが、将来を考えた時に、興味があったのは芝生を管理する仕事でした。
「高校サッカーでも県大会とか上の方でないと芝生でプレーできなくて憧れがあって」
とはいえ、芝生管理人の職種募集などそうそうあるわけでなく、どうやってなるものかも分からず。
サッカー業界の外で色々な仕事を転々として、当時の多くのサッカー関係者がそうであるように、仕事をしながら子どもたちの指導に携わったりもしていました。
京都府の飲食店で働いていた頃には、京都サンガFCに所属していた藤吉信次選手や三浦知良選手と親交があったりして。
その後、奥様の故郷である福岡県北九州市に移住します。
そこでなかなか良い仕事と巡り会えずにいた沖田さんがついに見つけたのが、サッカーグラウンドの芝生を管理する仕事でした。
募集して採用された沖田さんの勤務先は、当時Jリーグに入って、クラブ名称もニューウェーブ北九州から改称されたばかりだったギラヴァンツ北九州。
引退して指導者に転身していた藤吉信次コーチに「あれ?」と驚かれたりしながら、沖田さんはプロサッカークラブで芝生に携わっていくことになりました。
ゼロから築き上げた芝生と携わる知見
ギラヴァンツ北九州が練習する新門司球技場に赴任した沖田さんでしたが、日々つきっきりで教えてくれる人も、いっしょに働いてくれる人もいません。
「これじゃ仕事にならない」と言ってもおかしくない状況ですが、沖田さんがもがきながらも手入れするピッチの上では、選手たちがサポーターに勝利の喜びを届けるために、ひたむきにサッカーに取り組んでいます。
関光博選手はチャンスを作ろうとサイドからドリブルをしかけ、大島康明選手は相手ゴール前で一瞬の隙を突こうと細かく駆け引きを繰り返して…誰も彼もが必死です。
腹をくくった沖田さんは独学で猛勉強を重ねながら、日々芝生と向き合いました。
手に入る限りの教則本を読み込み、海外の文献をネット上で見つけては翻訳サイトの助けを借りて最新の知識を仕入れる。
まだ朝日が登る前からグラウンドで芝生の状態を確認し、練習が終わってからも確認して、水を撒いたり補修をしたりして、日が暮れるまで手を尽くして次の日に備える。
その日々の繰り返しの中でも少しずつ少しずつ、より良い芝生を求めて試行錯誤を重ねて、少しずつ芝生という生きものについての理解を深めていきました。
「子ども2人の運動会に出られたのは小学6年生の時だけ。幼稚園の時はどうしても親子リレーに参加しないといけなかったから、グラウンドからその時間だけ幼稚園に行って、リレーが終わったらまたグラウンドに戻って」
今の時代に良いか悪いかは別にして、膨大なエネルギーを芝生に注いできました。
前述の2人以外にも大嶽直人ヘッドコーチ、吉岡宏GKコーチ、登尾顕徳選手、永畑祐樹選手、武田大選手、谷口功選手、高野光司選手、中原秀人選手、木村祐志選手、端戸仁選手、キローラン菜入選手、…強化部の小野重徳さん、そして三浦泰年監督。
約10年を過ごしたギラヴァンツ北九州での日々ではたくさんの出会いがあり、鹿児島にも所属した名前を挙げるだけでもこれだけの数になります。
なかでも業界2年目で出会った三浦泰年監督は、チームが結果を出すためにありとあらゆる手を尽くします指導者で、プロの世界で生きる上での学びがありました。
「もうめっちゃ要求高かったんですけど、楽しかったです。でもその求めるものが大きいのにこっちも応えたいっていうのもあったので。芝生の狩り具合とか、ボールが転がる具合だったりとか、教育されましたね」
少しずつギラヴァンツは街の風景となっていって、2017年にはミクニワールドスタジアム北九州がオープンします。
本当はスタジアムの芝生の管理も請け負いたかったけれど、別の会社が受注したのは残念なことでした。
過程の話になりますが、もし鹿児島に新しいスタジアムができた時は…「絶対やりたいです」と即答です。
「設計の段階で日照時間は計算ができます。それを踏まえて平日はどんなイベントをするのか、どのくらいの頻度でするのかですね。たとえばこの前ユニータに保育園児が遊びに来たけど、あれだったら全然芝生にダメージはありませんから、“今日は◯◯幼稚園のみんなが遊びに来ました”“今日は◯◯保育園のみんなが来てくれました”とかはできます。ライブをするんだったら観客席の収容人数とアーティストの集客力を考える必要があります」
“スタジアム”というキーワードで脱線しましたが、約10年に渡る日々で北九州のJ3降格と、そして2019シーズンのJ3優勝とJ2昇格を見届け「次なる挑戦」を求めて退職しました。
芝生のスペシャリストとして評価を高めていた沖田さんにはいくつかの誘いがありましたが、就職を決めたのは、佐賀県に本社を構える株式会社ジーステージです。
新しい環境で、会社の事業の一環として元サガン鳥栖の小林久晃さんが手がけるアパレルブランド「FIDES」の服を着て、現場を離れてグラウンドのコンサルティングや資材の営業をしていた沖田さん。
その次に訪れる新たな転機は…すぐに訪れました。
ゼロから立ち上げた喜入のグラウンド
かつてギラヴァンツ北九州で共に闘い、その後は鹿児島ユナイテッドFCの強化部で尽力していた小野重徳さんを通じての連絡でした。
「鹿児島ユナイテッドFCが新たに練習グラウンドを整備するから、話を聞かせて欲しい」
実は以前から沖田さんは、鹿児島でプレーする元北九州の選手たちを通じて、鹿児島の状況は耳に入っていました。
クラブ専用の練習場がなく、グラウンドを求めて、鹿児島市内であれば恵まれている方で、北は霧島市やさつま町や薩摩川内市、南は指宿市まで片道2時間かけて移動する。
翌日に試合を控えた土曜日にどこのグラウンドも確保できず、フットサルコートや公園で身体を動かして公式戦に臨むこともある。
その状況を変えるために、多くのクラブが既存の行政の施設を使っている中で、鹿児島ユナイテッドFCは大きな投資をして、自前のグラウンドを整備しようとしている。
自分の力を求めてくれている。
「どうします?」と社長に相談した沖田さんでしたが、腹は決まっていました。
社長も「いいよ」からの「担当もよろしくね」で沖田さんが単身赴任で鹿児島に行くことになります。
「喜入いきいきふれあい広場」として地域の方々が散歩をしたりボールで遊んでいる広場の跡地を施工業者がならしていって、ネットや照明などの設備が整えられていき、沖田さんも現地に足を運び、土壌を確認して、6月から種を植えて発育状況を見ていきます。
2021年10月からトップチームが「ユニータ」の利用を開始。
そしてシーズン頭からの利用開始となる2022シーズン、クラブ側の意向を踏まえたテーマのひとつは「シーズン通じて、他の施設には行かず、ユニータだけで過ごすこと」。
定期的な養生期間を設けたり、冬芝に切り替える時期に長期の養生期間を設けるために練習場を移るクラブもありますが、ユニータではオフの日以外は毎日使えるようにする。
雨が降っても翌日変わらずにトレーニングはあるから、雨に打たれながらも芝生の状態をチェック。
特に荒れたところはピッチ外側の使わないエリアの芝生と「パッチワークのように」入れ替えて翌日使えるようにする。
もちろん練習中は選手たちの様子や、ボールの転がり具合跳ね具合にもしっかりと目を凝らします。
負傷でコンディションを崩した選手がいたらトレーナーを通じて状態を確認して、芝生の調整を通じてできることはないかを模索する。
根の量はどうなっているのか、土壌はどうなのか、光合成はきちんとできているのか、栄養状態はどうか。
天候や気温や湿度は変わり続けるから、同じことをすれば大丈夫というわけではありません。
「生きものが相手で、彼ら(芝生)はあそこの場所から動けないからですね。で、すごい正直ものなので、やったらやった分だけ、手を抜いたら手を抜いたような感じ、使ったら使った分だけみたいな感じになります。その本質、何が大事かを見極める心構えで見ないと見えてこないかもしれないですね」
同じ植物でも野菜と違うのは、育てて出荷して食べたら完結するのではなく、植えてからも育ってからもそこに在り続けるということ。
だからこそ沖田さんは骨惜しみすることなく、門外漢には理解できない細部までこだわり、常によりよい技術を求め実験と検証を繰り返しています。
ユニータで約2年。
北九州で10年かけて築き上げたピッチにはまだ及ばないと言いますが、選手もスタッフも変わることなくユニータの芝生の上でボールを蹴り続けているし、その品質には満足しているし「怪我をしなくなった」と喜ぶ選手もいます。
だからこそ「現場からこうして欲しいというオーダーはないですね。逆に“ここをなんとかして欲しい”と自分が気づいていない問題点を指摘されるようではだめですから」と管理を一任されているとも言えるでしょう。
今の会社では減農薬・減化学肥料にこだわっていて、ユニータでも年に1回程度、どうしようもない時に使うというレベルです。
「そこまではクラブからは求められていないことですけど笑。でもここは海のすぐ近くだし、これからの時代を考えていくと、がんばって農薬を使わないことが、これから大きな意味を持ってくると思っています」
大自然や生きものへの敬意と愛情が伝わってきます。
すべては「Players First」選手のために
芝生に対するこだわりは尽きませんが、沖田さんにとって理想の芝生とはどう定義されるものなのか?を聞いてみると明快でした。
「選手がここで怪我をしないピッチにすること」
沖田さんの仕事には、プロサッカー選手に対する敬意と愛情にも満ちていました。
彼らプロフットボーラーとしての生活って、人生の中で長くないじゃないですか。
10年やってれば長いみたいな感じ。
その短い選手生命を縮めないようなピッチをずっとやらなきゃいけません。
それが一番のベースです。
その上で、あとはボールの行き具合だったりとか、バウンドだったりとか、平坦性だったりとかの話ですね。
もうこだわればキリはないですよ。
こっちで芝生を作って渡して終わりの仕事ではないので。
クラブといっしょで、ずっと続くことです。
グラウンドはもうチームの家みたいなもんなので。
家の環境を良くしといてあげないと、帰りたくなくなっちゃいますからね。
あと、いい芝かどうか決めるのは利用する側です。
僕らがいい芝だって思っていても、利用した側が使いにくかったら、それはもういい芝じゃなくなります。
あくまでも僕たちは「PlLAYERS FIRST」選手最優先なんです。
沖田さんは終始穏やかに微笑んでいます。
その微笑みの奥には大きな想いが脈打っていて、大きな声や身振り手振りだけが情熱を表現するものではないと気づかされます。
最近ユニータの練習をご覧になった方はご存知でしょうが、秋のユニータは半面ずつ養生していました。
これは冬場に強い芝生の種を植えて、根付かせないといけないから。
今シーズンがどのような結果に終わろうと、沖田さんの仕事は変わることなく続きます。
もちろん沖田さんもその一員のような気持ちでチームとクラブを見守っています。
はじめて来た2年前のスタジアムは年配が多い印象でした。
それが今では若い人も増えて、各世代各世代の層が厚くなっていることをすごいと思っていますし、クラブの未来にも明るいものを感じていらっしゃいます。
沖田さんは北九州時代の2019シーズンにJ3優勝とJ2昇格を経験しています。
ただ、その時はゆとりをもって昇格を決めたこともあり、その喜びは「すごく美味しい料理を食べて“これ超旨い!”みたいな感じじゃなくて、スルメのようにじわじわしみるような感じ」でした。
今回は残り2節になっても分からない状況だからこそ、もし昇格できれば大きく感情が揺れ動くのではないかと予感しています。
それでは指導者となった大島康明監督率いるチームが、J2昇格を巡る苦しい闘いのなかにいる現状について、日々ユニータで選手を見ている沖田さんはどんなことを感じているのでしょうか?
「僕らはもう怪我しない状態で試合にいい状態で送り出すのが仕事なので、そのいい状態で試合に行ってくれたらいいなとは思います。あとはもっと自信持ってやれるんじゃないでしょうか。このプレッシャーは、どのカテゴリーに行っても昇格するチームと降格するチームしか味わえません。このしびれる状況を逆に楽しんで、一個の経験になれば、彼らがまた違うチームに移籍しても、その苦しさを乗り越えた経験っていうのはすごく生きるはずです。ここでやってきたことが積み重ねの全てです。ジャンプアップはなかなか難しい。だからここまで階段を踏んできたことを、そのまま踏み外さずに思い切ってやればいいかなと思います」
これまでの沖田さんの生き方、言葉をご紹介するだけで、沖田さんの地に足がついた、泰然とした人となりは感じられると思います。
一方で沖田さんはコンサルティングや営業にも多忙なため、2022シーズンから新卒の黒田さんを迎えて、芝生に関する知見を余すことなく伝えています。
まだ20代なかばと若く真面目な黒田さんは、どれくらい勉強すれば一人前と言えるのか?を聞くと、ちょっと予想外の角度からのお答えでした。
芝生の管理でミスをしたとするじゃないですか。
そこで上司である僕に謝るんじゃないんです。
監督や選手たちに対して申し訳ないと思うかどうか。
監督たちに対して自分の口から状況を説明して、どのようにするかを説明できるかどうか。
僕だってミスは会社に報告しますけど、会社だって「それでチームに迷惑かけないようにどうするの?」って話です。
だから「自分が管理する芝生に、チームの浮沈がかかっている」って気持ちを持てるかどうかですよ。
沖田さんはここでは紹介しきれないほどたくさんのことをお話してくださいました。
そのなかでも変わることがなかったのは、つねに本質をとらえた言葉でした。
新卒2年目の黒田さんというより、大人ですらも見失いがちな本質が込められていたので、ここでご紹介させていただきました。
2023シーズンのチームが、この沖田さんたちが整えるすばらしい芝生の上でサッカーをする期間もあとわずか。
そのわずかな期間に悔いを残さないように、選手たちが持てる力を発揮し尽くせるように、鹿児島ユナイテッドFCを愛する全員の気持ちをひとつに、すべてを出し尽くして、とことん後押ししましょう!