【3月16日マッチデープログラム】 KUFC MATCHDAY PROGRAM 2024 vol.02
鹿児島ユナイテッドFCのマッチデープログラム電子版。
今回は3月16日に行われる2024明治安田J2リーグ第4節、鹿児島ユナイテッドFC vs のマッチデープログラムです。
日程表・順位表・テキスト速報
前回までの振り返り
2024年3月2日(土)2024明治安田J2リーグ第2節
vs 徳島ヴォルティス 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
徳島を迎えた鹿児島ユナイテッドFCのJ2ホーム開幕戦。
11分、31分と徳島がチャンスを作り、オーバーヘッドで鹿児島ゴールを脅かす。
鹿児島も34分、左サイドから米澤令衣が入れたクロスボールがこぼれたところをンドカ チャールスが素早く反応して合わせるがバーに跳ね返される。
35分、中盤でボールをおさめた山口卓己からンドカへ縦パスが入り、ンドカが落としたボールを受けた田中渉がドリブルで運んで左足の強烈なミドルシュートを打つ。
53分、徳島のロングパスに裏を取られた鹿児島は、GK泉森涼太が相手FWを倒してPK。先制を許す。
直後の57分にも左サイドからの突破で徳島に決定機を作られる。
それでも鹿児島は徐々に押し返す。
70分、ペナルティエリア左側での細かいパス回しで徳島の守備を崩し、最後はゴール正面の山口がシュートを打つがわずかに外れる。
75分、中盤でボールを奪った田中からボールを戻された右サイドの渡邉英祐は逆サイドの米澤へ。
米澤がボールをキープしてゴール前に入れたクロスを、投入されたばかりの鈴木翔大が頭で合わせて同点。
徳島陣内でボールを動かし、奪われてもすぐに奪い返す守備でゴールに迫る。
92分、コーナーキックの流れから藤村慶太が入れたボールを岡本將成が折り返し、徳島守備陣がかきだしたところに武星弥が走り込み、強烈なシュートを蹴り込んで逆転。
鹿児島が2-1で逆転勝利した。
2024JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド1回戦
vs ジェフユナイテッド市原・千葉 会場:白波スタジアム(鹿児島県立鴨池陸上競技場)
徳島戦の勝利から4日後、鹿児島にとってはじめての挑戦となるルヴァン杯1回戦はホームにジェフユナイテッド千葉を迎える。
お互いにスタメンを大きく入れ替えた一戦は13分、中原秀人、外山凌とつないでペナルティエリア内の藤本憲明がシュートを打つ。
14分、コーナーキックのこぼれ球に福田望久斗が強烈なミドルシュート。
22分、右サイドからカットインして中央に入り込んだ西堂久俊が左足でゴールを狙う。
30分、中盤の競り合いを制した有田光希がドリブルから左足でシュートを打つ。
61分、左サイドから外山、千布一輝、鈴木翔大とつないで最後は星が強烈なシュート。
それぞれの選手が持ち味を出している71分、中原が千葉ペナルティエリア内で倒されてPK。
鈴木が冷静に決める。
79分、鹿児島ゴール前に入ったクロスをボレーで合わせられるが戸根一誓が身体で防ぎ、GK大野哲煥と抱擁する。
84分、井堀二昭のコーナーキックが跳ね返されたところをもう一度ふわりと浮かせたクロスに広瀬健太が頭で合わせるがGKがセーブ。
終盤に投入された河辺駿太郎が俊足を生かした突破でスタンドを沸かせる。
そのまま1-0で鹿児島が勝利した。
2024年3月9日(土)2024明治安田J2リーグ第3節
vs いわきFC 会場:ハワイアンズスタジアムいわき(福島県いわき市)
2年前に目の前で昇格と優勝を決められたいわきFCとのアウェイ戦。
強い風が吹くなかで、いわきは前から圧力をかけてくる。
4分、裏に抜け出たいわきのシュートは泉森涼太と戸根一誓がクリアする。
10分、右サイドの突破から入ったクロスをヘディングで合わせられるがゴールの上。
20分、左サイドの崩しから入ったクロスが流れたところを、今度は右サイドから駆け上がった渡邉英祐がゴール前に送る。
ンドカ チャールスが正確なヘディングで合わせるがいわきがギリギリのところでクリアする。
33分、右サイドの突破から入ったクロスを合わせられ、先制される。
後半開始直後、岡本將成、戸根一誓、渡邉とテンポよく前線へボールが送られ、右サイドの五領淳樹から中を追い越す田中渉へ。
田中がゴール前に入れたボールを藤村慶太が合わせて、GKにはじかれたところを米澤令衣が押し込んで同点に追いつく。
53分、左サイドからのパス回しで最後は米澤に渡るがオフサイドの判定。
56分、ボランチの藤村がフリーで受けるとそのまま低いミドルシュート。
鹿児島ペースと思われた61分、遠目からのフリーキックをファーサイドで合わせられ、いわきに勝ち越しを許す。
65分、ショートコーナーから田中が入れたボールに、藤本憲明がボレーで合わせるが枠を外れる。
77分、中盤でボールを奪われると人数をかけたいわきのショートカウンターから追加点を奪われ1-3。
そのまま敗戦となった。
大島康明 監督コメント(3月12日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
選手たちは目の前のピッチで、しっかり取り組んでくれています。
試合の感覚が狭くなってトレーニングよりもコンディショニングに充てる時間が多くなってきているので、そういったところを踏まえながらうまく成長とコンディショニングを考えていきたいです。
いわき戦の敗戦から活かすもの
組織が整っていても、個の力などでボックス内で上回られて失点しました。
そこでクロスを上げさせないために、相手の攻撃のどこの段階でその芽を摘んでいかなければならないのか。
クロスを上げられた時の局面のところと両方をレベルアップすることで勝利の確率を上げていくことが必要です。
そして自分たちの攻撃のリズムができなければ守備にも歪みが出てくるので、攻撃のところもしっかり取り組みたいです。
チャンスをしっかり活かすことと、入らなかったとしても失点をせずに我慢する、この2つは大事になってきます。
いわき戦で同点に追いついてから引き離れたこと
後半のあのタイミングですぐに追いつけましたし、ハーフタイムを含めて選手たちの切り替えは良かったです。
あのタイミングで相手を飲み込めると全員が感じたと思います。
その中で僕1人でもそのリスクを管理できればあの展開を防げました。
全員が勝ち越せるという意識に対するリスクマネジメントと、そのリスクを踏まえた上でも押し切るぞという判断をするのであれば、それを自分のところで発信できればと思います。
そこで押し切れれば結果的にいい判断となります。
その反面アウェイという中で自分たちが勝ち点1を最低取っていくことは、私個人としてもうまく対応できれば、危険な位置でファウルすることであったり、守備への意識は変えられるものだと思います。
3試合先制されていることについて
前回のいわき戦で出た課題は焦点を当ててトレーニングをします。
クロスを上げさせないこと、上がったクロスへの対応をやっていくつもりです。
ただ先制点を許さないのか、先制点を取るのか。
表現としては違う感じですが同じことです。
そこで自分たちは先制点を取るという表現をしたいです。
ずっと失点ゼロでいければ、自分たちが点を取った段階で先制点になりますし、先制点を許さないという表現は守る方に意識が行きますので、先に点を取りたいです。
千葉戦に向けて
すごくテクニカルな部分と組織的な部分を併せ持っています。
また両サイドがかなりレベルが高いので、そこを自分たちがどう抑えていくかの対策が必要です。
同じようなスピード感を持ったチームですが、ここはホームですので受けるのではなく、自分たちが自分たちのスタイルを出しながら抑えていきたいです。
藤村慶太 選手コメント(3月12日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
いわき戦は今季初黒星でしたが、全然切り替えられていますし次の千葉戦に気持ちを向けられています。
天候やグラウンド状況、相手のやり方は毎試合変わります。
そこに自分たちがどう合わせるかと、相手の土俵に持っていかれた時にいかに慌てずプレーして、前半無失点で終えられたらというところでもあります。
リーグ戦では3試合とも先制されているので、そこをチームとしてゼロで抑えることを意識したいです。
攻守における改善点
1人1人が球際のところ、そしてシュートを打たれるところでもう少し厳しく行かないと点を取られます。
また追い込まれた時にはゴール前の局面が増えるので、その局面で負けないことはもう少し必要です。
攻撃の部分ではいい部分がたくさん出ているので、それをどんどん増やすことと、ゴール前の精度を上げていければ得点は増えていくはずです。
そこは練習から合わせていくしかありません。
千葉戦に向けて
個人の能力が高くて、スタメンはもちろんサブにも能力が高い選手がたくさんいます。
その中でもセットプレーを武器にしている印象があります。
いわき戦でもセットプレーから失点したので、相手を分析して修正する必要があります。
すごく大事な試合になります。
ホームでできますし、ルヴァン杯でも勝っているので、また勝てるようにしたいです。
岡本將成 選手コメント(3月12日トレーニング後の共同記者会見より抜粋)
先週水曜日も試合があって、リーグ戦で出場機会のなかった選手たちも含めていい試合ができて、いわき戦は負けましたが、チームはいい方向に向いていると思います。
いわき戦を振り返って
失点の部分はクロスやセットプレーです。
そういうところは練習でやったことが試合で出るので、試合でやらせないことを意識しています。
風とピッチの環境は少しありましたが、そこでも自分たちの良さはもっと出せたと思います。
アウェイなので自分たちがやりにくい環境はありますが、柔軟に対応できるようにしたいです。
ここまでの試合を振り返って
自分のできとしてはプレシーズンの時からコンディションがよくて、群馬戦の途中から入ってうまくやれました。
コンディションは保てられていると思います。
チームとしてはいいときも悪いときもあるので、シーズン通していい方向に持っていけるように日頃の練習からチームが勝てるようにしたいです。
千葉戦に向けて
千葉もこの前自分たちに負けて今回死にものぐるいで来ると思います。
そこに負けないようにしたいです。
プレッシャーは感じすぎずにいつも自分たちがやっていることを出せれば勝てると思います。
サッカーを楽しんでやっていきたいです。
コラム「鹿児島をもっとひとつに。vol.21(Total vol.33)」
加藤 裕 ジェフユナイテッド市原・千葉アカデミーフィジカルコーチ
ZOOMで再会した彼は、鹿児島にいた頃から変わらずさわやかに微笑んでいます。
現在、ジェフユナイテッド市原・千葉のアカデミーでフィジカルコーチを務める加藤さん。
JFL、J3、J2と3つのカテゴリーで闘った日々のことを振り返ってもらいました。
JFLでの2014〜2015シーズン
高校生から大学生にかけての時期に、サッカー選手以外の生き方を探した末にこの道を選んだ加藤さん。
東京学芸大学、筑波大学の大学院を経て、学生のままクラブチームでフィジカルコーチを務めたりもしていました。
本格的なキャリアのはじまりは2014シーズン、誕生したばかりの鹿児島ユナイテッドFCから。
初代監督に就任した大久保毅さんから「フィジカルコーチは専任でいて欲しい」という意向があり、人づてで加藤さんに話があり、「あまり迷うことなく」大学院を出た加藤さんは鹿児島行きを決めます。
「街とかまった分からなかったし、日本の端の方にある、それくらいの印象でしたけど、ちゃんと栄えているなって印象でしたね。栄えているって失礼な言い方で申し訳ないですけど」
縁もゆかりもない鹿児島で、フィジカルコーチ加藤裕さんの歩みがはじまりました。
当時はまだフィジカルコーチがいないJリーグクラブも珍しくない時代で、鹿児島ユナイテッドFCはプロの経験がない選手も多くいました。
「アマチュアの選手って、例えば怪我をしてやれるか、やれないか自分で判断するものです。専門的な観点から“もうちょっと休もう”とかそういう理論に基づいて、みたいなのはちょっとやりづらかったかなっていうのは記憶にあります。でも同年代が多かったし、みんな結構リスペクトしてくれてたとは思います。いっしょに勉強しながら、ぐらいの感覚でした」
はじめての公式戦となったJFL第1節、ヴェルスパ大分とのアウェイ戦。
そしてホーム開幕戦で迎えた横河武蔵野FCは特に「3,000人以上が入って、そういう雰囲気も注目されていると感じました」という点で印象深い一戦です。
このシーズンをリーグ3位で終えるも、ライセンスの関係でJリーグ入会はなりませんでした。
「上がれるのであれば上がりたかったですけど、その辺は自分のコントロール外のことなのでしょうがない、また来年がんばろうと思っていました」
誰もが手探りだった1年目。
「スタッフも若かったし、みんなすごいこう前へ向いてアグレッシブに目の前の仕事をしっかりやるっていう。なんか文句とか言ってる暇もなく、とにかく目の前のことでした。試合のことが色々記憶に残っているって言ってて、なんか矛盾しますけど“記憶がない”っていうか本当に日々を一生懸命生きるみたいな、そういう日々でした」
浅野哲也監督のもとで昨シーズンより「Jリーグ入り」を現実のものとして迎えた2015シーズン。
「何か特別に変わったか?って言われると、監督が変われば当然求められることとかは変わるので、そういうのはありました。けれどそれ以上に新しい選手が増えたりして、Jリーグ目指すぞっていう、熱が強くなったような印象があります」
Jリーグのライセンスも得た鹿児島ユナイテッドFCは、昇格要件である「4位以上」に向けて着実に勝ち点を積み重ねていきます。
11月、アウェイの奈良クラブ戦に引き分けて4位以上、つまりJリーグ入会が確定。
「自分のキャリアでもそういうところで仕事したいっていうのはあったので、嬉しかったっていうのは一番あります。選手や他のスタッフのおかげですけど、そういうきっかけを得られたのはすごい嬉しかったなっていうのはありました」
ちなみにその翌週に行われたJFL最終節には8,000名以上の観客が入り、試合後もみんなでお祝いムードいっぱいでしたが、やはりプレッシャーに打ち勝ってチームとしての成績を出した奈良戦のほうが記憶には強く残っているようでした。
J3での2016〜2018シーズン
Jリーグ初年度となった2,016シーズン、加藤さんにとって3年目のシーズン。
所属するカテゴリーはJリーグに変わり、注目度は増していますが、加藤さんに求められるのは短期的には選手のコンディションを試合に向けて最高の状態に持っていくこと、そして長い目線では選手の肉体や身体の使い方を向上させていくこと。
日々の仕事に向き合いつつ、加藤さん自身はフィジカルコーチとしての新しい可能性を模索し続けます。
「他のクラブで同じような仕事をしてる人たちとのコミュニティもできてきたので、今やってる取り組みとかが実際どうなのかとか、他で良い取り組みをやっていたら、それちょっともらって、ここでもやってみようとか、そういう文化を作ることはちょっと意識し始めた頃かもしれないですね。最初の1〜2年ぐらいはやっぱり目の前のことに必死で、そんなに余裕もなかったかなっていう感じはあります」
はじめて参加するJリーグでどの程度できるのか不安と期待がうずまいたシーズンは、優勝争いに食い込んだ末に16チーム中5位で終えます。
サッカークラブの常として、契約満了に伴いクラブを去る選手たちがいて、浅野監督も退任。
そして加藤さんもユナイテッドのキャリアにピリオドを打ちました。
次なる職場はユナイテッドと同じJ3に所属する、ユナイテッドを上回る3位で終えていたAC長野パルセイロ。
浅野監督が長野の新監督に就任した縁もありました。
「長野では監督といっしょに来たスタッフという感じで、選手からすごくリスペクトされた感覚はあったし、かなり言うことを聞いてくれました」
4月にはホーム長野で、8月は帯同はしませんでしたがアウェイ鹿児島で、ユナイテッドと対戦。
ホームでは先制されてからの逆転勝ちで、アウェイでは先制してからの逆転負け。
「特別な思いはあったとは思いますが、ちょっと言葉では表現しづらいですけど…でも負けたくないみたいな感じかも。なんか自分がいなくなった方が強くなったりしたら、ちょっと悔しいじゃないですか。例えば昨シーズン鹿児島がまたJ2に上がったのはすごく嬉しかったです。でもこれが自分がいなくなった翌年とかだったら、“自分がいた時のほうが弱いって嫌だな”みたいな。みんな思っているんじゃないでしょうか。選手もたとえば満了になって、そこから自分が抜けたあとの方が強いみたいになるのは多分嫌なんじゃないでしょうか。潜在的なもので、こう生々しく言葉にはしないと思いますけど」
かなり正直でした笑
長野での2017シーズン、最終的に鹿児島は4位で、長野は5位でシーズンを終えます。
「チームとしての結果が出なかったり、けが人が結構いたりして、自分の専門的な仕事としては、あまりうまくいかなかった想いがあります。その反面、選手とのつながりはあって、今でも連絡を取る選手もいっぱいいるんです。だからすごく充実した日々だったことと、自分の仕事がうまくいかなかったなっていうことと、なんか半々な感じです」
翌2018シーズン、縁あって加藤さんは再び鹿児島にフィジカルコーチとして復帰します。
この業界では大久保毅さん、浅野哲也さんに続く3人目の監督は三浦泰年さん。
「監督によって仕事のやり方も変わりますが、三浦監督の時はチームがいい方向に進むように、ある意味自分の役割も明確でした。何か新しいことを取り入れてクリエイティブに仕事するっていうよりは、自分の役割をはっきりやるっていう感じで。でもそれが結果にもつながったっていうのもあります」
開幕戦での敗戦など負け越した序盤を経て、大きな連勝こそないものの徐々に勝点を積み重ねていったユナイテッドは11月25日、はじめてのJ2昇格を決めました。
「やっぱり上に上に、とクラブも個人も上昇志向があったと思うので、そういう中でやっとここまで上り詰めたなっていう感じはありました。”やってきたことが報われたな”みたいな。規模的に小さかったクラブがここまで上がってきたなって」
J2と降格を経て次なる道へ
鹿児島ユナイテッドFCにとっても加藤さんにとってもはじめてのJ2。
「なかなか勝てないシーズンだったので難しさは感じました。あとは鹿児島のホームでやる時もアウェイサポーターの熱量がすごくて、”ああ、これがJ2なんだ”って五感で覚えている感じがします。柏とか大宮とか岡山とか新潟とかウォーミングアップしている時も声が聞こえてきて。もちろんアウェイのスタジアムの雰囲気もすごかったです」
ピッチの上に目を移すと、なかなか勝点を重ねることができません。
「言い方が正しいかちょっと分からないですけど、中位下位のチームになかなか勝てなかったというか。たまに上位の例えば柏レイソルに勝ったとか開幕戦でも徳島に勝ったとかそういうのはあったけど、残留争いをしていた栃木とかに勝てなかったりとか、その辺のところに勝てなかったから、勝ち点を積み重ねられなかったなっていうのはあったかなと思います」
そして2019シーズンの最終節、アビスパ福岡とのアウェイ戦。
先制されて前半のうちに追いついて、一進一退の攻防が続く後半、勝ち越しを許し、そのまま1−2で敗戦。
「すごい熱量を感じていい雰囲気ではありましたけど、なんかあっけなく終わったなっていう。なんていうか悔しい、悲しいとかもあったんですけど…なんか、なんて言うんだろう…虚無感みたいな。何も感じられないような時間だった記憶があります」
シーズン終了後にはともに闘ってきた選手たちが退団、引退していきます。
「長くいた選手はその時間の分だけなんかこう人間関係っていうか、より密になってたとは思うので、寂しさみたいなのはあったとは思いますけど、そういう世界なんですよね。一喜一憂もできないなっていう感じです」
加藤さんはこの世界に生きるプロとして、すべてを受け止めながら次に向かっていました。
「1年でのJ2復帰」を掲げた2020シーズンはまったく予想外なものになります。
世界的に猛威をふるった新型コロナにより、リーグ戦の開幕がそもそも6月末まで伸びに伸びていったのです。
「開幕も“3週間後にありそう”みたいな感じで準備して、また流れるみたいなのが確か2回ぐらいあったと思います。そういう意味では、コンディションの作り方は難しかったですし、(コンディショニングコーチの)三栖さんとも色々話したりとかしながらやってました」
そこで活きたのが3年目くらいから本業とは少し離れたところでもこつこつと積み重ねてきた知見でした。
「それまでに色々と取り組みしたのが一気にある意味生きたっていうか、やっててよかったなとは思いました」
緊急事態宣言にともない自宅での生活が続いた時期には、ZOOMで監督以下スタッフ、選手をつないでの自宅トレーニング。
「やっぱりグラウンドに集まってサッカーの練習ができないので、フィジカル的な部分でどうやって落とさないか、上げていくか。あとオンラインでやろうって言ったのは、すごく閉鎖的な時期だったので、選手と選手のつながりをちゃんと作る場にすることも考えていました。ちょっと自分の専門外かもしれませんけど」
選手たちにはフィジカルコーチ以外にもメンタル面をケアするスタッフ、トレーナー、管理栄養士など様々な立場の方が携わります。
それぞれのクラブごとにどのスタッフがどこまで担うのか異なるところがありますし、そのことも十分に理解した上で、加藤さんはそれぞれの専門家に対する敬意を欠かすことはありません。
そしてシーズンははじまりましたが、チームは上位にはいてもなかなか昇格圏に浮上することができません。
「絶対昇格みたいな中だったので、なかなか結果が出ない、苦しいシーズンでした」
J2に昇格した2位の相模原とは直接対決で2敗し、勝ち点3差の4位で2020シーズンを終えました。
そして加藤さんは通算6シーズンを過ごした鹿児島を離れ、新しい道に進むことになります。
千葉まで続く鹿児島からの道、そして未来へ
加藤さんが新たに選んだのはJ2に所属するジェフユナイテッド市原・千葉…のアカデミーでした。
千葉のアカデミーではフィジカルコーチ2人体制で、加藤さんは中学生年代のU-15を基本にしつつ状況に応じてU-18を担当したり、もう1人のコーチといっしょにガイドラインを作ることでU-12も含めて一貫した指導ができるようにする。
数多くのプロ選手を輩出している千葉のアカデミーで、プロサッカー選手を見てきた加藤さんは今、次世代の育成に携わっています。
「トップの時はやっぱり”勝った負けた”とかがすごくある意味で中毒性のある楽しさみたいなのはありました。けどアカデミーにはそういうのはない分、子どもたちの成長、できなかったことができるようになったりする。そういう変化を感じられ、それが一番やってて楽しいなって思っています。”他の人にはあんまり分からないかもしれないけど、自分にはちゃんと見えてるよ”っていう感覚、その過程があったからこそ、成長が今あるなっていうのが実感できるし、そこに関わっているのは面白いところではありますね」
それではやりがいとは逆に難しいと感じることはあるのでしょうか?
「大人の方がやっぱり察することができるじゃないですか。1を聞いて10を理解してくれるので。そこら辺でやっぱり子供は10言っても1しか伝わらなかったりしたりします。それで自分の働きかけ方になんか問題があるのかなとか、どういう風に伝えたらいいかなっていうのをすごい工夫するようにはなってると思います」
試行錯誤を続けながら、加藤さんは子どもたちに向き合っています。
「アカデミーというか、子どもたちに関わるのは、ずっとやりたいことではあったんです。自分はたまたま大学院を卒業して鹿児島に行って、対象がプロの選手だったわけですけど。ちょっとスピリチュアルな話ですけど、いつかそういう子どもたちを見る時は訪れるかな、みたいにずっと思いながら仕事していて。
それでコロナとかもあって、他にも色々タイミングが重なって今なのかなっていうのもありました。
それから鹿児島にいた時にアカデミーの育成年代のところのフィジカルサポートみたいなのを色々議論する機会があって。そういうことをやっていくうちに、なんかやっぱり未開拓のところっていっぱいあるなと思って。
トップチームでは色々こう最先端のことができたりとか、なんかそういうのはあったんですけど、アカデミー年代は環境作りも含めて、もっとやれることがいっぱいあるんじゃないかなっていうのは思ってたんで、そういう意味でタイミングがあったかなっていう感じですね」
このように加藤さんの言葉を聞いていくと、その選択肢には納得感がありますが、一方で業界的には指導者も「アカデミーからトップへ」のキャリア形成が一般的なものだと見られています。
加藤さんはその逆で、みずからの選択でトップからアカデミーを選びました。
「僕はその考え方があんまり好きじゃなくて。なんか上とか下みたいな、その考え方は違うっていうのを作っていきたいなって、そういう野心みたいなものがあります。
子どもはその身体の成長とかがかなり関わってくる世代です。
例えば大人のマネジメントがうまくできて、プロの中ですごい仕事ができる人が、じゃあそういう子どもを相手にも同じレベルのことができるかっていうと、そうではありません。
そこはまたちょっと違う専門的な領域であり、並列であるべきだと思います。
大人のマネジメントがうまい人も当然いると思うし、子どものマネジメントができる人も、そこにもプロフェッショナルがいるっていう部分であるべきかなって思うんです」
千葉のアカデミーで子どもたちにたずさわっている今の話になると、加藤さんから発せられる言葉は、丁寧に整備された中にも強く熱い感情がより感じられました。
そんな加藤さんの仕事に対する向き合い方や人柄が現れていると思ったのは、鹿児島時代の6シーズンで印象的なエピソードや印象的だった選手の話を聞いた時でした。
少し加藤さんは考え込みました。
「特定の名前を挙げるのは…みんな印象に残っています。それぞれにすごく違いがあるんです。1年とかで退団した選手のこととかもパッと思い浮かぶし。長くいた選手も(谷口)功とかかっちゃん(水本勝成さん)とか、そこら辺もみんな思い浮かぶんですけど…という感じですね」
公平であり、公正です。
有名無名だとか、リーグ戦で活躍しているとかエントリー外が続いているとか、若手だからとかベテランだからとか、トップ昇格を期待される有望株だとか世代別代表に選ばれたとかBチームの試合にも出られないとか。
そういうことに左右されることなく、フラットにただ眼の前にいる選手が短期的にはベストコンディションでいられるように、長期的にも成長していけるように、プロのフィジカルコーチとして愛情と誇りを持って自分の持てる力を尽くす。
当たり前のあるべき姿と言ってしまえばそれまでですが、大人ほど、そういう”外側”の事情に目を曇らせてしまいがちです。
加藤さんは眼の前の光景にしっかりと目を凝らし続けて、相手にとって必要と思えば言いにくいこともちゃんと伝える。
そうやって加藤さんは鹿児島でも、長野でも、千葉でも変わることなく選手たちから信頼されているのだとうかがえます。
あらためて鹿児島で過ごした日々を今、どのように思っているのかたずねました。
「やっぱり学校を出て仕事にするっていう中で、普通の社会だったら例えば大卒一年目で新人みたいなところから、少しずつ中堅になっていくところをどっぷり鹿児島で過ごさせてもらいました。本当にこの時間がなかったら、今の自分は絶対ないと思っています。日々色々とまわりからの刺激だったり、叱咤激励も受けつつ、自分でもがむしゃらにやってた経験っていうのはすごい今生きてるかなっていう風には思います」
やっぱり加藤さんはまっすぐな方でした。
それではプロとアカデミーの両方で経験を重ねた加藤さんは、これから何を目指しているのでしょう?
「契約ごとなので与えられたところで頑張るんですけど、欲を言えば、もう1回トップの世界もやりたいとも思っています。これもタイミングだと思うんですけど、Jリーグの中で優勝して世界に出ていくようなことをやりたいなって、ACLの映像とか見るといいなっていう憧れみたいなのはやっぱりありますね。Jリーグで優勝した時の映像でも知ってる人がスタッフでいて喜んでたりするシーンとかもありますし、この間なでしこJAPANがオリンピック決めた時もスタッフで知っている人がいたのをちょうどテレビで見てたんで、そういう世界に日本を背負って出ていくみたいなのは憧れはありますね」
前回のコラムでご紹介した内薗大貴さんのなかでは、サッカーは明確に区切りが打たれていました。
選手のように「引退」したわけではないので当然かも知れませんが、加藤さんのなかでは学生時代から鹿児島を経て現在にいたるまでサッカー人生は地続きになっていて、さらに未来へとつながっていました。
最後に10周年を迎えた古巣がこれからどうなって欲しいかを聞きました。
「地方のクラブっていう、ここはもう絶対変わらない中で、逆にジェフは首都圏のクラブだったりして、できることできないことってあると思うんですけど、地方のクラブだからこそ出せる勢いとか取り組みとか、そういうのは絶対あると思うんです。
ルヴァン杯とかも面白いなと思ったのは、両方のクラブ規模が違う中でも規模が小さい地方クラブが勝つこともあるし、なんかすごいサッカーって面白いです。
海外は日本以上にクラブ規模の差が大きい中で、それでも小さいクラブがビッグクラブに勝つこともあるし、鹿児島はそういう勢いのあるクラブ、すごい活気がある場所だと僕は思っています。
だからもっともっと大きくというか、なんかインパクトをどんどん出してって欲しいなっていう風に思います。
偉そうな感じがするかもしれませんので、うまくまとめてください笑」
最後に加藤さんは「フクアリで会えるのを楽しみにしています」と微笑みました。
選手もスタッフもサポーターも、フクアリで加藤裕さんと再会できるのを楽しみにしましょう!
とはいえまずは今節、鴨池での対戦に全力を尽くすことからですが!!